表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不定愁訴の塊、存在を消された病弱公爵令嬢奮闘記! ~エキナセアの繋がる輪~  作者: 悠木 源基


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/85

43 全員集合したフィリア組

ついに、リュカ王子が、フィリア組全員と出会う章です。

 皆が出てきた三階の屋上の扉は、こちら側からは開かなかった。

 しかし、建物北の壁沿いに階段があった。そこで皆は階段を下りて、二階の扉からまた建物の室内へと入った。

 リッカルドとリュカ王子は何度かこの建物に入った事があったので、広い建物の中でも迷う事も、人に聞く事もなく、借りている部屋に向かって歩いて行った。

 

 トールキャッスルの中は、建物の中がまるで街の中のようだった。ただ、きちんと区画整理され、素晴らしい色彩の扉や窓が並び、雑然とした外の町並みとは全く違っていた。

 

「こんな個性のない、変わり映えしない町並みなのに、みんなよく迷わないもんだな。」

 

 クリスが驚いたように呟いた。

 

「ちゃんと規則性があるみたいですね。それがわかれば覚えるのは案外簡単そうですよ。」

 

 ノアがこう言うと、リッカルドとリュカ王子が頷いた。

 

「やっぱり、この方達凄いですわね。」

 

 アメリアが耳元で囁いたので、エキナセアも大きく頷いた。

 

 リアムとリュカ王子だけでなく、兄のリッカルドも天才だとエキナセアは思っている。本人は自分を努力型だと言っているが、弟のディルとは違い、彼こそ、人の気持ちを理解し、理解しようと努力できる、真に社会の、人の役に立つ天才なのではないか、そう思うのだった。妹の欲目を除いても。

 

 やがて一行は目的の部屋とたどり着いた。扉には『フィリアガーデン会議一行様』と書いてある紙が貼ってあったので、皆で笑ってしまった。

 誰が最初に言ったのか、『フィリアガーデン会議』。この言葉がすっかり定着してしまった。いつか各国の歴史書に載るのではないか、と皆が半分冗談ながらそう思ったのだった。

 

 借りている部屋の扉を開けると、中には既に待っている者達がいた。

 

「何をやってたんだい。ランチがすっかり冷めちゃったじゃないか。」

 

 いきなり文句を言ってきたのは、ディルだった。

 

「何故貴方がここにいらっしゃるのですか?」

 

 ノアが普段より低い声で尋ねた。

 

「リアム様からの魔法伝書が届いて、レアム先生とエドモントさんが、トールキャッスルに向かうと言うから、僕も一緒に来たんだよ。久しぶりにエキナセアと、ジョージ、あと、リッカルド兄上にもお会いしたかったし。」

 

 ディルの説明に、エキナセア、リュカ王子、リッカルドは一斉にリアムを見た。三人は口にはしないが、

『あれほどレアム先生には内緒にと言ったじゃないですか。』

 という目で訴えた。

 するとリアムは悪びれる様子もなく、自分の金色のカードを三人にだけ見えるようにちらつかせ、

 『四国会議が始まる前に、このカードの件を話しておかなければならないだろう?』

 と声を出さずに、口の動きだけで言ったので、

『そう言えばそうですね。』

 三人は納得して頷いた。そしてその後、リッカルドが弟に向かってわざと渋い顔をしてこう言った。

 

「久しぶりだな、ディル。しかし、付け足しのように兄の名前を呼ぶとは失礼な奴だな。」

 

「いやだな兄上、付け足しだなんて。本当にお会いしたかったんですよ。例の薬の製造法についてお聞きしたかったので。」

 

 ディルにしては珍しく、もっともらしい事を言って誤魔化した。ディルは兄弟の中でこの真面目な三番目の兄を一番苦手にしていた。とは言っても、一番上と二番目のことはそもそも兄弟だとも思ってはいなかったのだが。

 

「リュカ様、リアム様、リッカルド様、この度の四国会議開催につきましては、ご尽力して頂きまして、本当にありがとうございました。そして、今日はお招き頂きまして、誠にありがとうございます。」

 

 フィリア家執事のエドモントはこう言うと、レアム先生と一緒に頭を下げた。

 

「いいえ、そもそも会議を開催できるのは、エドモント殿のお陰です。こちらこそ礼を言わせて下さい。」

 

 と、リュカ王子が言うと、

 

「その通りです。エドモント殿のお陰で自分の甘さを改めて認識する事ができました。本当に感謝しています。」

 

 と、リアムもエドモントに頭を下げたので、エドモントは慌てて、

 

