表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルガーディアンズ   作者: HachiHachi
第一章 大樹の守護者
29/53

第二十九話 始まりの樹

ノワルヴェールと別れフィオル一行は森を進んでいた。


「水の音がする。」

 

「そうだね。もう少し進むと川に当たる。その上流に行くと…」


「アヴェニール洞窟?」


二人が十年前に出会ったアヴェニール洞窟。


二人は出会って以来その洞窟には訪れてはいなかった。

 

「そう!君と出会った場所!寄りたい所だけど、コランから預かったラヴィエルの樹皮があるから早くラヴィエルに向かわないとね。また今度行こう!」


「そうね。」


そして川が見える直前、川に繋がる林道を逸れると人一倍太い樹があり、指を差したフィオル。


「この樹の根元に地下道へ続く穴があるんだ。」


樹の根元の周りにある植物達を掻き分けると、そこにはエヴァルに乗っていても入れる程大きな穴が空いている。


一行は地下道に続くこの穴へと入っていった。


 

竜種との戦闘を終え、身体はまだ熱を帯びていたが地下道はひやりと冷気が漂っていた。


「ここの地下道は幅が広い。寒いけど走って向かおうか!急がないと宿っているかもしれない魂が消えてしまう可能性がある。」


「うん!」


フィオルはエヴァルに飛び乗り、アイベルの後ろに跨ると脚でエヴァルに合図し一行はラヴィエルへと走り向かった。


――草原


「なるほどな。私達が足を運んでいればそんな事にはならなかったかもしれない…。ホントに申し訳ない…。」


デュール、コラン達から話しを聞き、倒れた藍色の竜の前でコラン達に頭を下げるノワルヴェール。


「デュール。すぐにオラディ村へ戻ってくれ。」


「ああ。そうしようとフィオル達とも話をしていた。帰ったらすぐにブルク長老に話をする。」


「そうだな。ブルク長老から届いた伝書鳥にも聞いた話を手紙に書いておく。私はここでアルブ・ピリスから来る者達を待つ。それが終わったらすぐに村へ戻る。そうだ…それと、俺の伝書鳥を連れて行け。迷子にならんようにな。」


迷子という言葉に眉をピクっと動かすデュール。


「「「…?」」」


コラン達を見ると頭には?が浮かんでいる顔をしていた。

 

「…あ、ああ。ありがとう。分かった。」


素直に言われた言葉を受け入れデュールは返した。


ノワルヴェールは手紙を書き、ブルクの伝書鳥へ括り付け空に放つ。


そして指笛を鳴らすと一羽の鳥がノワルヴェールの肩に止まった。


撫でながら伝書鳥をコランの肩に乗せると、服を啄かれたコランは首を傾げる。


「今覚えた匂いをブルク長老の伝書鳥に覚えさせる。ブルク長老の伝書鳥はスピード特化…一つの目的しか実行出来なくてな。覚えさせたらレリッタへ飛ばす。自分達の良いと思うタイミングで手紙を付けて空へ放て。」


「分かりました。」

 

「それと、デュールを頼んだぞ。」


コランに乗った伝書鳥をデュールに渡す。


「今日はバカにされてばかりだ…。」


少し肩を落とした様子のデュールだったが、すぐに姿勢を戻しコラン達に身体を向ける。


「後日また会おう。気をつけて帰るんだぞ。トルヴィス…お前はあまり調子に乗らずに帰るんだ。では…。」


「ああ。分かったよ。」

 

「ありがとうございま…」

 

頭を下げている最中だったがデュールは地面を強く蹴り、猛スピードでオラディ村へと帰って行った。


「ノワルヴェールさんもありがとうございました。」


デュールの背中を見届けノワルヴェールに礼をするコラン達。


「先程も言ったが私もすぐに村に戻りレリッタに向かう準備をする。私は行けるか分からないが…もう少しの辛抱だろうが頑張ってくれ。」


「はい!では…。」

 

コラン達は頷き礼をするとレリッタに向け歩き出した。


 

「コール大陸の北の地か…。必ずオラディ村へ連れて行こう。」


ノワルヴェールはコラン達の背中を見送り呟いた。

 


――フィオル一行

 

「白い光の世界…?」


「そう…。」


エヴァルの走る蹄の音が鳴り響く中、アイベルは眠っていた時に見たモノの話していた。


「その世界にもラヴィエルがあったのか…。ラヴィエルに行くこと自体初めてだよね?記憶に関する何かが得られればいいね。」


「………。」


俯き、フィオルの言葉に応えなかったアイベルは、白い女性の"特別な愛"という言葉を思い出し、眠りから目覚める直前に繋いでいた手を離してしまった事をフィオルには言えなかった。


