第四章 征服者会議
## 第四章 征服者会議
翌日から、私は毎晩ノートパソコンに向かって「征服者会議」を開いた。
次に召喚したのはチンギス・カンだった。ただし条件をつけた。元寇のような神風が吹かない前提で、現代日本征服から世界征服への戦略を立案してほしい、と。
チンギス・カンは秀吉よりさらにスケールが大きかった。まず日本征服の三段階シナリオを展開した。第一段階として、精鋭ハッカー集団五千人を動員したサイバー・情報電撃戦。重要インフラへの攻撃と、SNSを通じた世論分断工作を同時展開する。第二段階として、食料とエネルギーの自給率が低い日本に対し、独自の商船団とドローン艦隊でシーレーンを封鎖する経済・兵糧攻め。第三段階として、混乱の極みに達した主要都市——東京、大阪、福岡——へ民間軍事会社(PMC)を装った精鋭部隊を同時空輸し、政府中枢を制圧する。
人員は合計約五万五千人。傭兵五万人にハッカー集団五千人を加えた構成。設備は世界各地に分散した秘密データセンター、ステルス輸送機、通信妨害衛星、そして自律型AIドローン十万機。概算費用は十五兆から二十兆円。
象徴的建造物は「大ウルス・スカイ・パレス」。東京湾の人工島に建設する高さ千二百メートルの超高層モニュメント。伝統的な天幕をモチーフにしたサイバーデザインで、最上階に世界監視の司令室、中層に世界の富を結集した宝物庫、下層に十万人規模の要塞都市を内包する。
「費用が突出している」と私は苦笑いしながらメモした。
三日目の夜は、趣向を変えて映画の世界から召喚することにした。ジェームズ・ボンドシリーズに登場する悪の組織、スペクター。特に一九六七年の映画「007は二度死ぬ」の舞台が日本だったことから、現代版の「プロジェクト・ライジングサン2026」として計画を立ててもらった。
スペクターの答えは、ある意味で最もビジネスライクだった。武力によるごり押しではなく、三つの作戦を並行させる。作戦名「ブラックアウト」では日本の重要インフラへのサイバー攻撃で社会機能を麻痺させ、復旧と引き換えに統治権を要求する。作戦名「トロイの木馬」では、スペクター直轄の投資ファンドを通じてライフライン系企業の株を秘密裏に買い占め、合法的に経済の首根っこを掴む。作戦名「マリオネット」では、生成AIを用いた超高精度ディープフェイクで政治指導者の信頼を失墜させ、「スペクターによる秩序ある統治」を唯一の正解とする世論を形成する。
霧島山周辺の立入規制区域を活用した地下秘密基地(「次世代地熱発電・火山観測研究所」として偽装)。総予算二兆五千億円。
そしてリスク管理の項目に、「MI6のジェームズ・ボンドへの対応:捕縛や対話は一切試みず、即座に物理的排除を実行し、作戦の遅延を防ぐ」と書いてあった。
「ほんとにいるのかな、ボンド」と私は思いながら、スクリーンショットを保存した。




