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第十七話 守備隊長

臨戦態勢だった両者だが、お互いの正体が分かるとホッとした様子で武器を降ろす。


フィオルの後ろに身を潜めていたアイベルもひょこっと顔を出し、デュールの存在を確認すると安堵の息を漏らした。


「やはりフィオルだったか。アイベルと…エヴァルも一緒だな。」


身長が高く天井に当たりそうなのか少し首を曲げて近づきながら声を掛けるデュール。


「どうしてこんな所に?」


守備隊長であるデュールがこの洞窟に居ることが信じられず問い掛ける。


「村周辺の巡回警備を終えて早めの昼食を取とろうと村に向かう最中にな…剣撃隊のアルドさんが焦った表情をしながら俺の元に来たんだ…。」


 

――オラディ村周辺の森


「北側問題無し…。さて早めに飯でも食うか。」


村民会議が終わり、守備隊のミーティングを終えオラディ村周辺の巡回警備をしていたデュール。


村に戻ろうと森を歩いていると、村の方から装備が激しく擦れる音と共に駆ける足音が聞こえ、一人の隊員の姿が見えた。


「ハァ…ハァ…デュール隊長っ!!」


その人物はデュールの目の前で急ブレーキを掛け、両手を膝に置いた。

 

額にビッシリと汗が溢れ、顔を赤くしたアルドであった。

 

「あなたは剣撃隊のアルドさん。どうかしたんですか?急いでいる様子ですが…。」


疲れて俯いていたアルドは顔を上げると強ばった表情をしていた。


「フィオルとアイベルちゃんが…!」


アルドは物見櫓から目視した翼を持った生物の情報と剣撃隊で行ったミーティングの話、そして二人が恐らくあの地に向かったであろう事を早口で告げる。


「なるほど…。それであれば多分、あの地に向かった事は間違いないですね…。ノワルヴェールに伝える時間は無いか…。分かりました!急いで向かってみます!」


木から延びるツルをブチッともぎ取り、装備を身体に密着する様に固く結ぶと、力強く地面を踏み締めた。


そして太ももの筋肉が隆起し走り出す姿勢になる。


「ありがとうございます!ではっ…!」


ドンッという轟音が鳴った瞬間に、目の前にいたデュールは消えた。


目にも止まらない速さでアルドを横切り、振り返るとその姿は背中が小さく見える程になっていた。


「相変わらずの速さだな…。デュール隊長が居ればまずは一安心だ。」


安心した表情に変わり、デュールが踏み込んだ地面が大きく抉れているのを横目にアルドは自分の任務の為、村に戻った。



「ペールデニーズの奥か…。翼を持った生物…。こんな日にまさかな。」


村の中央通りを勢いよく駆けるデュール。


デュールが駆けた道には砂埃が立ち、村人達は何事かと振り返るが砂埃の原因とされるデュールは既に目の前には居ない。


「コホッコホッ。多分デュール隊長だろう…。」


時より緊急時にデュールは中央通りをこの様に駆ける為、村人達はだいたいデュールが起こした砂埃だろうと分かっていた。


「おい、中央通り見てみろ。」「んっ。あれは…。」


物見櫓の隊員達がこちらに向かってくる砂埃の存在に気づく。


「デュールさんに伝わったみたいだな。」「ああ。」


「君達ー!」


「ん?おお!デュール隊長!」


物見櫓から砂埃が中央通りに現れてから数秒、物見櫓の

真下には既にデュールの姿があった。


「ブルク長老には情報を逐一伝える様に!それと、ノワルヴェールには伝わっているのだろうか?」


「分かりました!」


「いえ、それがノワルヴェール隊長の姿は村には無く、皆んなで探してるようでして…まだ伝わってないかと…。」


「何をやっているんだこんな時にっ…!」


デュールは自分の太ももを叩きながら怒りを露にした。


「分かった!私はペールデニーズに入る!何かあったら伝書鳥を飛ばしてくれ!」


「分かりました!他の隊員達はどうすればいいですか!?」


「ブルク長老に現在起こっている事を話し、長老に判断して貰ってくれ!ではよろしく頼む!」


「分かりま…」


ドンッ


隊員達の返事は轟音と共にかき消され、砂埃が舞い上がる。


「居なくなってる…。」

 

砂埃がだんだんと晴れるとそこには地面が大きく抉れ、既にデュールの姿は無かった。


 

――地下道


「それで僕達とは違う入口から入ってここまで来たという事ですか。」


「そうだな。」


「ペールデニーズは広い…。よく僕達が地下道に居ると分かりましたね。」


「俺はお前と違ってペールデニーズを熟知している訳じゃない…。それに…」


「「方向音痴…。」」


フィオルとアイベルがそっぽを向きながら呟く。


デュールはソウルガーディアンズの中でも一二を争う程の方向音痴なのだ。

 

「うるさいっ…!」


「入口を見つけたのもたまたまだったり…。」


アイベルが続けて呟く。


「馬鹿にするなっ!まあ、たまたまだがな…。」


横を向きボソッと言うと三人は大笑いをする。


大きな体格のデュールをおちょくる二人を見てエヴァルも笑うように鳴いていた。


 

