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ソウルガーディアンズ   作者: HachiHachi
第三章 人としての使命
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第二十一話 変わらぬ誓い

――時は少し遡り、オラディ村 会議所



遠くでデュールの放った衝撃の音が聞こえ、ノワルヴェールは窓の外を見つめた。


そして、会議所にいた一人の隊員に、10人の応援を向かわせるよう指示を出した。


その様子を見ていた都市兵は、ノワルヴェールを見つめニヤリと笑った。


「フフッ。焦っているんだろう?今の音は九閃刃から放たれた音だ……!」


都市兵は唾を飛ばしながら叫ぶ。


「誰が戦っているのか分からんが、仲間は皆死んだだろうなぁ。」


都市兵は挑発的な口調で、笑みを浮かべながら言った。


「話を聞く限り…九閃刃は厄介な奴らだ…。」


ノワルヴェールはため息混じりに言う。


「ああ!そうだろう?森に入った仲間の次はお前だ!どうだ、恐怖しろ…!」


「たしかに厄介…。だがな――」


ノワルヴェールの鋭い睨み付けに、都市兵は身体を引く。


「ソウルガーディアンズを舐めるな……!」


ビクつく都市兵。


「俺達は人を傷付ける奴らを決して許さない…。深い絆で結ばれた我々は強いのだ…!!」


都市兵の胸ぐらを掴むノワルヴェールの手は震えていた。


「ひぃぃ…!」


都市兵は恐怖にノワルヴェールを直視出来なかった。


「……。」


ミトはノワルヴェールを見つめていた。


「……?」


(何故…涙を浮かべるのじゃ…?)


ノワルヴェールの言い放った言葉とは裏腹に、その瞳に微かな涙を浮かべた瞬間をミトは見逃さなかった。


 

 

コンコンコン


何かが窓を叩く音。


ノワルヴェールは窓に歩み寄る。


「これは…アジルの伝書鳥か。」


会議所にいる者達に背を向け、伝書鳥に括られた手紙を広げる。


目を通しながら頷き手紙を閉じると振り返る。


そして大きく息を吸う。


「九閃刃は敗れたみたいだぞ?弓兵二人、そして遅れて駆け付けた都市兵達は九閃刃が敗れたのを見つけ、しっぽを巻いて逃げたと…。」


都市兵の顔が大きく歪む。


「残念だったな…。」


「くっ…。」


都市兵はギリッと歯を鳴らす。


ノワルヴェールは都市兵に近づき見下ろした。


 

そして――


「この都市兵二人を牢へ連れて行け。」


指を指し隊員に指示を出す。


「はい!」


ノワルヴェールは再び窓へと向かい、外を眺めた。


(皆、信じていたぞ…良くやってくれた…。)


月明かりがオラディ村を強く照らしていた――。



それから巡回を終えた隊員は、家屋を見回る隊員達と合流し、オラディ村に降り掛かった脅威は無くなった。


だが、最後までノワルヴェールは要所に隊員を配置し、警戒態勢を緩めなかった。



———


カチャ



会議所の扉がゆっくりと開く。


扉の先にはデュール、アジル、アウディアの三人がいた。



「お前達…。良くやってくれた。」


ノワルヴェールは駆け寄り声を掛ける。


「ノワルヴェール…。」


デュールは肩を落としたまま言った。



『隊員達に都市兵を運んでもらい、村に戻ってくれ。デュールを一人にしないよう頼んだぞ。』

 


手紙に書かれた最後の一文を読んだアジルとアウディアは笑ったのだった。

 


「流石ノワルヴェール隊長です。デュール隊長の事をよく分かってらっしゃる。」


「ホント…!」


アジルとアウディアは思い出し笑っていた。


「当たり前だ。」


ノワルヴェールは小さく笑い返す。


「二人の活躍が今回の脅威を退けた…。互いを信じて動いた結果だ。アジル…アウディア、本当にありがとう。」


ノワルヴェールの賞賛に二人は大きく頷いた。


「お前達の怪我が気になる。すぐに療養施設に向かえ。後の処理は俺達に任せろ。」


「「はい!」」


「行こうアウディア。」


「うん!」


そうしてアジルとアウディアは会議所を出た。


横並びで中央通りを療養施設に向け歩き出す。

 


