第73話 王都へ
~王都近郊~
解放軍から離れ、ミナス達は王都のある方角へと南下していた。
『リアを助ける』
ミナスの目的はただその一点のみ。
しかし、この時のカジハラは別のシナリオを思い描く。
この機に乗じて、数多くの戦闘データを取得する。
それが彼がこの世界にやってきた目的。
正直、帝国と王国どちらが勝とうがどうだっていい。
より闘争の多い方、闘争の密度が濃い方。
それが望ましい。
しかし、ミナスに出逢ってその考えも少し変わった。
―――というより、ミナスを敵に回すという行為が己の命すら危険にすることだと考えた。
だから王国側、解放軍の側へと回ることを決めた。
それでも当初の目的通り、より多くの戦闘データを採取する。
それは変わらない。
「あと王都までどれくらいだ?」
ミナスがシロに尋ねる。
「あと半日もすれば到着するでしょう。」
「そうか―――、そりゃ楽しみだなぁ!」
一行は馬を走らせる。
「待っててリア―――、今助けにいくから。」
ミナスはその淀んだ眼を見開く。
いつになく真剣だ。
シータはそんなミナスの横を走りながら彼の方を向いている。
ミナス様はやっぱり、リア様のことを・・・。
王都は帝国に占拠されている。
皇帝も今は王都にいるとの情報を得ていた。
「明日には第一王女と皇帝の婚姻式が取り行われるらしい。」
カジハラはその情報を事前に掴んでいた。
皇帝と第一王女の婚姻式となれば、その警備はかなり厳重になるだろう。
それでもそんな所にオレっち達も乗り込もうってんだ。
正気の沙汰じゃねぇ―――
解放軍は馬を走らせ続けた。
そして、王都の眼と鼻の先まで辿り着く。
ここに着くまで、いくつか帝国の拠点を落とした。
カジハラの指揮の元、丁寧に制圧した。
ミナスがその力を解放し、次々と敵の将を撃破してきた。
帝国最強の将軍を倒したミナスにもはや、敵はいない―――
帝国もこちらの動きには気付いているだろう。
「真正面から攻め込むつもりか?」
ジュリエッタがカジハラに聞いた。
「これまでは小規模の拠点だったから難しくなかったが、流石に王都となると正面から行くのは難しいだろう。」
今回は王都での戦闘―――
民間人への被害は最小限に抑える必要がある。
またミナスを単独で行かせるわけにはいかない。
「今回はオレっちも行く。」
「貴方が!?」
カジハラが自ら王都へ乗り込むという。
「リア王女奪還が目的なら少数精鋭で行くのがいいだろう。」
「下手に奴らを刺激して人質にされても困る。」
それにミナスが暴走しないように見張りも必要だ。
解放軍は王都の周りを取り囲むように陣取り、少数精鋭の本隊は王都へ潜り込み、リア王女を助ける。
それがカジハラの作戦。
「またシロ殿の背中に乗って王都へ行くのか?」
「いやシロはデカすぎて目立つ。」
「では、どうやって―――?」
「簡単なことだ―――」
「皇帝と第一王女の婚姻式を利用する。」
「ッ!?」
「二大国家の王族の婚姻だ―――」
「諸外国から諸侯やら貴族やらがわんさかやって来るだろう。」
「そこに紛れ込むんだ。」
「そんな簡単に言うが、上手くいくのか?」
「奴らだって我々、解放軍を警戒しているハズだ!」
「勿論、分かっている―――」
「これを実行するには協力者が必要だ。」
「協力者なんて・・・そんな者どこに・・・?」
「いるだろう・・・ここに来るまでに制圧した帝国拠点に。」
「・・・!?」
カジハラはニヤリと笑みを浮かべる。
ここに来るまでに利用できそうな帝国民を捕虜にしていた。
彼らをここで利用しようと試みる。
『万物使い』
カジハラの異能力。
どんな者もどんな物も操れる能力。
それをカジハラは使用した。
「コイツ等はオレっちの言うことなら何だって聞く。」
彼らは目を虚ろにして、カジハラのことをマスターと呼ぶ。
弱い者は自我すら保てない。
万物使いはそれほど強力なスキル。
「非道な能力だな・・・」
ジュリエッタは率直な感想を述べる。
「それでもリア姫を助けたいんだろう?」
「・・・・手段を選んでいる暇はないか。」
敵だったらゾッとする能力だが、今は味方だ。
そう言い聞かせ、ジュリエッタは我慢する。
こうして、ミナス達は王都への潜入を試みる。




