第72話 帝国の三騎士
~王都トパーズ コロシアム~
帝国には、自分の知らない人外の域に達する騎士が3人もいた。
怪力無双のヒューゴ-エンデ-バルジーナ。
二人の剣の達人キルマ-スラ-マルベルにアラン-マリ-オーラン。
3人の力を一端を垣間見えたが、アレは恐らく本気ではないだろう。
底知れぬ力―――
「ミナスさえ居てくれたら・・・。」
ボソッとリアはそう呟いた。
~コロシアム 控え室~
「二人ともいい死合だったぞォ~~~!!」
ガシッと暑苦しく、アランとキルマ、その二人の両肩にその左右の腕を回すヒューゴ。
「くっつくな、オッサン!暑苦しいわッ!!」
アランが冷たく突き放すように云った。
三人はそれぞれが5~10歳程度離れている。
ヒューゴが一番の年長者だ。
「それよりも聞いたか―――」
「解放軍の連中があのレイン将軍を打ち破ったらしい。」
キルマが真面目の顔でそう口にした。
帝国の情報伝達の速度は高い。
通信技術が発達しており、遠隔の地にいても互いに意思を伝えることが出来る魔道具が上層部には支給されている。
「あのレイン将軍が・・・!?」
「にわかには信じられんな・・・。」
ヒューゴが一番信じられなさそうな顔をしている。
年長者であるが故にレインの実力をこの中で一番認めている。
「ヴィクター博士からの情報だ―――、偽りではない。」
「解放軍・・・侮れんな―――」
「解放軍と言えば、例の解放軍のお姫様・・・こっちに来ているらしいぞ!」
「そうか、それは一目会いたいものだ―――」
「会いたいってオッサン、仮にも敵の親玉だぞ!」
ヒューゴに意見するアラン。
「敵の将だからこそだ・・・。」
ヒューゴは右手を強く握りしめる。
今まで彼は目の前の強敵をその身体で打ち破ってきた。
敵が誰であろうと彼は怯まない。
「陛下が2日後、王国のセディナ姫と結婚の儀をする―――」
「そこで我々も会うことができるだろう。」
「そうか、それは楽しみだな―――」
3人はそんな会話をしていた。
コロシアムでの一件も終わり、三人はそれぞれが帰路に着く。
「キルマ様―――!!」
一人の女性がキルマを迎え出る。
教会・・・キルマはここに足を運んでいた。
昔から神への信仰が厚かった。
彼は元々神殿騎士と呼ばれる、神に仕える騎士だった。
「みんな?」
「奥にいます―――、キルマ様の帰りを待っております。」
「そうか、皆でご飯にしようか!」
キルマは優しい笑顔でそう云った。
「キルマお兄ちゃんだ~~!!」
「今日もたくさん美味しいもの持ってきてくれたの!?」
「あぁ、そうだよ―――、キミたちの為に持ってきたんだ。たくさん食べて大きくなるんだよ。」
「うんっ!!ありがとう!兄ちゃん!!」
笑顔の子ども達―――
戦争によって、家族が亡くなった子もいる。
帝国はあの日、この王都を侵略した―――
多くの血が流れ、多くの悲しみを生んだ。
多くの罪無き者の命を奪った。
それは小生も分かっている―――
だからこそ、その責任を小生も負う。
彼らのこれからの人生が幸福あるものである為に。
「アラン様・・・おかえりなさい。」
アランもまたこの国に帰る場所がある。
あの侵略の日以降、この国に多くの帝国兵が流入した。
彼らの中には野蛮な者もいた。
初めは多くの元王国民が虐げられていた。
アランはそれが許せなかった。
国の代表であるセディナ姫が敗北を認めた以上、敗者をこれ以上痛めつける権利は我々にはないからだ。
この娘・・・・フェルンもその虐げられた者の一人―――
帝国兵に強引に言い寄られていた所を助けた。
それ以来、何故か俺のことを気に入り、心配して見に来てくれる。
好意を持たれていることは分かるが、俺にはそれがよく分からない。
昔から人を殺すことでしか、評価されてこなかったからだ。
今更普通の生活なんてできやしない。
フェルンを助けたのだって、ただの気まぐれだ―――
それなのにこの娘は毎日、俺の帰りを待ってやがる。
「お味はいかがですか?」
「・・・まぁ、悪くないな―――」
この優しい微笑みが俺の調子を狂わせる。
「わはははははっ―――!!」
「レイン将軍を倒したという男!!」
「相まみえるのが楽しみだ!!」
訓練場で一人鍛錬に励むヒューゴ。
武の極地、武の化身、神の領域―――
帝国最強は黒剣将軍レインだけでない。
このヒューゴという男もまた帝国最強の一角であった。