ノワルヴェールとデュールは二人の背中を見つめた。



会話は聞こえないが顔を見合せ、時より弾むように身体を浮かせていた。

 


「若い隊員が頼もしくなった…。」


ノワルヴェールは腰に手を当て言った。


「…ああ。そうだな。」


小さくなっていく背中を見つめ、二人は会議所に戻った。


 

アジルとアウディアは、怪我の痛みを感じる事は無かった。


中央通りの明かりが二人を賞賛するように揺れ動く。


アジルは空を見上げる。


(母さん…一人旅では得られないものが沢山見つかってきたよ…。これからも見ていてね……。)


アジルの言葉に応えるように空に広がる星が瞬いていた。



――時は遡り アルブ・ピリス


 

カチャ


大きな扉を押し、ブルクはゆっくりと部屋に入り、扉を閉めた。


(血の匂いが強い…。)


全ての灯りが消えていた。


剣を抜き、ゆっくりと部屋の奥へと歩いていく。


ビチャ


何かを踏み、足元に視線を落とす。


そして再び視線を上げる。


そこには血溜まりに倒れる都市長の姿があった――。


(やはり…。)


胴から離れた位置に転がる首。


状況を理解しない間に落とされた首は、口と目が開いたままだった。


ブルクは屈み、顔に手を当て目を閉じさせた。


(アンジュスに恨みのある者…。そして、この狂いの無い太刀筋は…アイザム…。お主しかおらん…。)


ブルクは剣を納め、グッと目を閉じた。



カチャ



「……。」


ブルクは後方で開いた扉に視線を移す。


「ブルク長老…。」


「お主らか。」


部屋に入ってきたのはユスティア達だった。


「…やはり…。殺されていましたか。」


「うむ。」


「家の中には人質の姿はありませんでした。それに都市兵も一人も…。」


(何処へ行ったというのじゃ…。)


ブルクは眉を顰め、顎に手を当てた。


そして、扉の隙間から、遠くに見えた一つの人影を見つける。


 

ヒュッ


ユスティア達の間に風が通り抜ける。


目の前にいたはずのブルクが消えていた。


 

 

「こ、殺さないでくれ…!」


後方から聞こえた声に、ユスティア達は振り返る。


開いた扉の先に一つの人影が見え、その目の前にブルクが立っていた。




「殺す事などせぬ。他の都市兵…人質は何処におる?ここにいる目的はなんじゃ。」


「お、俺は都市兵長に様子を見てこいと言われ、今ここに来た所だ…。」



 

「お前達…!止まれ!!」


ブルクはアンジュスの部屋から聞こえた、ユスティアの叫びに視線を移した。


大男が大剣を抜きこちらに向かってきていた。


その目には涙が浮かんでいた。


「ワシの後ろへ下がるんじゃ。」


三つの大剣が都市兵へと迫ると、ブルクは都市兵の前に立ちはだかった。



ガキィィン!


ドォン!


耳を劈く金属の音の後、床に叩きつけられた三つの大剣。


土埃が廊下に舞い上がる。

 


ブルクは振り下ろされた剣の勢いを消し、受け流していた。


「剣を納めよ…。この者に話を聞かねば…お主らの家族を救えぬぞ…!!」


ブルクの後ろでは都市兵が縮こまり身体を震わせていた。


「お前達!!」


ユスティアが大男達へ駆け寄る。


大男達は歯を食いしばり、身体を震わせていた。


(こんな大男の攻撃を簡単に…。初めてブルクが剣を抜いたのを見た…。こんな奴を暗殺するなんて…初めから無理だったんだ…!)