「もったいないお言葉で、恐縮です。」

 

 と深々と頭を下げ返した。

 そして、レアム先生は、エキナセアと、ジョージの顔を見つめて嬉しそうに微笑んだ。

 

「久しぶりだね、二人とも。君達の頑張りは聞いているよ。師として誇らしいよ。」

 

「先生、ご無沙汰しております。お会いできて嬉しいです。お元気そうでなによりです。」

 

 握手を交わしながら、リアム先生は教え子二人の耳元でこっそり囁いた。

 

「フィリアガーデン会議に出られなくて、本当に残念だったよ。ノアから話を聞いて、参加出来なかった悔しさと、ディルへの恨みで、一晩中眠れなかったよ。」

 

 先生は微笑んでいたが、目が笑ってはいなかったので、発した言葉は本気なのだろうと、二人は先生に同情した。全くディルときたら。

 

「でも、先生。今日これから、リアム様のお話を聞かれたら、少しはうっぷんが晴れるかも知れないですよ。」

 

 エキナセアがこう言うと、レアム先生だけではなく、ジョージまで、

 

「えっ? 本当?」

 

 と、驚いた表情をした。わざわざ呼びつけたのだから、重要な話があると感じていたが、エキナセアがこんなことを言うとは、よっぽどの事なのだろう、とレアムは思った。

 

 話し合いはまずは遅めの昼の食事をしてから、ということになった。

 メニューはエキナセアに合わせ、玉子と野菜のライ麦パンのサンドイッチ、チキンのフライ、野菜ジュースという魚介類を含まない健康食だ。

 ジャンクフードが好きなディルには、文句を言うのなら連れて行かないと釘をさしておいたと、エドモントはノアにこっそりそう言った。

 

 ディルとしては、食事の中身よりも座席の場所が不満だった。エキナセアの両隣りはリュカ王子とアメリア。正面はノアだった。そしてジョージはもちろんアメリアの隣だ。七か月ぶりに会うのだから、自分が一番側で話をしたい。アメリアはわかる。しかし、何故リュカ王子が隣に座っているのだ。

 

 エキナセアを一度見捨てた、あの忌々しいリュカ王子。フィリアガーデン会議が開かれた日に、偶然再会したと聞いている。あの日、自分もあの場に行っていたらと悔やまれてならない。

 ディルはノアの隣、リュカ王子の正面に腰を下ろした。何故アメリアの正面ではなく? 周りの者達が思った。ディルがリュカ王子を嫌っていることを知っているからだ。

 

「お久しぶりです、リュカ様。」

 

「ああ、本当に久しぶりですね。五年、いや六年振りかな。」

 

「先日は、エキナセアを助けて頂き、ありがとうございました。」

 

「いいえ。これも主様のお導きです。エキナセアを助けられて幸運でした。」

 

「本当に。羨ましいです。僕もあの日、その場にいたらと考えると悔やまれてなりません。」

 

 ディルは珍しく、一応大人の対応をしていた。故に、仲間達は茶々を入れなかったが、心の中で、レアム先生には申し訳ないが、彼を都へ行かせないで良かったと思った。

 もし、ディルがエキナセアを受け止めようとしていたならば、フィリア家では同時に二つの葬式を挙げなければならなくなっていただろう。鍛え上げたリュカ王子とは違い、ディルは体格はいいが見かけ倒しなのだから。

 

「来年、大学へ入られるそうですね。私もその予定なので、入学した際はどうぞよろしくお願いします。」

 

 リュカ王子がニッコリと微笑みながらディルにこう言うと、ディルはギョッとしてエキナセアを見た。しかし、エキナセアは自分は話してないと、首を横に振った。

 

「キアラ嬢からお聞きしました。ディル殿を心配されてましたよ。叔父様思いの優しい子ですね。」

 

「ぶふっ。」

 

 事情を知っているノアがこっそり吹いた。幼い姪を利用しようとして、逆効果になったのだ。もっとも、ディルはキアラが意図的にやったとは気が付かないだろうが。

 

「大学へ入学したら、僕がジョージに代わってエキナセアを守ろうと思っています。ですから、リュカ様はどうか心配なさらないでくださいね。」

 

 ディルが牽制すると、リュカは笑顔のままでこう言った。

 

「そうおっしゃらず、今まで通り、皆さんでエキナセアを守っていきましょう。」

 

『大人だ。ディル様の負け。』

 と、みんな思った。

ディル、がんばれー!!


これからディルは変わりますよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