↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/14

6話




「むしゃ、むしゃむしゃむしゃ、むしゃむしゃ……」


月明かりすら届かない山中腹の洞窟の中。血に濡れた猿の魔物の死体に、豪快にかぶりつく一匹のゴブリンがいた。


イシバである。


自分でも驚いていた。サンゴが持ってくるのを見た瞬間は吐き気しか催さなかったのに、手にとってみると印象が一変したのだ。食欲を激しくそそる野性的な匂いが鼻腔をくすぐる。


(食える――)


そう思った瞬間、戸惑う間もなく肉にかぶりついていた。

これが信じられないほど美味い。塩も胡椒もかかっておらず、肉質も硬いのに、あまりの美味さに手が止まらなかった。


「美味しい?」


「ふごぅ、美味しい! めっちゃ美味しい!」


「よかったー! 遠慮しないで食べてね」


特に内臓が絶品だった。いまや胃袋の欲望に抗えず、腹の中に顔を突っ込むようにして貪り食っている。人間だった頃は、どちらかといえばモツなんて苦手な部類だったというのに。


それに賞味期限にもこだわっていた。一日でも過ぎたら絶対に口にしなかった。それなのに今は賞味期限も消費期限も分らないものにかぶりついている。


「こんなに美味しいものを本当に一人で食べていいの?」


「いいよ!僕はもう食べたから」


サンゴはとても嬉しそうに言った。


「ありがとう」


「全然大丈夫だよ」


このゴブリンはどれだけいいやつなのだろうか。何か困ったことがあったら絶対に助けてあげよう。イシバはそう誓った。


「美味しいところは最後にとっておいてるの?」


「ん?」


「脳味噌だよ。シンモンで一番美味しいのは脳味噌なんだ」


「食べたことないな……」


「それなら教えてあげる! 簡単だからね」


そう言うと、サンゴは足元に転がっていた手のひらサイズの石を持ち上げた。


「これで頭を割るんだよ。そしたら、中の脳味噌をすするの」


「へー……」


「すっごく美味しいよ!」


戸惑うイシバを励ますように、サンゴが身を乗り出す。


「……ちょっとやってみようかな」


「絶対にその方がいいよ! 本当に美味しいから!」


手渡された石を握り締め、猿の顔を地面にセットする。


「頭を割る……」


「そうだよ!」


イシバは躊躇なく、勢いよく石を振り下ろした。その姿はどこからどう見ても、完全なゴブリンだった。


神様ありがとう、本能を思い出させてくれてありがとう………とは少しも思わなかった。









最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。