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14.侍女を紹介します

「レーヌ様、起きてください」


 女性の心配そうな声が聞こえてレーヌが目を開けると、この部屋にきた時からいる侍女の1人が憔悴した顔をして、こちらを見ていることに気付く。

 レーヌが目覚めたことを確認した侍女はほっ、とした表情を浮かべている。


「体調は悪くありませんか?」


「あ、大丈夫です」


 レーヌがそう話すと、侍女は柔らかく微笑む。


「ようございました。これから侍女長のところにいきますので、お召替えをいたします」 


「あ、はい」


 侍女の話にレーヌは慌ててベッドから起きると、部屋のソファーに座り、侍女が衣装を出してくるのを待つ。


(そう、あのまま眠ってしまったのね)

 レーヌはリュカのことを思い出しながら、いつの間にか眠っていたようで、部屋の窓から外を見ると太陽が高い位置にあるのがわかった。


「お待たせいたしました」


 侍女がクローゼットの中から薄いグリーンの1着のドレスを手に持って近づいてくる。


「本日は、こちらにお召替えになります」


「はい」


 レーヌはソファーから立ち上がり、3人の侍女に身を任せ選んだドレスを着ていく。

 遠目でグリーン一色に見えたが、近くで見ると金色の糸で刺繍を施してあり、華やかな雰囲気になっている。

 ドレスの着替えが終わると、ドレッサーの前に座り、手際よく髪をまとめあげ、化粧を施して完成した。


「それでは、まいりましょうか」


 レーヌは侍女の言葉に頷くと、別の侍女が部屋のドアを開ける。

(あっ、そういえば2日も滞在していて、初めて部屋から出たわ)

 レーヌは苦笑いしながら、部屋から出た途端、騎士3人に囲まれ、その場で立ち尽くす。

 その様子を見た騎士の1人が、落ち着いた口調で説明をしてくれる。


「驚かせてすみません。王族に連なる方は移動するときにこのように騎士を近くに侍らせます」


 騎士の話に、偽とはいえ、王族と婚約したのだ、と改めて実感する。


「はい、わかりました。これから宜しくお願いします」


 レーヌは背筋を伸ばし騎士の話に頷くと、一路、侍女長の待つ部屋へと騎士達と共に歩き始めた。


 レーヌの滞在している部屋から5分程歩いたところで目的の部屋に到着した。

 レーヌの近くにいる騎士がドアをノックし、到着したことを伝えると、中に入る許可が出た。

 騎士にドアを開けてもらい、中に入ると、そこは壁一面に書棚があり、正面の窓にはレースのカーテンで部屋に入る光を和らげている。

 窓の前には執務机が設えてあり、そこには凛とした雰囲気のプラチナブロンドの女性が背筋を伸ばしレーヌを見ている。

 部屋に入ってきたレーヌを見ると、椅子から立ち上がり、軽く頭を下げる。


「レーヌ様、ようこそおいでくださいました。わたくしはこの王城で侍女長を務めております、エリーズと申します」


 雰囲気に違わず、凛とした声でエリーズは自己紹介をする。

 エリーズの雰囲気にのまれそうになるレーヌだが、一つ深呼吸をしてから口を開ける。


「レーヌ・アストリです。今日は宜しくお願い致します」


「ご丁寧にありがとうございます。それではこちらのソファーにお座りいただけますか?」


 エリーズは部屋の真ん中にあるソファーを勧める。

 レーヌは足に力を入れてソファーに歩み寄り、そのまま浅く腰掛けるとエリーズが真向かいに浅く座る。

 エリーズは困ったような表情を浮かべると口を開く。


「実はこのあとですが、急遽アナイス王妃とのお茶会が入りました」


 レーヌは突然のことに驚き、目を見開いたまま固まる。


「それまでは少し時間がありますので、レーヌ様の専属侍女を紹介いたします。まずはリーダーのセレストから」


 初日からいる3人の侍女の中で一番年上と思われる、亜麻色の髪の、きりっとした雰囲気の女性が1歩前に出てくる。


「セレストと申します。何なりと申しつけください」


「はい、宜しくお願い致します」


 エリーズは次の侍女の名前を呼ぶ。

 呼ばれた侍女はプラチナブロンドの可愛らしい感じの女性で軽く頭を下げる。


「エステルと申します」


 最後は赤髪で一番幼い感じのする女性が前に出てくる。


「リゼットと申します」


 その侍女は少し幼さの残る声で名乗り出る。


「リゼットは16歳でレーヌ様と年齢の近さを考えて専属に致しました」


 エリーズが説明を加えて3人の侍女の説明を終える。


「では、そろそろ、王妃様の元にまいりましょう」


 そう言うとエリーズはソファーから立ち上がると、机の上の書類を片手に持つ。

 レーヌもソファーから立ち上がると、エリーズの後についてドアに向かって歩き出した。


 レーヌは王妃とのお茶会を終えると、護衛の騎士に見守られ、3人の侍女と共に部屋に戻ってくると、全身から力が抜けるのを感じた。

 3人の侍女にドレスを脱がしてもらい、部屋着に着替え終わるとソファーにへたり込むように座る。

 侍女たちはドレスをクローゼットに収納した後、湯あみの準備を始めていて、その様子を眺めながらレーヌは先ほどの王妃とのお茶会を思い出していた。


 アナイス王妃とのお茶会は王城の中のティーサロンで開かれたが、出席者は王妃とレーヌの2人だけで、最初は緊張していが、アンリ国王とのなれそめや、王妃となったあとの失敗談を面白おかしく聞かせてくれて、笑いの絶えないお茶会に、レーヌはひさしぶりに心の底から笑うことができた。

(そういえば、ここにきてから、殿下以外と長く話したわ)

 レーヌはふと思うと、ここにきてから2日しか経っていないことに気付く。

(そういえば、魔物は大丈夫なのかしら)

 レーヌがぼんやりと考えているとリゼットから声がかかり、湯あみをするために浴室へと向かう。

(そういえば、魔物が出現したら、私どうやって行けばいいのかしら? 明日、リアムに確認しないと)

 バスタブにつかり、髪を梳かれながら、とりとめなく考え、侍女たちに体を拭かれ、寝間着へと着替え終わると3人は部屋を出ていく。

 それを見送り、レーヌは長い1日を終えた疲労感であっという間に眠りの世界へと誘われていった。

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