↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣は普通。魔法も普通のこの俺が新人冒険者の教官として成し遂げた事  作者: ke-go


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

泣き顔

夕飯を済ませ、テーブルに無惨に余った屋台の食い物を見ながら俺はアリスに…説教を始めた。


「アリス。お前は冒険者を何だと思っているんだ。」


「え。知らないよ。お城の中で聞いたの。冒険者ギルドって場所なら、お仕事あるって。転移魔法使った人が教えてくれたんだよね。王様の命令には逆らえない。ごめんなさいって言いながら。」


「それで、この街で冒険者登録をしたのか?」


アリスは、お腹を摩りながら眠そうな表情をしていた。


(悪いが寝せるつもりはないがな。)


「まあ、動機は何でも良いが、お前には危機感がなさすぎる。魔物相手だと簡単に殺されて終わりだ。」 


「だったら、教官っちが守ってよ。痛いの嫌だし!」


「冒険者なら自分の身は自分で守るのが常識だ。甘ったれるな。」


「じゃあ…どうしたら良いのよ!教えてよ!」


俺が怒鳴ると思っていたのだが、彼女はテーブルを強く叩きつけ大声をあげた。

そして打ちつけた掌にベッタリとついた濃厚な調味料を見つめながら大粒の涙を流した。


「周りの人と見た目が少し違う。それだけで色々言われた。だから明るいふりをしてバカな事をして皆んなを笑わせた。そうしないと顔が良いからって調子のってるとか言われてイジメられるんだよ?」


「見た目?普通の女だろ。奇抜な格好をしてはいるがな。」


「はあ?」


別に特別美しいわけでもない。そこら辺の女と何か違いがあるのか?


「私、顔良いから!」


更に怒鳴るアリス。俺は冒険者歴15年にして初めて顔の良し悪しを気にする冒険者に出会ったようだ。


「顔なんか汗泥で汚れるのが冒険者だ。顔より装備や信頼。世の中の情勢でも気にしろ。」


物にあたるな!

しかも俺…他人の家で。


「私…怖いの。知らない世界で一人追い出されて。教官はわからないでしょ。私の気持ちなんて。」


わからない。冒険者は自分で切り拓く仕事だから…

知らない世界。それは俺も同じだ。色々な場所に行ったが知らない事はまだ沢山あるだろう。


お前やナツハが言っているニホンも俺は知らないからな。


「教官は仕事だから私の面倒見ているだけでしょ!本当の私を知ろうとしない。それが大人の対応なんでしょ。学校の先生と同じ。」


確かに仕事だから、お前の面倒を見ている。

そう思ってもらって結構だが、こいつはナツハみたいに爆発力があるわけではない。


ドレインタッチは人間には有効だが、果たして魔物に効果はあるのか?もしなければ素手でただ魔物に触れただけだ。

まあ自殺行為だな。


ポイントだったか?

よく分からないが、こいつには何か有意な事なんだろう。実際、ナツハのスキルツリーと言っていた何かも新たな特技を会得していたし、ニホン?と言う国の者は俺が知らない何かがあると考えた方が理解しやすいかもしれない。


「お前がどう捉えようが構わないが、俺は教官としてお前が冒険者としてやっていけるまでは働くぞ!」


………!


抱きつくな。これが俺の仕事なんだ。

普通のことだから泣きながら俺の服に鼻水を擦るんじゃない。


良くこんな事をして自分は綺麗だとか言えたものだ。


それから一週間、アリスは俺の家で寝泊まりしながら冒険者の、ノウハウを学んだ。


始めは駄目だと思っていたんだが、ドレインタッチが良い働きをした。街周辺の平原で魔物と実践経験を積ませた。最初はどの魔物と遭遇しても、腰が引け直ぐに逃げようとしていたが試しに俺が魔物をギリギリまで弱らせアリスにドレインタッチをさせたら魔物が倒れた。つまりドレインタッチは魔物にも有効だと判明した。


そして彼女は「ポイントきた!」と飛び跳ねていた。

俺には、そのポイントが見えなかったが彼女は腕組みをしながら悩んでいたから何かが見えているのだろうな。ナツハもそんな仕草をしていたし。


ポイントとスキルツリーが似ているものなのは理解した。


何にしても、ここから彼女は変わっていった。俺が弱らせ彼女がドレインタッチでトドメを指すを繰り返していたら、急に火球を放った。威力は大した事はない火球だったが、俺の初級火魔法とよく似ていた。


ちなみに俺は剣術の他に魔法を複数使える。まあ全て初級魔法だがな。魔物への牽制くらいにはなる。


そして彼女は火球を乱発してはドレインタッチで回復。また乱発してはドレインタッチを繰り返した。


それを見ていた俺は思った。魔物がいる限り無限に攻撃できるじゃないかと。

ある意味…無敵だ。魔物に触れるが条件だが。


火球にドレインタッチ。そして彼女は次に『シャドー』と言う俺が知らない魔法をポイントで習得した。


影に潜む魔法。岩や木。人に魔物。とりあえず影が有れば発動できる。


影に隠れて背後から火球。それを繰り返し疲れたらドレインタッチで回復。


正直、俺も使えたらと嫉妬したが表面上は笑顔でアリスを褒めた。


毎晩、屋台で買い物をし、俺の家で騒ぐだけ騒いで寝る。

実に迷惑だったが、何故か俺はそれが心地よいと思っていた。


でも、今日でそれも終わりだ。


「アリス。お前は、もう冒険者としてやっていけるだろう。俺の訓練は終わりだ。明日からはしっかり依頼をこなしていけ!」


彼女は泣きながら、ありがとうございました。と言っていた。

また泣いていたが初めての日の泣き顔より、ずっと良い泣き顔だった。


アリスが去って少し想いに耽っていたらマーサさんに呼ばれた。


また新しい冒険者が来るのだろうか?


「はあ…今度は普通の冒険者にしてくれよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。