 

(あれは誰だったんだろう…。同じくらいの身長だったから歳も近いはず…。)


少しの間静かに考え込む。


手を繋いでいた白い人物はシルエットだけで"何者か"までは分からず"特別な愛"というものにも違和感を覚えモヤモヤしていた。


「アイベル?」


「ああ!ごめん!考え事してたっ!」


「ジール副隊長にも話を聞いてみよう。あの人の知識は凄いからね。白い光の世界についても何かしら知っているかもしれない…。」


「うん…!」


記憶を取り戻す希望を胸に一行はラヴィエルへと走り続ける。

 

 

――オラディ村


フィオルが藍色の竜の首を落とす時に発現した"魂剣"による強い光りは物見櫓からはハッキリと見え、地上にいたブルクも遠い上空が一瞬明るくなるのを目視していた。


それから時間は経ち、村はいつもの様な静かな夜になっていた。

 

「決着はついたかのう…。」


(あの光は今までで一番の明るさじゃった…。フィオルかアイベルかは分からぬが御業を極めつつある…。どちらにせよ二人は大人になり驚く程成長しておる。)


二人の日常を日々見ているブルクは二人の成長に、そして今回の御業による光の強さを見て関心していた。


「お疲れ様ですブルク長老。」


監視の交代の時間になり、新たな隊員が物見櫓に訪れる。


櫓から監視していた隊員が降りてくると、隊員は情報を共有した。

 

「よろしくのう。ワシは伝書鳥の戻りを待つ。」


そして、ブルクは隊員達に声を掛けると自宅へと歩いていった。


(この先…御業を使う場面が竜種だけであれば良いがのう…。)

 

――フィオル一行


地下道は真っ直ぐ延びていて時々分かれ道が左右に現れる。


そして進み続ける中、分かれ道の手前に樹の形の焼印がされた木の看板の様なものが天井からぶら下がっていた。

  

「あの道を曲がればラヴィエルのすぐ近くに出れる。」


フィオルは指を差しエヴァルの腹をポンポンと触る。


エヴァルは速度を落と道を曲がると、フィオルの合図で止まり、二人はエヴァルから降りる。


 

先にある出口は植物が生い茂っているが、その隙間からは薄らと星空が見えていた。


出口は狭くエヴァルがなんとか出れる程で、植物を掻き分け地上に出ると、地下道の入口の脇には苔がビッシリ生えた大きな岩が二つ立っていた。


「この入口はなかなか見つけられないわね…。」


「ああ。」


服をパンパンと叩き砂を払い再びエヴァルに乗り、一行はすぐ近くにあるラヴィエルへと向かう。


道無き道を進むと林道にぶつかり、その林道の先を見ると高く聳え立つラヴィエルが姿を現した。


「村からしか見た事無かったけどこんなにも壮観だったなんて…。上まで見えない…。」


アイベルは見上げながら呟く。


辺りは暗いがその姿は目視でき、アイベルは圧倒されていた。


目線を下に戻すと灯りが点いた木造の建物が林道沿いに建っていた。


「あそこはラヴィエルに訪れる人達の受付と警備隊の休憩所だよ。あそこへ寄らないとソウルガーディアンズの人でもラヴィエルには行けないんだ。」


「そうなのね…。」

 


建物へ着くとノックをして入っていく。


扉を開けると中はかなり広く、吹き抜けになっており階段をあがると二階にもスペースがある。


 

「こんな時間にどちら様ですか?」


低い声が二階から聞こえ柵からひょこっと顔を覗かせる人影があった。


「お疲れ様です。剣撃隊所属のフィオルです。」


人影に向かって声を掛けるとギシッと木が軋む音が聞こえ、階段を降りてくる人影。


「おお!フィオルか!それと…君はアイベルとエヴァルだね?」


「エルガさんお久しぶりです!」


フィオルとアイベルはお辞儀をするとエルガはエヴァルを撫でた。


 

「ラヴィエルの警備隊長だよ。」


紹介をするとエルガは頷き、ニコッと笑顔を見せた。


エルガは現在の警備隊の長で世界のラヴィエル警備隊を統括し、彼の父、祖父もまたラヴィエルの警備に大きく貢献した。


先祖代々ラヴィエルの警備を任される一族であり、人々からの信頼は厚く、体格はデュールに劣らないほどがっしりとしている。

 