ブルクは透心考で都市兵の言葉を拾う。


そして剣を納めると大男達の目を真っ直ぐ見つめた。


「誰一人として殺させはせん。必ず救う。」


大男達はブルクの瞳を見つめ、その言葉に落ち着きを取り戻し、剣を納めた。


(俺が助かる道はこいつらに全て話す事…。逃げる事は…)


「逃がす事はせん。冷静じゃな…。話を聞かせてくれぬか?」


ブルクは再び、都市兵の言葉を拾い静かに問う。


都市兵はビクッと背筋を伸ばした。



静まり返る廊下。


「都市兵はここにはいない…。都市長の命――自分が殺された場合、オラディ村を襲えと。そして――」


ブルクは目を細める。


「人質は貧困街で焼き尽くせと――。」


ブルクの瞳孔が大きく広がった。



――数十年前 都市長の豪邸



ブルクは当時の都市長の豪邸にいた。


「当時の彼等の故郷は、アルブ・ピリスへと変わった。彼等に故郷であるここ――アルブ・ピリスで暮らせるようにして欲しい。」


ブルクは毎年のようにここへ訪れていた。


この時、ラヴィエルで約束を誓った亡き者達の親族はオラディ村から少し離れた村で暮らしていた。


彼等はアルブ・ピリスで暮らすことを望んでいた。


「ソウルガーディアンズは命を懸けて、人間に降り掛かる脅威に立ち向かっている。このアルブ・ピリスの人間達もお前達を頼りにしている。いいだろう。中央通りの外れが空いている。そこに移り住めば構わん。」


ブルクが立ち上げたソウルガーディアンズがやっと認められた瞬間だった。


「ありがとう…。」


 

ブルクは都市長の豪邸を後にし、真っ直ぐラヴィエルに向かった。



(宿りし魂よ…。)


ラヴィエルに手を当て唱えた。


そして――


当時の戦で命の奪い合いをし、フィアーバと共にラヴィエルの元へ埋葬した人間達――。


「"血浴"…。いや…ブルク。本当に俺達との約束を果たしてくれたのか…。ありがとう。」


「長い時が流れてしまったのう…。」


ブルクは俯きグッと目を瞑る。


「時の流れは誰にも止めることは出来ない…。でも、お前が一時の時間も無駄にせず、人間と向き合ったことがこの結果をもたらした。心から感謝している。」


「いいや、これは使命じゃ。これからも変わらず守っていく…。」


「ああ。よろしく頼む…。」

 

そしてラヴィエルの元、再び誓ったのであった――。

 


――現在 アンジュスの豪邸



「貧困街じゃと……!?」


(都市長がアンジュスに変わり、かつて守ると誓った彼等の居場所は貧困街と称され、蔑まれてきた。それが今、焼き尽くされるだと…!?アンジュスめ…。)


ブルクは拳を握る。

 

そして廊下の窓、その先――


ぼんやりとオレンジ色の灯りが視界に入った。



――診療所



「そうですか。特に変わりはありませんか…。」


「はい。」


所長室で話を受け、都市兵の暴走等による怪我人がいないこと、そしてアルブ・ピリスの様子は普段と変わりがない事が分かり、三人は所長室を出た。


そして診療所の入口の扉を開いたその時――


一匹の小動物が慌てた様子で駆け寄り、ユイベルの肩へ飛び乗った。


 

「――えっ?」


ユイベルの表情が曇る。


「どうかした?」


「この子逃げてきたみたい…。」


フィオルとアイベルは顔を合わせた。


「何処から?」


「廃れた街って言ってる…。」


そして次の瞬間――


微かに感じた木の燃える臭いに、フィオルは遠くの空に視線を移した。


(貧困街…!エディウス…!!)



――エディウス

 


中央通りを外れ、貧困街に住む母チェリスの元へ向かっていた。


路地を幾つか曲がり、普段は人が歩かない道に出た。


遠くからこちらに向かってくる走る都市民。


すれ違う瞬間、都市民の焦った表情に眉を顰める。


途端に感じた木の燃える臭い。


エディウスは駆け出した。


(次の路地を曲がれば…!母さん!)



どんどん強くなる臭い。


パチパチと木が弾ける音が聞こえ出す。


最悪の自体が頭を過ぎる。


そして路地を曲がった。



「――そんな…。」



炎がチェリスの家を覆い尽くしていた――。

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