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5話





「ここだよ、ここが僕の家!」


サンゴが胸を張って指さしたのは、山の中腹あたりにいくつか開いている洞窟の一つだった。


「いいね」


「そうでしょ? 入って、入って!」


夜の時間帯ということもあり、洞窟の中は当然のように真っ暗だ。月明かりすら届かず、明かりの類も一つとしてない。


それなのに、なぜかイシバには周囲の様子がはっきりと見えていた。


(ゴブリンは人間よりも夜目が利くんだな……)


ありがたいと思いながらも、自分が本当にゴブリンになってしまったのだと改めて痛感し、ショックを受ける。


(あの野郎、絶対に許さない……!)


「そこに座って待ってて! 今、食べ物を持ってくるからね」


「ありがとう」


言われるがまま、イシバは手頃な大きさの丸太に腰を下ろして待つことにした。


(ゴブリンってみんな、こんなに親切なのか……?)


人間だった頃の自分なら、道端で会っただけの見知らぬ者を家に招き、食事を振る舞うなんて考えもしなかったはずだ。だがサンゴは、それをあまりにも自然にこなしている。


そういえば、この世界に来て一番最初に自分を殺した奴の正体は何だったのだろう。


あの時、茂みに一瞬だけ違和感を覚えた。その直後、額に強めのデコピンを受けたような衝撃が走ったのだ。


一番可能性が高いのは「人間」だ。茂みに身を隠して射撃する……猟師ならやりそうなことではある。


今のところ、この山でサンゴ以外の生物の気配は感じ取れていない。人間も、他の魔物もだ。


だからこそ、今一番興味があるのは人間だった。一体どれほどの文明を築いているのか。自分は人間の言葉を理解することはできるのか。どんな魔法を使うのか……分からないことが多すぎる。


「お待たせー!」


嬉しそうな声とともにサンゴが引きずってきたのは、血に濡れた大きな猿の死骸だった。


「遠慮しないで、いっぱい食べてね!」


「あ、あ、あ、ありがとう……」


イシバは食べなくてすむ理由を探し始めた。






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