表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルガーディアンズ   作者: HachiHachi
第二章 強欲と黒い影
41/53

第十一話 暗躍

――レリッタ


地面に広がる血は陽の光を反射し、風は穏やかに流れ、兵達の呻き声を森の奥へと流す。

 

倒れていた兵の数は50に昇るがその者達は皆、デュールの言った通り、気絶はするも命を失う者はいなかった。


デュール達がレリッタを出てから時間が経つにつれ、一人また一人と起き上がり、現状を理解しようと声を掛け合っていた。


「おい、大丈夫か?」「ああ…。」


声は弱く、遅れて走った痛みに、身体を摩りながらレリッタ中を見回す。


鉄と血の臭いが、まだ風に残っていた。



「「………。」」



 

起き上がった兵は目の前の光景に呆然と立ち尽くし、言葉が出なかった。

 


『あの道から逃げたぞ…!』『数で押せぇぇ!』


『この道は命を懸けても通さん…!!うぉぉ!!』

 


鬼神の如く大槍を振るう大男と対峙した瞬間が脳裏に焼き付いていた。


視線を落とすと自分達の血が地面を染め、レリッタの至る所にクレーターを幾つも見つける。

 


駐在していた家屋の方から、駆ける足音が聞こえると起き上がった兵達はビクつきながらゆっくりと振り返る。

 


「うわぁぁぁ!」

 


敵襲かと勘違いし、取り乱す者もいたが向かってきていたのはデュールとの対峙を諦め、逃げていた十数人の兵だった。

 


「大丈夫か!?」


「…お前達…何で逃げやがった!」

 


声を掛けるも裏切りを憎み、大きく声を上げると遂には殴り合いが始まる。


それは勝者の出ない殴り合いだった。


「それでも兵士か!?」「あんなの無理だろ!」


やがて喧嘩は他の兵を巻き込み乱闘へと変わっていく――。




その様子を家屋の奥の森から見ている人物がいた。


「惨めな奴らだ…。本当にアイツは強かったなあ。まさか盾でも攻撃するとはな。油断してた俺が悪いが、脇腹に直撃だ。」


脇腹を摩りながら黒い服を纏う男は呟いた。


「殺気は無かった…。あの大槍は威嚇で素振りするだけだったな。ただ…あの力と振るうスピードは凄まじかった。振るった瞬間…爆発音と共に衝撃波が目に見えた程だ。殺す気のアイツと対峙した場合…俺一人なら絶対勝てない。これは報告だな。助けが来たが…今頃苦しんでいることだろう。フフフフ…。」


木陰から覗く男は黒いフードを深く被り、鉤爪の様な武器を動かしニヤリと笑った。


「しかし、この村ももう空けなきゃな。あの人の怒りが降りかかる前に戻るか…。」


そう言い残すと男は森の奥へと消えていった。

 


――時を同じくして、アルブ・ピリス


厳重な警戒態勢を敷く正面の門。


真反対の位置にある裏門の警戒は甘く、オルコ率いる兵達は怪しまれないように時間をズラし、アルブ・ピリスに入っていた。


オルコは大街道の途中で馬車から降り、自らの足で歩くと数人の兵と共に門へ向かった。


門に着くと、兵とは無関係の人間を装い、怪しまれる事なく中に入った。


オルコはダイアボから出る事は無い為、その顔を知る者はいない。


 

オルコは露店を見回しながら、中央通りを練り歩いていた。


兵達は常にオルコの見える位置に付き、武器は大きいマントで隠し、異変が生じたら即座に動けるように片手は常に武器に触れ行動していた。


人が行き交う中央通りは騒がしく、商人、冒険家、そして、アルブ・ピリスの都市兵の姿もチラホラと見える。

 


「あちらの道に入ると間もなくです。」


歩くオルコに近づき、耳打ちをした兵は一言だけ声を掛けると人混みに消えていった。


ニヤリと笑みを浮かべ足早に道を逸れると目的地まで止まることなく歩み続ける。


 

