人生
# この人生で良かったと思える日が、やっと来た。
私は、恵まれていた方だと思う。
両親がいて、兄弟がいて、近くには親戚もいた。
義務教育を受け、高校へ進学し、看護学校へ進んだ。
国家試験にも合格し、ストレートで看護師になった。
経歴だけを見れば、どこにも問題のない人生に見える。
でも、私は長い間、本気で人生をやり直したかった。
失敗を全部消して、もう一度最初からやり直したい。
そんなことばかり考えて生きていた。
私の人生で最初の大きな転機は、両親の離婚だった。
母は私と弟を出産したあと、うつ病になった。
その流れで宗教に深く関わるようになり、私たち子どもも一緒に教会へ通うようになった。
父だけが、その輪の外にいた。
祖母が亡くなったとき、母は宗教上の理由から葬儀で手を合わせられなかった。
それがきっかけとなり、両親は離婚した。
子どもだった私は何もできなかった。
でも、大人になってから何度も考えた。
もし私がもっと賢かったら。
もっと周りを見られる子だったら。
二人の間を取り持てたのではないか。
そんなことを考えても意味がないと分かっていても、何度も思ってしまった。
高校卒業後、私は深く考えずに看護学校へ進学した。
「手に職があれば困らない。」
そのくらいの理由だった。
専門学校の三年間は、あまり楽しい思い出がない。
看護師にはなれた。
でも社会に出てから、専門卒では進路が限られることを知った。
「もっと勉強して大学へ行けば良かった。」
そう後悔した。
ただ、この後悔だけは今からでも取り返せる。
大学へ進学することに、年齢は関係ないと思っている。
一番大きな後悔は、そのあとだった。
新卒で入職した病院を半年で辞めた。
仕事よりもプライベートを優先し、現実から目を背けた。
奨学金も、クレジットカードの支払いもできなくなった。
そこから借金生活が始まった。
この選択だけは、何度やり直したいと思ったか分からない。
今も返済は続いている。
債務整理を経て、個人再生まで進み、ようやく人生を立て直せそうなところまで来た。
でも、「あの半年さえ違っていたら」と思う夜は、何度もあった。
看護学生の頃から始めた夜の接客業も、私の人生を大きく変えた。
出会えた人たち。
今でも大切な友人。
得たものはたくさんある。
でも失ったものも少なくなかった。
昼間の社会人として働く感覚を取り戻すまでには、とても長い時間がかかった。
だから私は、毎日のように過去へ戻っていた。
「あのとき、こうしていれば。」
「この選択をしていたら。」
寝る前に何度も人生をやり直す妄想をした。
夢の中では救われる。
でも朝になれば、現実は何も変わっていない。
そんな毎日だった。
同級生は言う。
「今が一番幸せ。」
尊敬している配信者は言う。
「五年前の自分、その調子。」
私は、その感覚が分からなかった。
ずっと何かを得ようとして、何かを失っている。
ずっと人生を間違えている。
そう思っていた。
でも、最近ようやく気持ちが変わってきた。
「今が一番若い。」
そう思えるようになった。
過去は変えられない。
でも、未来なら変えられる。
今頑張れば、未来の私は「この人生で良かった」と思ってくれるかもしれない。
そう思えるようになった。
理由はいくつかある。
結婚したこと。
もし人生をやり直していたら、今の夫とは出会えなかったかもしれない。
そう考えると、過去を消したいとは思えなくなった。
そして、今の職場に出会えたこと。
人間関係にも恵まれ、看護師という仕事が好きだと改めて思えた。
少しずつ、今の人生が好きになってきた。
だから私は、これからは過去ではなく未来を見る。
「あのときこうしていれば。」
そう考える人生ではなく、
「未来の自分が喜ぶ選択をしよう。」
そう考えながら生きていきたい。
この人生で良かった。
いつか心からそう言える日を目指して。




