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ソウルガーディアンズ   作者: HachiHachi
第三章 人としての使命
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第十七話 影矢

――アルブ・ピリス



九人を乗せた馬車がアルブ・ピリスの正門を潜った。


夜の中央通りは、日中ほどではないが、まだ人の流れが残っていた。


「ワシはユスティア達と共に、都市長邸にこのまま進む。フィオル達はここで降りて、都市内を回ってくれぬかの。」


「「はい!」」


フィオル、アイベル、ユイベル、そしてエディウスが降りると、馬車は中央通りの先に見える都市長邸へ進んで行った。


中央通りの人の数はまだ多いが、馬車は真っ直ぐ進んで行った。


「ブルク長老…。危険では!?」


ユスティアは馬車を避ける人々を見ながら言う。


「一刻を争う事態じゃ。今は敵も、ワシらが動いたことを知らぬ。堂々としていた方がよい。混乱はフィオル達が治める。今は人質の事を気にしていなさい。」


「…はい!」


馬車は止まることなく、進んで行く。

 


———

 


「中央通りの人達を落ち着かせたら、エディウスは左回りで都市内を頼む。既に都市長が死んだ事を知ってたら暴走しかねない。…大丈夫だよな?」


フィオルはエディウスの肩に手を置き言った。


「大丈夫ですよ!もう地図は頭にしっかり入ってますから!」


「よし。じゃあ、行こう。」


「はい!」


「私は?」


ユイベルが不安げな表情で声を上げた。


「ユイベルは…」


「あらー。アイベルちゃん。」


「お、アイベルちゃんだ!」


行き交う都市民がアイベルに声を掛けた。


「こんばんは。」


挨拶を交わすと都市民は去って行く。


「ユイベル、アイベルはこの都市でも顔が知られてるからアイベルと俺と一緒にいれば大丈夫。アイベルの手は離さないでね。」


「分かった!」


馬車が去った後、一行は中央通りを歩きながら都市民に声を掛けた。



「皆はまだ都市長が殺された事は知らされてないみたいだね。中央通りは特にいつもと変わらない。」


「そうね。でも都市兵は一人も見てないわ。」


「たしかに。エディウス。都市内を回ろう。回り終わったら正門集合で。」


「分かりました!」


「そうだ…。まず、お母様の所に行け。あの辺りは少し治安も悪い。」


「あ、ありがとうございます!」


(母さん…何も無いといいけど…。急ごう!)


エディウスは駆け足で母親の元へ向かった。



「俺達はまず療養所へ行こう。中央通りは普段通りでも、都市兵の影響で怪我人が出た場合は療養所に人が集まるからね。」


「そうね。」


そして、フィオル達は療養所へと向かった。


 

――ブルク組



中央通りの終点に馬車が止まる。


そこは広場となり、中央には大きな噴水、その奥には石造りの都市長邸が威圧するように建っていた。


広場では都市民や観光者が日常を過ごしていた。


馬車に注目が集まる中、ブルク達は降りた。


そして目の前の都市長邸へ駆け足で向かった。



「人質がどこに囚われておるか分からん。中へ入ったら別れて探すのじゃ。ワシは都市長の部屋へ行く。」


「はい!」


そして、正面の扉へ辿り着く。


「都市兵がおらん…。」


ブルクは静かに呟いた。


(普段なら夜中でも二人の兵がおるはず…。)


胸騒ぎがし、ユスティア達に視線を移す。


表情は曇り、額からは汗が流れていた。


「入るぞ…。ここからはなるべく音を立てないよう動くのじゃ。」


「はい。」


そして、扉を開け一行は都市長邸へと入っていった。



――オラディ村



カチャ


会議所の裏口が開き、デュールが戻った。


「話はまだ年長者にしか届いていないみたいだ。混乱は起きないだろう。」


「よし。デュール。アジルが村人に紛れた都市兵を見つけた。これからディルケが商人を装いその都市兵に話し掛ける。その隙に捕える。」


「了解だ。」


コンコン


突然会議所の扉を叩く音が聞こえ、中にいる一行は身構えた。


沈黙が訪れる。


「ノワルヴェール隊長…!アウディアです!」


ノワルヴェールは大きく息を吐き、扉の元へ向かった。


「どうした?」


静かに声を掛ける。


「集会の終了の予定時間を過ぎていましたので、どうしたのかと……。」


ノワルヴェールは中にいる一行に視線を移した。


「どうする?」


「都市兵はこの状況を見ているはずだ。」


「アウディア、裏口から入るんだ。」


「ノワルヴェール!見られてるんだぞ。」


デュールは声を上げた。


「いや、あの子は耳が良い。都市兵を炙り出すのにいてもらった方がいい。」

 