「ここか…。」


(ワシの求めているあの女とオラディ村の薬師が大きく関わると言われるこの施設…。)


オルコが目を付けたのはアルブ・ピリスの療養所であった。


オルコはゆっくりと扉を開け中へと入っていった。


中には治療を受ける多くの患者がいたが、オルコは構わず、涙目になると急に叫ぶ。


「ううー!早く治療をしてくれー!」


その声を聞いた医者は治療室から飛び出し、オルコに駆け寄るが、他の患者はオルコを避けるように部屋の端に身を寄せる。


「何事ですか!?」


駆け寄る医者の言葉をオルコは無視し治療室へと歩いて行った。


 

「困ります…!」


オルコを追い治療室に入るなり医者はオルコに大きく声を上げた。


木の椅子に座るオルコは胸に手を当て身体の不調を装う。


「病じゃ病じゃ!」


「順番というものがありま…」


オルコの対面に座りながら口を開けた医者だったが、音もなく天井から一人の男が降りてくると医者の首元に剣を置いた。


「あ…あ…。」


突然の恐怖に汗が滲み、叫ぶ事も出来ない医者。


「助けを呼ぼう等と考えるな…。あの女をここへ呼ぶんじゃ…。」


「あ…あの…女とは…?」


医者は言葉を詰まらせながらも問い掛けるとオルコは不敵な笑みを浮かべる。


笑っているのに目だけは一切笑っていなかった――。

 


――オラディ村 ブルク宅


「お、来たかのう。」


大きな窓をツンツンと叩く伝書鳥。


窓を開けると肩に飛び乗り、脚に括り付けられた手紙を読むとブルクは自宅を出て行く。


そして、中央通りを行き交う村人達と歓迎の準備の確認を済ませ、療養施設へと向かった。


 

「今日もありがとうございました。あらブルク長老。こんにちは。」


「こんにちは。身体の具合はどうじゃ?」


「ええ。クラルさんのお陰でだいぶ良くなりました。」


「そうか。それは良かったのう。自分の身体を第一に考えるのじゃ。お大事にのう。」


「はい!ありがとうございます。」


療養施設を出る村人と挨拶を交わす。


 

「おや?ブルク長老。」


「クラル。今日は忙しそうじゃな。」


「ホントにあの子の存在の大きさに感謝しております。」


苦笑いを浮かべ、道具を片付けるクラル。


「そろそろ休憩時間じゃろう?」


「はい。そうですが。」


「タイミングが良かった。フィオルから伝書鳥が届いたのじゃ。」


「村人はご無事で!?」


ブルクの言葉を聞き、前のめりに問う。


「無事じゃ。じゃが…デュールが毒に侵されておる。手持ちの解毒薬でなんとか堪えておるみたいじゃが…。」


「任せて下さい。私はあらゆる毒の対処法を存じておりますので…!」


「うむ。村人達の身体も含め、直ぐに処置を頼んだぞ。」


クラルは力強く頷き、ブルクは療養施設を後にした。

 


――アルブ・ピリス


「あの医者め…。今は村を出ているじゃと?」

 

 

『あの子は今、村を出ていまして…。呼ぶという事は出来ないんです…。』


『嘘を付いたらどうなるか分かるか?』


『う、嘘ではないです…!』


首元に置かれた剣を傾け、ピタッと首に触れると灯りが反射し、医者は目を瞑る。


『こ、これです。』


そう言いオルコに渡したのはオラディ村からの手紙であった。


そこにはアイベルがオラディ村を少し空ける事、要人等の治療が必要であっても直ぐには駆け付ける事が出来ない事が書かれていた。


手紙を読んだオルコは手を挙げ、首元に置かれた剣は降ろされた。


『ワシは一国の王じゃ。ワシがここに来た事を誰にも話すでないぞ?』


そう言い残すと施設を出ていったのだった――。

 


