10話
「えい! やー! とー!」
星々が輝く夜空の下、サンゴの勇ましい声が響き渡る。
何をしているのかといえば、スピンキックの練習だ。イシバが巨体サソリを一撃で倒した姿に大感激し、「自分も同じ技を覚えたい!」と一念発起したらしい。
その傍らでイシバは何をしているかといえば――頑張るサンゴの応援、のつもりだった。
だがサンゴの集中力と熱量は生半可なものではなく、イシバの体感では練習が始まってからすでに二時間以上が経過している。
そのため、イシバは今、サンゴに隠れてこっそりと『鑑定』の画面を開いていた。
あんなに強そうだった魔物を叩きのめしたのだ。絶対に強くなっているはずだ――そう思うと、確認せずにはいられなかった。
名前:イシバ
種族:緑ゴブリン
戦闘力:250
死亡回数:1
所持魔法:『100万回生きたねこ』『スピンキック LV.2』
メモ:【異世界からの転生者】【陰陽師の血を引くもの】【ロキの玩具】
思っていた通り、この世界では魔物を倒すと強くなる。そして、前回と変化していたのは二箇所。戦闘力と、スピンキックの欄だ。
(確か前は158だったはず……それが250になっている。だいぶ上がっている気がする。まあ、相変わらず基準はさっぱり分からないけど……)
依然として全体像が見えない不満はあるものの、期待通り数値が伸びていたのは素直に嬉しかった。
そして何より――
(スピンキックがレベル2になっている!)
「ねえ! 今のどうだった!? かなりスピンキックじゃなかった!?」
「う、うん。そうだね、とってもスピンキックだったよ」
「……ねえ。なんか今、よそ見してなかった?」
「してないよ!」
「本当……?」
「本当本当!」
「それならいいけど……」
サンゴはうっすら疑うような目を向けたが、すぐに肩の力を抜いた。
「……さすがに疲れた? ちょっと休む?」
「そんなことないけど……やっぱり一回休憩しようかな」
「その方が良いよ」
「うん」
そう言ってサンゴはイシバの隣へ歩み寄り、腰を下ろした。そして竹筒に入った水をごくごくと勢いよく飲み始めた。
「ぷはー!」
満足そうなその姿は部活終わりの子供にとても良く似ていた。
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