第74話 潜入
~王都トパーズ~
「ちょっと―――、もう少しそっち詰めれますか?」
ジュリエッタがジトっとした目でカジハラの方に顔を向ける。
「我慢しな―――」
狭い馬車の積荷の中。
人が複数人入るには適さない。
そんな所にミナス、シータ、ジュリエッタ、カジハラ、シロの5人がほとんどすし詰めのような状態にある。
「ちょっ―――、変なことろ触らないでください!」
「狭めェーンだ!ちったー我慢しなっ!」
ジュリエッタとカジハラが口論している。
こんな狭い空間で言い争わないでほしいとミナスは心の中で呟く。
「ご主人様、私の方でしたらいつでも―――」
シロが顔を赤らめ、口にする。
「だから時と場所を弁えやがれっ!!」
カジハラがシロを叱った。
城下町の周りには巨大な城壁が外敵の侵入を防ぐ。
城門に入るには通行証が必要。
「では、お入りください。」
外から声が聴こえる。
門番のチェックは無事にスルー出来たか?
「ちなみにそちらの積荷は何が入ってるのですか?」
「故郷のワインだ―――」
「祝いの席に酒は必要だろう?」
「中を確認しても―――?」
どうするの―――!
ジュリエッタはカジハラの方を睨む。
バサッ―――
憲兵が積荷の中を覆っていた布を捲った。
「ふむ、確かに上質なワインのようだ・・・。」
5人は息を飲む。
静かにやり過ごす。
念のため、積荷はミナス達が視えないように前の方に配置していた。
もっと隅々まで確認されていたらバレていたであろう。
こうして、ミナス達は無事に王都へ潜入することが出来た。
中は結婚式が始まるということで大盛り上がり。
国を挙げての一大イベントだからだ。
「アレが皇帝 ルート・アレフゼロ―――」
凱旋パレードの真っ最中。
皇帝と王女の乗る式典用の馬車の周りに人だかりができる。
ミナス達はそれを物陰から遠目で見るだけ。
とても近づけやしない。
「今ここでボクの弱体化の魔法でアイツを消せば済むんだね―――」
「止めろ!バカ!リア姫は人質にされてんだぞ!」
「ここでお前が事を荒げれば、それこそ収拾がつかなくなる。」
カジハラがミナスを止める。
ミナスの力は広範囲に死をもたらす。
しかし、ここでそれを使っては息を潜めて潜入した意味がなくなる。
「・・・・・分かったよ。」
渋々、その手を収めるミナス。
何とか納得したといった所だ。
5人はリア姫がいると思われる城内への潜入を試みる。
シロとカジハラは『気配遮断』のスキルを持っている。
彼らが先行して、中の様子を見てミナス達に合図を送る。
ジュリエッタは城内に詳しい。
彼女が道を示す。
「リアのいる所が分かるのかい?」
「城内の全ての部屋の場所は頭の中に入ってので―――」
「リア様がいそうな所はおおよそ見当はつきます。」
「ソイツは頼もしいなぁ!」
カジハラがニヤニヤと笑いながら口にする。
「何ですか?私をバカにしてるんですか?」
「いやぁ、別にそんなつもりはないぜェ!」
カジハラは利用できるなら何だって利用する。
ジュリエッタのことを利用できそうだって思っただけだ。
一方のリアは部屋で一人考え事をしていた。
あのコロシアムの出来事。
既に王国は自分のいた頃とは大きく変わってしまっている。
「これから私はどうしたら・・・?」
「な、何だ貴様たちは!?」
部屋の外が騒々しい。
何が起きたというのだろう。
リアは飛び起きた。
そして、恐る恐る部屋の外を覗いた。
そこにいたのは見覚えのある顔―――
「やぁ、リア―――、お待たせ。」
「迎えに来たよ。」
「ミ、ミナスっ!?」
「それにジュリエッタ達まで―――!?」
「どうしてここに?」
「どうしてはねェーだろ、お姫様。」
「オレっち達はアンタを助けにここまで来たんだぜェ。」
「リア様、早くここから出ましょう!!」
「リア・・・行こうっ!」
ミナスがリアに手を差し出した。
震える手でリアがその手を取ろうとする。
だけど、脳裏に浮かんだのは姉セディナの顔。
「待ってっ!!」
「私、一人じゃ行けない!!」
「な、何を言ってるんだい?」
「御姉様が・・・セディナ御姉様がいるのっ!!」
リアは泣きそうになりながら、ミナス達にそう訴えた。




