余計
「レナウドさん。大丈夫ですか!」
うっ。
マーサさんの声がして俺は起きあがろうとしたが身体が重い。
「アリスさんが急にレナウドさんが倒れたって私を呼びに来たんです。」
心配そうに俺に話しかけてくるマーサさん。
やはりあの時に俺は気を失ってしまったようだ。
「教官っち。大丈夫?」
大丈夫だったら医務室にいるわけがないだろ。そう言い返したかったが涙目で俺を見ているアリスに俺は言葉を飲み込んだ。
「ドレイン…タッチだったか?あれは本当に回復魔法か。」
俺は頭を押さながらアリスに聞いてみた。そもそも回復魔法で気を失ってしまう理由も思い浮かばない。
「一応回復魔法だよ。…相手の生命力を奪って自分が回復する魔法なんだ。」
生命力を奪ってだと?
「中年男の生命力を奪うんじゃねー!」
俺は叫ぶだけ叫んだ。
一応怒りを全面に出していたのだが、何故か二人は笑っていた。
笑い事ではないのだが、しかし二人の顔を見て怒る気が失せたのも事実だった。
「とりあえず今日はここまでだ。解散だ。」
俺は重い身体を無理矢理起こして自宅に戻る事にした。
こういう時は酒を飲んで早々と寝るに限る。
酒が1番の回復薬だ。
「で、何故ついてくるんだ?」
いつもより足取りが遅い俺の跡をついてくるアリス。彼女は心配だからと言うが俺はひとつの疑念が生じた。
こいつ泊まる場所がないから俺の家に来ようとしているのではないかと。
「お前の前に教えた奴はギルドから金を借りて宿をとっていたぞ。」
実際に、ナツハそうしたようだ。新人冒険者…まあFランク冒険者に支援制度はあるからな。借りた分、依頼報酬から引かれてしまうが寝泊まりできる拠点は重要な事だ。
「ボンキュボンに言われたけど…ひとり嫌だし。教官っち体調悪くしたの私のせいだし。」
ひとりが嫌か…今日のこいつしか知らないが何となく良い所の出身なんじゃないかという印象は受けた。誰かが何かしてくれる。そんな環境で育ってきたのだろう。
冒険者としては致命的な欠点だが教官としては、そう言う部分を修正しるのも職務の内かもしれない。
「俺の家に泊まりたいなら、はっきり言え!」
「はい!親父ギャグ炸裂〜。ゲキさぶ〜。」
意味はわからないが苛立ちがまた芽生えた為、俺は重い身体に鞭打ちアリスの額をまた小突いた。
てへ。
またあの仕草をしている。
どういう意図でしているかは、わからないが俺の苛立ちは増したのは確かだった。
「うわ〜。屋台が沢山。」
当たり前だ。ここは屋台通りだからな。遅い時間までやっているし値段も安価だ。冒険者ならこういう場所を利用するのは常識だ。
「好きなの買って良いの。本当に?ありがとう。ずっとお腹空いてたんだよね。」
「金は独り立ちしたら回収するからな!」
「うん。返すね!」
まるで幼子のようだ。アリスは色々な屋台で店主に聞いては買うか悩んでいた。偶に俺を見て困った表情をしているが、好きにすればいい。どうせ後で金は回収するからな。
「……買いすぎだろ!」
こいつ…後先考えずに買うだけ買いやがった。
お前の両手が塞がって困った素ぶりを見せても無駄だぞ。
俺の両手も、お前の食い物で塞がっているからな。
「教官っち。ごっつあんです!」
また意味不明な言葉を発している。
本当に冒険者になりたいのだろうか?
こいつは何か欠けているように感じる。
危機感がない。こんな状態では簡単に死んでしまうだろう。
教官としては見逃せないな。実技云々の前に心構えを鍛えてやろう。
とりあえず、帰ったら説教だ。
「ここが、教官っちの家?インターホンないしオートロックもない。不用心確定ホーム!」
「野宿するか?」
…てへ。
意味はわからないが俺が苛立ちを覚えた時点で悪口で間違いないだろう。
ようやく理解した。
こいつは、一言余計な奴なんだ。