「…アイベル。実は君とは一度会ったことがあるんだ。」


首を傾げるアイベルに優しく微笑むが少し暗い顔をしたエルガ。


「ブルク長老が光を絶ったあの日。村民会議の後にクラルさんから事件の詳細を聞きに療養施設に寄ったんだ。君はお茶を出してくれたが終始俯いていて悲しい表情をしていた…。覚えていないのも無理もない。幼い子供にとっては心に残る悲しいモノ。私達警備隊にとっても大きな出来事で、あれからはより慎重に確実に警備にあたるようになった。」


「そうだったんですね…。覚えていなくてすみません。」


悲しげな表情をし頭を下げるアイベル。


「いやいや。悲しい顔も謝罪もしなくていい。そんな顔をしては美しい顔が台無しだ。顔を上げなさい。とても立派な女性になったね。」


顔を上げエルガからの笑顔を受けるとアイベルは頷き微笑む。


「今日の為にここへ?」


「そうだ。ノワルヴェールや君達が来ると思ってな。ノワルヴェールはもう寄ったが君達は意外と遅かったな。」


各大陸のラヴィエルの警備、管理、講演などで世界中を渡るエルガだが、今日という日を忘れずにコール大陸にあるラヴィエルへと来ていた。

 

「それが…」


ここでフィオルはパラファラ、藍色の竜と対峙していた事を話す。


「森が騒がしく時より微かに大きな音がしていたのはそのせいか…。いやしかし本当に倒したとは!ラヴィエルや人々への脅威がまた減ったな!さすがだ!!」


フィオルの背中をドンと叩き笑顔を向けるエルガ。


「今日という日に倒すとは…。…本当に…良かったな。」


後半少し悲しげな口調に変わるエルガに二人は頷く。

 


少し間が空きエルガは続けた。

 

「今日という日の為、それと最近、ペルディータの動きも怪しくなってきたと報告があってな。ここのラヴィエルは特別だ。"アルケ・ラヴィエル"とも呼ばれ、始まりの樹である。ここのラヴィエルの被害は最小限にしなくてはならない。」


口調は戻り、真剣な眼差しで二人を見つめながらエルガは話す。

 

「始まりの…樹?」


「そうだ。まあ話しながらラヴィエルへ向かおうか。」


そういうと灯りを取り出しエルガを先頭に一行は外に出た。


 

外はまだ暗いがラヴィエルの頂上付近の葉が光を浴びているのか、黄金色に輝く葉が見えた。


「もうじき日の出だ。対峙してしまったせいで日は跨いでしまったが彼らは心待ちにしているだろう。」


 

林道をラヴィエルに向かい歩くとアイベルは、その壮大さに圧倒され自然と口が開く。


「遥か昔…。神が一つの種を大地に埋め、やがて一本の樹が生えた。そしてその樹は神の力で瞬く間に成長し、やがて世界中に根を張り、海、空…あらゆる自然に生命を生んだ。その始まりの樹というのがここのラヴィエルとされている。」


アイベルの口は尚も開いたままで、目の前に力強く聳え立つラヴィエルを見上げ話を聞く。


「ソウルガーディアンズに入る者は、この話を教本で学び、毎日の様に聞かされる。」


エルガの話を聞きながら幹をよく見ると高い位置に見覚えのある瘤の様なものがあったが、アイベルは違和感を感じるだけですぐに目線を違う箇所へ移す。


「さあ、ここからは君達だけで行くんだ。」


立ち止まる一行の目の前には石で作られた門があり、門を潜るとその先にはラヴィエルを囲うように、幹の周りに柵が設置されているのが見えた。



ジール達との対話を目前にし二人の表情は少し強ばりを見せた。


特にアイベルはあの日以来対話していないこともあり、鼓動は早くなっていた。


 

「終わったら声を掛けにまた寄ってくれ。」


一礼するとエルガは林道を戻って行った。

 


「よし。さぁ、行こう。」


フィオルはアイベルの手、エヴァルの手網を握り門を潜った。


陽の明かりがだんだんとラヴィエルを照らし、やがて光が降りてくると辺りも明るくなり、柵の前で止まる。


フィオルの誘導で二人は掌をピタッとラヴィエルに付けた。 

 

「宿りし魂よ…。」


フィオルが目を瞑りラヴィエルに語り掛ける。

 

 

「…待っていたぞ――。」



少しの間、ラヴィエルから白いシルエットの人影が出てくると二人の前に止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