「どうしたものか…。」


自分の思い通りに事が進まないことに、苛立ちを顔に出しながら中央通りを歩いていたが無意識に道を逸れていく。


 

「…いえ。また何かありましたら直ぐに駆け付けますので…!では!」


路地に入ったオルコは、先の方で会話をしている声が聞こえ、顔を上げた。


そこには、竜種研究所からの依頼を終えたアルドがいた。


アルドはオルコに気づく事無く、竜種研究所を後にしようとオルコに背を向け、歩き出す。


「兵士か…。ガタイも良い。強そうじゃな。」


オルコはアルドを見て、そう呟くと辺りに人が居ない事を確認し手をゆっくり挙げた。


ヒュンという風を切る音が鳴るとアルドの太ももに細い矢が刺さる。


「うっ…!」


突然の痛みに声を上げ、瞬時に剣に手を伸ばすアルド。


後ろからの攻撃と判断し、振り返り剣を抜く。


「……!!」


視界が揺れ、膝が折れる。


力が抜け、剣を落とす。


カランと地面に剣が落ちる音が響く。

 


「反応も素晴らしい…。」


オルコは遠くの家屋の陰からその様子を伺い呟く。

 

そして、一瞬にして数名のダイアボの兵士達が路地に駆け付ける。

 

アルドは自身の周りに群がる兵達を睨んだ。


「き、貴様らは…な、何者…だ…っ!」


「何者?言うわけないだろう。しかし、よく喋れるな。強い麻痺毒だぞ?」


一人の兵士が関心し応えるが首の後ろへ手刀を打ち、アルドは気絶し、大きな麻の袋へ入れられた。


「如何しますか?」


一人の兵がオルコに問う。


「先に帰って、牢屋に入れておけ。ワシはもう少しこの都市を観光する。」

 

そう告げるとオルコはその場を後にした――。


――フィオル一行


大街道を快速で進んでいた馬車。


丘を昇ると、アルブ・ピリスが遠くに見えた。


「そろそろ右側に道が出てくるはずだ。」


ゼールは馬に跨り並走するアウディアとエディウスに声を掛ける。


エヴァルはゼールの言葉に反応し鳴くと、馬達は更にスピードを上げ、丘を下った。


「あった!」


エディウスが声を上げ指を差すと、馬車は森に囲まれるオラディ村へ続く道へと入って行く。


「大街道を曲がった。もうすぐ着くね。」


「そうね。」


「皆さん。もうすぐでオラディ村に着きますが、ここからは砂利道が続きますので、少し揺れるかと思います。転ばないように気を付けて下さい。」


馬車の中でも進行が確認出来るとフィオルは村人達に伝えた。


「コラン!もうすぐだな!」


「はい…!でも…。」


村人達は希望に満ち溢れた表情をしていたがコランはルイナとデュールを見つめた。


デュールの手を離さず、未だに苦しむその様子をじっと見つめているルイナ。


「デュールさん…。もうすぐ着くみたいですよ。負けないで…。」


ルイナはデュールが苦しみの声を上げる度に優しく声を掛け続けていた。

 


デュールの呼吸が荒くなる。


傾いた陽の光が馬車の中を照らす。

 

「フィオル…。」


アイベルは初めて見るデュール表情に、不安な気持ちが押し寄せていた。


「大丈夫さ。俺もあんな表情のデュールさんは初めてだけど、こんなところでデュールさんはくたばりはしないよ。伝書鳥を飛ばして、既にクラルさんには伝わってると思うから直ぐに診てもらおう。クラルさんならなんとかしてくれるだろ?」


「うん…。」


(これからもっと強い脅威が訪れる…。今の私の力じゃ何にも出来ない。毒も病も治せるように私の力も強くならなきゃ…。もっと多くの人を守れるように絶対なる……。)


アイベルは拳を握り、心願をより極めると心に誓ったのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