しばらくすると裏口からアウディアが入ってきた。


そして、ノワルヴェールはアウディアに状況を説明した。


「敵の数が分からない…。お前の耳が頼りになる。腱に傷があるということは、歩きのリズムが他の人間とは違うはず。アジル一人では見つけるのは難しい。」


「分かりました!」


(この人がエルジオーネの英雄…。)


「よろしくお願いします!」


「え、ええ。」


(距離が近い……。)


アウディアはアジルに顔を寄せ、握手を交わす。


「では、ディルケ。会議所から一番近い都市兵へ接触してくれ。」


「分かった!」


そして、ディルケは裏口から外へ出た。



(随分長い……。しかし、入ってからまだ戦いの音は鳴ってない。アンティカルの連中は何をしてるんだ?とりあえずは待つしかないか……。)


露店の陰の都市兵は疑問に思っていた。


「あのー。すみません。」


ディルケが後方から声を掛け接触する。

 


「声を掛けた。デュール、裏口から出て隙を見て連れてこい。」


「ああ。」


会議所では接触したのを確認し、大きなマントを纏いデュールが外へ出る。


 

「あ、いやぁ。実は俺はここの村の者じゃないんだ。」


「商人?観光者?」


ディルケは質問を投げ掛けていた。


デュールは息を殺し、都市兵の後ろへ回る。


そして――


トンッ


「うっ……。」


首筋へ手刀を打ち込み、都市兵の身体から力が抜けた。


倒れる前にマントの中で担ぎ、デュールはその場から消える。

 


「よし。」


会議所内で見ていたノワルヴェールは小さく頷いた。


会議所の裏口から戻ったデュールは都市兵をその場に寝かせる。


「次だ。二人共、他はどうだ?」


「…見当たりませんね。」


「私も耳を澄ませてますが、見つけられません。」


「そうか……。デュール。ディルケがもう一人に接触するぞ。」


「ああ。」


デュールは足早に会議所を出る。


 

(見つけた。たしかに歩き方が不自然だ…。)


ディルケは中央通りを歩く都市兵を見つけ、後を追う。


「あ、あのー。」


ディルケの声に、都市兵が振り返る。


「何だ?」


「僕は商人。この村に来るのが初めてで……」



(接触した。よし。デュールも追い付いた。)


ノワルヴェールは息を呑んで見ていた。


「俺も初めてだ。」


「そうだったんですね。」


(話し掛けて動きは止まった。もう少し近づかなくては。)


デュールは静かに会話をする二人に近づく。


二人まで5m――。


「温泉の場所は……」

 

ディルケが声を上げたその時。


一瞬、風が止んだ――。

 

 

ドスッ


ディルケの右肩に矢が突き刺さる。



((何……!?))


ノワルヴェールとデュールの声が重なる。


「うっ……!」


ディルケは肩を押さえ、片膝を地面に付ける。


都市兵は走り去り姿を眩ませた。


(ディルケ……!)


デュールはディルケに駆け寄り、担ぐと会議所へ走った。



「まずい…!何処からだ!?」


ノワルヴェールは叫んだ。


「ノワルヴェールさん。村人に向けられたら大惨事です!直ぐに外へ行きます!」


アジルは腰に剣を差し、会議所を飛び出した。


「変な角度で矢が刺さった……。」


アウディアは小さく呟いた。


「矢の角度は?」


ミトは静かに声を上げた。


(高い位置から、放たれたような角度…。方角からして、オラディ村に高い建物は…無い。)


アウディアは顎に指を置き考える。


「…もしかして…山!ノワルヴェール隊長!私も外へ出ます!」


「ああ!アジルにも伝えろ!」


「はい!」


続けてアウディアも外へ飛び出した。

 


