7話
「んごっ、んごぅ、んずっ……」
猿の魔物の頭部を両手で抱え込み、割れ目から脳味噌を貪りすするゴブリンがいる。
イシバだ。
爛々と輝く眼を見れば、それがどれほどの絶品かが窺えた。例えるなら雲丹。それも、人間だった頃に食べてきたどんな高級ウニよりも上品で、圧倒的に濃厚で美味い。
「っぷはーっ!」
すべてを綺麗に啜り切ったイシバは、至福の息を漏らした。
「おいしかった?」
「ものすごく美味しかった!」
「よかったね、イシバ!」
「うん。もうお腹いっぱいだよ」
「喉乾いてない?」
「あ……ちょっと乾いてるかも」
「水、持ってくるね!」
小走りで奧へ向かう背中を見送りながら、イシバは胸の内で改めて深く感激していた。
(サンゴ、なんて良い奴なんだ……)
間違いなく、これまでの人生で出会ってきた誰よりも親切で心優しい。それがまさか異世界の地で、しかも相手がゴブリンだとは思いもしなかった。
「それに比べて、あいつは……」
慌てて口を閉じる。もしサンゴに聞かれでもしたら、後々厄介なことになりそうな気がしたからだ。
(あれ……?)
そういえば、あの紙切れに何か書いてあったような気がする。
「あ、ああああっ!?」
「どうしたの!?」
「な、なんでもない!」
「びっくりしたよー」
「ごめん!」
姿の見えない奧の闇から届いたサンゴの声とやり取りを交わす。その状況がなんだかおかしくて、イシバは思わずふっと笑ってしまった。
(そうじゃなくて……『鑑定』!)
その対象は自分自身。
心の中で強く念じた瞬間、イシバの眼前に青白い光の画面がふわりと浮かび上がった。
「あああああっ!?」
「どうしたの!? ねぇ、どうしたの!?」
「なんでもない、なんでもないから!」
「わざとでしょ! 僕をびっくりさせるためにわざとやってるでしょ!?」
「違うって、違うよ!」
「本当かなぁ……」
ロキという名の神が寄越した手紙に、「『鑑定』と唱えればステータスが見られる」と書いてあったことを今さら思い出したのだ。直後に矢で撃ち抜かれて死んだせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。
「えーと……」
イシバは目の前に浮かぶ画面へ視線を注ぎ、書かれている文字を真剣に読み始めた。
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