第11話「朝」
ナギト
男(主人公)13歳
冷静。平和主義。シナリオ未記入。
カイラ
女 19歳
好戦的で挑発的。運動能力に優れている。
カズ
元々はスライム状の物質。現在はナギトにそっくりな見た目。女嫌い。臆病だがどことなくプライドが高い。
僕は目を覚ました。その日の朝の空気はいつもより冷たく感じた。僕は目が冷めてからしばらく微睡んでいると、カイラが穴から降りて来るのが見えた。カイラはもう起きていたのかと、意識がはっきりしない中で少し驚いていた。
「おい、二人とも起きろ!今日は動くぞ。準備し終ったら移動開始だ!」
「えぇー……。まだねむぃですよぉ」
僕はまだ眠りたくてそう言った。布団に潜ってこれから眠る前の感覚が、まだ僕の体の中を満たしていた。一方のカズは返事も返さなかった。きっと熟睡中だ。
「起きなかったら、また背中蹴るぞっ!」
カイラのその脅し文句は僕をたたき起こした。効果は抜群だった。
「起きました。おはようございます!」
正座をしながら僕はカイラに挨拶をした。蹴られたくない一心だった。
「よし、お前はいい」
そう言って、カイラはカズの背中を容赦なく蹴った。
「ギャアアアアアアアアアアアア」
カズは断末魔のような悲鳴を上げて泡を吹いていた。見た目が僕と同じだから、あまり面白くなかった。
「うっさいな。さっさと起きろよ」
カイラはまだ怒っていた。カズはそれを素早く察知し、隅に素早く逃げていった。背中を守ろうとしているのが見え見えだ。
「すいませんでした。起きました。このとおりです。」
カズは震えながら早口でそう言った。
「そうか……もういくぞ!はやく準備しろ!」
カイラはカズにそう言ったが、準備することは何もないはずだ。僕とカズは、カイラに抱えられて1人ずつ穴から外に出た。カズはカイラに触られるのが嫌で、白目を向いて穴から出てきた。僕は思わず笑ってしまった。外に出ると思っていたよりも眩しかった。穴の中とは違って空気が澄んでいて、清々しい気分になった。カイラが最後に穴から出てきた。
「よし、じゃあ行くぞ」
カイラは張り切ってそう言った。
「え?どこに向かうんですか?」
僕はカイラにきいた。向かうべきところなど僕達には存在しない。だからこそ、どこに向かうか決めるのは大切なことだ。
「西の方だ。向こうの方に集落があるという話を、塀の集落で聞いたからな。」
「本当にあるんですよね?無かったらまた野宿になるので……」
「そんなもん、行ってみないと分からないだろ」
カイラのその言葉は少し無責任すぎると思ったけれど、行く宛がなければそれに従うしかないのかもしれない。
「……分かりました」
仕方なく僕は、賛成するしかなかった。一方のカズは放心状態で立ち尽くして空を眺めていた。
「おい!カズ!起きろ!」
カイラがそう言うと、カズはハッとしてカイラを見た。
「あええぇ。起きてますよ。起きてますって!」
そう咄嗟に叫んでいた。カズはまた蹴られるとでも思ったのだろうか。
「じゃあ、行くぞー!ついてこいよー!」
気を取り直してカイラは、気合を入れるようにそう叫んだ。僕とカズは何も言わずにぼけっーとしていた。
「おい!なんか言えよ!なに黙ってんだよ。また蹴って……」
「だから、起きてるっすよ!」
カズがカイラの話を遮ってそう叫んだ。カズはすぐにカイラから蹴りを入れられた。
「ギャアアアアアアアアアアアア」
昨日からもう何度も聞いている叫び声が聞こえてきた。相変わらずうるさい。
「人の話を聞けって、お前が昨日言ってた……よな?」
カイラがカズに確認するようにそう言った。しばらく、カズは痛みに悶ていた。この日のカイラは少し怒りっぽい気がした。
「カイラさん。あんまり蹴らないほうがいいですよ。誰かが怪我したら何もいいことないですよ」
「お前も返事はしなかったくせにそんな事言いやがって……返事くらいしろよ!」
「それは……すいません」
そう言われると何も言えなかった。僕はかなり、落ち込んでしまった。しばらくは誰も喋れない雰囲気に包まれた。カズはその間も、痛みに悶ていた。辺りに少し強い風が吹いたと同時に、カイラは口調を弱めて言った。
「行くぞ……」
カイラは少し落ち着いたようだった。
「わかりました」
僕がすぐにそう答えると、カイラは一人で進みはじめた。カズはやっと半身を起き上げれたくらいだった。
「カズさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけ……ないだろ」
そう言いながら背中を擦っていた。まだ痛むのだろう。
「カイラさん、もう移動し始めましたよ」
「あぁ、そうだな……。じゃあ、行くしかねぇか」
そう言ってカズはついに、立ち上がった。
「大丈夫なんですよね?無理しないでくださいね」
「お前は優しいな。俺はもう大丈夫だ。カイラだってきっと……本当はこんな事はしたくないと思っ……」
そうカズが話していると、少し離れた後ろの方からカイラの声がした。
「はやく来いよぉぉーー。遅いぞぉーーー!」
もうだいぶん向こう側にカイラの姿が見えた。
「今行きまーす!」
僕はそう叫び返した。カズは良いところを遮られたらしく、カイラに文句をぶつぶつと呟いていた。
「あいつ絶対に許さねぇ。絶対に許さねぇからな。俺が許してやろうとしてたのに。絶対に許さねぇからな──」
「はい。もう、いきますよー」
僕は何も聞かなかったことにしてそう言った。そして、カイラのいる方に進み始めた。
「おい、ちょっと待てよ」
カズはそう言っていたが、もう大丈夫そうだった。
「分かった。さっさと行けばいいんだろ。」
カズはそう言って少し足首をほぐしてから、僕の後ろをついてきはじめた。しばらくして分かったが、カズは瓦礫の上を歩くのが得意なようだった。僕に置いて行かれることなくついてきていた。そのまま、僕とカイラとカズは次の集落を目指して半日くらい進み続けた。