ドンッと裏口の扉が開き、ディルケを抱えるデュールが戻る。


「ノワルヴェール!矢だ!」


「ああ。見ていた。遠くから見ている者がいるみたいだ。矢が刺さった角度からして、恐らく山から…。お前は村人の避難を。俺はディルケを療養施設へ運ぶ!」


「分かった!」


そして二人は会議所を出た。

 


「独りになってしまったのう。」


ミトは小さく呟いた。


「起きては困る…。」


ミトは会議所に置いてあった麻紐を見つけ、気絶している都市兵を紐で動けないようにした。


「待つとしよう…。」


そして静かに椅子に座った。



———

 


デュールは中央通りに飛び出したアジルとアウディアに追い付く。


「二人とも、まずは村人の避難を呼び掛けてくれ!」


「「はい!」」


中央通りの村人達は、三人の険しい表情を見て異変に気付く。


家族連れの子供の泣き声が上がると、周りの村人達に混乱が伝播する。


「皆さん!矢による奇襲が発生しました!落ち着いて行動をお願いします!直ちに家屋へ避難してください!」


デュールは大きく声を掛ける。


アジルとアウディアも手分けして声を掛け、村人達を家屋へ誘導する。


騒ぎを聞き付けた隊員達も集まり、村人達は中央通りから姿を消していく。


(よし。だいぶ中央通りの人は減った!)


「急いでください!」


デュールは村人達の動きを確認しながら、尚も声を掛ける。


そして、最後の家族が家屋に入る直前――。


母親と手を繋いでいた子供がつまずき、転倒してしまう。


「大丈夫ですか!?」


近くにいたアウディアが手を伸ばす。




ギリギリギリ――。


(…ハッ――。)


アウディアは喧騒の中、弦が限界まで引き絞られる微かな音を拾う。


(弦を引く音……!!北の山…!)


アウディアは一瞬で音の方角に視線を移す。


「デュール隊長……!北の山から…」


アウディアはデュールに向けて大きく声を上げた。


だが――。


ヒュン


矢はアウディアの腕のすぐ横を掠め、子供の足元の地面へ突き刺さった。


一瞬身体が動かなかった。


だがすぐに、倒れた子供を抱き、家屋へ飛び込んだ。



「ハァ…ハァ…大丈夫?」


アウディアは家屋の床に身体を叩きつけながら子供に声を掛ける。


「……。」


子供は状況を掴めず固まっていた。


「お母さんと隠れててね!」


そう告げ、子供の頭に手を置き、笑顔を向ける。


顔を上げると一瞬、フードを深く被る村人が視界に入った。


(……。気のせいかな?)


アウディアはその人物に接触すること無く、外へと出た。



アウディアが外へ出ると、中央通りには10人の隊員が集まっていた。


「アウディア大丈夫か!?」


「はい!」


「良く守った!アジル、北の山を見てくれ!他の隊員は二人に代わって、村人の避難指示を!」


「「はい!」」


(北の山…必ず見つける!)


アジルは北の山に目を凝らす。

 


月は雲に翳り、オラディ村を囲う山々は闇のように暗い。


だが――。


暗い森にぼんやりと浮かぶ二つの白い光。


(居た……。一人…いや、二人!)


逆にその暗さが極視光の本領を発揮させた。


「デュール隊長!見つけました!!」


(アウディアさん…凄い…。ホントに北側の山にいた。)


アジルはアウディアの耳の良さに圧倒されていた。

 


ギリギリギリ…ギリギリ。


(また弦を引く音だ…!でも音がズレてる!二人ね!!)


「二人ですね……!」


アウディアの声にアジルは大きく頷く。


(アウディアさん凄い…数も合ってる!)


ヒュンヒュン


遠くで風を切る音が鳴った。


その矢は家屋に入る寸前の村人へ向け放たれた。


アジルは剣を抜き、音に向かって走る。


(させない…!!)


そして、アジルは村人に向かう矢を受け流すように弾く。


(敵が遠過ぎる…!確実に見えてる。…でも場所を伝えても、正確な場所は伝え切れない…。これじゃあ防戦一方だわ!どうすれば!)


アジルは焦っていた。


「…私が!」


アウディアはアジルの表情を見つめ大きく声を上げた。

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