第五章 昭和ヒーローの遺産
## 第五章 昭和ヒーローの遺産
四日目の夜、仕事を終えて帰宅しながら、父のことを思い出した。
父はよく言っていた。「昭和の映画や漫画は、戦後のオリジナルが多く、後のシリーズものより独創的だ。オリジナルに近いものを見たほうがいい。本質がわかる」と。
その言葉に従って、私は子どもの頃から特撮や漫画をよく見ていた。仮面ライダー、マジンガーZ、ドラゴンボール。いずれも最初のシリーズ、最初の映画を繰り返し見た。CGのない時代の特撮は、スーツの背中のチャックが見えることもあったし、ミニチュアのセットがバレバレのこともあった。それでも、あの時代のクリエイターたちが「悪の組織とはどういうものか」「世界征服とはどういう夢か」について真剣に考えた痕跡が、ちゃんと残っていた。
「彼らにも協力してもらおう」
ショッカーの幹部を呼び出した。
AIは見事にキャラクターを演じた。「イーッハハハハ!」という書き出しから始まり、「新生ショッカーによる日本征服計画2026」が展開された。現代版の最大のポイントは、「この世界線には仮面ライダーが存在しない」という前提だった。最大の障害が存在しない今こそ、好機だ、というわけだ。
生物改造技術とサイバーテクノロジーを融合させた改造人間の量産。ドローン型怪人五千体による都市監視と「ショッカー・ガス」の散布。サイバー特化型怪人百体によるデータセンターと海底ケーブルの電子支配。重機型怪人千体による警察・自衛隊の制圧。さらに一般戦闘員五十万人の確保手段として「SNSの闇バイト等を利用して素体を自動回収、簡易脳改造と防弾スーツを施し兵力とする」という、妙にリアルな一文まで入っていた。
総予算三兆円。拠点は富士山麓地下の「製造工場・電磁波センター」を内包する日本総本部と、全国五十か所の過疎地に設ける地方支部。
象徴建造物は「ショッカー・タワー」。東京中心部に建設する高さ千メートルの漆黒の巨塔。最上部に赤く輝く鷲のエンブレムを冠し、関東一円に「反抗心を奪う洗脳電磁波」を常時照射する。ショッカーの絶対的権力を、視覚的・精神的に民衆に植え付ける。
「これ、ほんとにやったら大変なことになるな」と思いながら、私はデータを保存した。
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次に召喚したのはドクターヘル。マジンガーZの宿敵だ。「この世界にはマジンガーZは存在しない」という前提で、最大の障害を事前に排除した。するとドクターヘルはのびのびと計画を語り始めた。
日本の太陽光発電インフラへのサイバーウイルス潜伏、機械獣軍団の東京湾出現、電磁パルスによる自衛隊無力化、首都圏電撃制圧。新型機械獣として「ソラリウス・Ω(オメガ)」と「サイバネ・バザム」が登場した。ペロブスカイト太陽電池を全身に纏い、太陽光を熱線「プロトン・ビーム」へ変換放射する前者と、国家通信網および防衛システムをハッキングする後者の組み合わせは、現代の電力依存社会への鋭い洞察を含んでいた。
再生可能エネルギーへの過度な依存が、現代日本の致命的な脆弱性だ——というドクターヘルの指摘は、案外的を射ていた。
象徴建造物は「ヘルズ・ソラリス・タワー」。東京中心部に建設する高さ千メートルの漆黒の巨塔。日本全土の太陽光エネルギーを集約する巨大蓄電施設であり、頂点には世界を射程に収める超巨大レーザー砲「地獄の眼」を配備する。
「機械獣、実際に見てみたいな」と私は純粋に思った。




