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22.レーヌの失踪

 ひさしぶりに王都ユルバンの近郊に魔物が現れて7日目の朝。


 テオドールの執務室にはリアムのみ入れて内密の会議を始めようとしていた。


 執務室中央にあるソファーに横並びにテオドールとリアムは座り、小さな声で話している。


「魔物が出始めて6日が経つが、どうなっているんだ」


 テオドールは横に座るリアムを見る。リアムもまた、毎日討伐に参加していて、顔色が悪く、冷や汗を浮かべている。


「申し訳ございません、殿下」


 リアムは何も言えず、俯く。


 魔物が現れて、移動して、消えていく。

 最初にリアムから報告を受けたテオドールは疑問符が頭の半分以上をしめた。

 その場から消えるのなら納得するのだが、消える前に別の場所に移動して攻撃してから消える。その動きは初めてのことなので、首を傾げるばかりだった。


 だが、1日位なら、深く追求することはしないのだが、それが毎晩、6日連続で繰り返されているのなら、何の意図があってやっているのかと疑いを抱き始める。


 誰かが何をしようとしているのか、目的を探らせているが未だ納得のできる答えは出せていない。


「レーヌの体調は悪くなるばかりだろう? 早く解決するための糸口がほしい」


 テオドールは内心かなり焦りを感じていた。


 イアサント宰相の件も証拠はあるが、確定するまではあと一歩というところで、この連日の魔物騒動。

 

 前にレーヌと話した時に魔法を使うと翌朝は起き上がるのがつらいので、昼まで眠らせてもらっていると聞いたことがあった。


 自分を犠牲にすることも厭わない彼女のことだから、警護団から呼び出しがかかれば体調が悪くても無理して討伐現場に向かうことをたやすく想像していて、リアムには無理させるなと言いづけている。


 そんな状況下で、レーヌの体調を回復させることを優先させるために妃教育の中止をリアムと相談しているところだった。


 テオドールが考えこんでいる時に執務室のドアをノックする音が聞こえてくる。


 テオドールはリアムと顔を見合わせるが、リアムが頷くとソファーから立ち上がり、ドアに向かった。


 テオドールはソファーから立ち上がりながらリアムの動きを目で追いながら執務机に戻る。

 椅子に座ることなく、立ったままリアムがドアを開けるのを見守る。


 だが、リアムは慌てて尋ねてきた人物を執務室の中に招き入れた。


「エリーズ、顔色が優れないようだが?」


 テオドールは呼んでもいない侍女長がなぜいるのか不思議に思ったがエリーズは動揺しているような感じを受ける。


「テオドール殿下、エドメ様はどこにいますでしょうか?」


 エリーズは背筋を伸ばしながら一直線にテオドールの元に向かってきた。


「エドメ? 本日はまだ顔を見ていないが。何かあったのか?」


 テオドールは側近の文官の名前を聞かされ怪訝に思ったが、その言葉にエリーズと後ろにいるリゼットが顔を見合わせる。


「実は今朝なのですが、エドメ様がレーヌ様の部屋を訪れ、テオドール殿下がお呼びになっているとお話しされ一緒に部屋を出て行かれました」


 その話にテオドールは得体のしれない不安が心の中を覆ってくるのを感じた。


「いや、待ってくれ。私はそんな伝言をエドメに頼んでいないのだが」


 エリーゼはテオドールの態度を見ると、眉間に皺をよせ、厳しい表情になる。


「やはり、そうでしたか」


 テオドールはエリーゼとリゼットの顔をみると、2人とも困惑しているのか、厳しい顔になっている。


「リアム!」


 テオドールはドアの近くで待機している側近の名前を大声で呼ぶ。


「聞いておりました。エドメの所在を確認してまいります」


 リアムは頷くとすぐに執務室を出て行った。


「エリーズ、リゼット、報告感謝する。あとはこちらで確認するから下がれ」


 名指しされた2人は頭をさげ、青い顔のまま執務室から出て行く。


 テオドールはリアムが戻るまでひたすらレーヌの無事を願い続ける。


 慌ただしくノックをする音に顔をあげ、ドアが開くのを待つ。


「殿下、戻りました。エドメですが、本日は急遽、休暇を取っておりました」


 リアムは真っ青な顔に汗を浮かべながら、報告するがそれを聞いたテオドールは舌打ちする。


「リアム、リシャルはどこにいる!?」


「はい、そちらも確認しておりまして、今日はまだ王城にきていない、とのことです」


「レーヌに呼びかけられるか?」


「先ほどから話しかけているのですが、反応がありません……」


「イアサント家に潜り込ませている警護団のシモンはどうだ?」


「……リシャルは朝いつもの時間に屋敷を出発しており、アデールは朝から顔を見ていないということです」


 リアムの報告にテオドールは不安と焦りを感じ、思わず机にこぶしを叩きつける。


「手がかりなしか!?」


 テオドールは頭を抱えたまま、執務机に突っ伏した。

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