「まぁ、奇跡的に入口が見つかって良かった。地下道に入れば壁に行先が書いてあるからな。」


「そうですね。とにかく合流出来て良かったです。デュール隊長が居るだけで安心できます。」


「ありがとうございます。」


フィオルとアイベルはデュールに一礼をした。


「だが…。」


デュールからは笑みが消え、真剣な表情に変わると続けた。


「安心は出来ない…。結局、物見櫓から見た生物の正体は分からないからな。」


その言葉にフィオルとアイベルの表情からは笑みは消え、沈黙すると天井から落ちる水滴の音が響いた。


「そう…ですよね。竜だったら確かに安心は出来ませんね…。」


「うむ…。なので一度村に戻るという…」


「今日じゃないと意味が無いんです…!」

 

フィオルの手をギュッと握り、俯きながらアイベルがデュールの言葉を遮った。


「アイベル…。」


俯くアイベルを見つめるフィオル。


握られた手には力が入り、すっと顔を上げると瞳は微かに潤んでいた。

 

「あの日からもう10年経ってしまいました…。あれから一度も私はあの場所には行けていません…。」


フィオルの手を握る力がさらに強まる。


「危険と分かりながら…死ぬと分かっていながら…幼かった私達を…命を懸けて逃がしてくれた…。あの方達が命を繋げてくれたから今の幸せがあります。あの場所に戻って…あの時の事を大人になった今、あの地で…あの人達を想って、心から感謝したい…。」


弱く途切れそうになりながらも芯のある声で今の気持ちを伝えたアイベル。


フィオルはデュールに顔を向ける。


「今日という日に伝えたい事が僕達にはあります。わがままですが…このままあの地に向いたいんです。」


デュールは二人の目を見て暫く黙り込む。


瞳の奥からは強い意志が感じられ村に戻る事は出来ないだろうと感じた。


(あの時…あの場に居たのはこの子達だけだ。あの時に感じた気持ちは二人にしか分からない…。もう二人はあの時の幼い子供ではない…。大きくなったな…。)


心の中でそう思うとフフッと笑うデュール。


「そうか…。気持ちは変わらないな。ならば、あの地に向おうか。」


その言葉を聞くとフィオルとアイベルは笑顔に変わる。


「「はい!」」


「だが!命が最優先。本当に命の危険があった場合は即、村に帰還する。」


太い声にフィオルとアイベルはゆっくり頷く。


「まあ、守備隊長である俺が居る。危険が降り掛かっても確実に守るがな。」


守備隊長である事に強い自信と誇りを持ち胸に手を当て言うデュール。


頼れる兄の様な存在のデュールに、フィオルとアイベルは微笑んだ。

 

「さて、話しはこの辺にして置いて、先に進もうか。あの地に向かう事は決定したからな。留まっていても着くことは出来ない。」


そういうとデュールは振り返り、来た方向へ歩みを進め左側にある道に行こうとする。


「デュールさんそっちはあなたが来た道ですよ?」


「そっち行ったらまた戻っちゃいますよ!」


デュールは二人の言葉にピタッと歩みを止める。


「ホントに方向音痴なんだから…。」


少し微笑みながらも呆れた様子のアイベル。

 

その言葉でプルプルと震えだしたデュール。


「うるさいっ!」


「久々にかっこいい言葉を掛けてくれたのに台無しですね。」


フィオルが笑いながら畳み掛けると溜息をつき、しょぼんと肩を落とし立ち尽くす。


大きな体格のデュールだが今は一回り小さく見えた。


そしてフィオルとアイベルは立ち尽くすデュールの方へと向かう。


「デュールさんは私達とエヴァルの間を歩いて下さいね。」


デュールを通り過ぎながらアイベルが言うと声も出さずに二人とエヴァルの間に入った。


エヴァルがツンツンとデュールを小突き、振り返るとデュールの手をペロペロと舐めた。


「お前は優しいなエヴァル。」


エヴァルを撫でているデュールを見てフィオルとアイベルは、顔を合わせ微笑み地下道を進んで行った。



――オラディ村


「どうじゃ?」


ブルクが物見櫓を見上げ隊員に声を掛ける。

 

「あれからは一度も姿を現しませんね…。常にペールデニーズ方面を中心に監視してますが、騒がしい様子もありません。」


「そうか…。うーん…竜種の出現であれば少しは騒がしくなるはずじゃがのう…。」


首を傾げブルクは杖を地面にトントンと突き考え込む。


「そのままペールデニーズ方面中心に監視するのじゃ。」


「「はい!」」


「デュールが合流出来れば一安心じゃが…。」


門の奥に広がる森を見つめブルクは呟く。


ソウルガーディアンズで動く際にはデュールの存在は欠かせないほど大きい。


そして、デュールの育て上げた守備隊の防御力は高く、隊全体を安定させる。


その守備隊の隊長を務めるデュールは彼が一人いるだけでその隊全体が安定すると言っても過言では無い。


動きは光のように速く、相手を翻弄する。


防御の要となる盾による攻撃やその死角から繰り出される剣技に相手は為す術なく倒れる。


「ブルク長老!!」


突然物見櫓から大きな声が上がる。


ピクッとその声に反応しブルクは物見櫓を見上げた。


「どうかしたかっ!?」


「先程の生物が現れた所から少し外れますが木々上空に粉?のような物が舞い上がってます!」


「粉?じゃと?」


「ん!?微かに青く光る羽の様な物がチラッと見えました!」


「青く光る羽…。」


その言葉にブルクの表情が少し強ばり、考え込む。


(まさか…。)


「また厄介なやつじゃのう…。」


ブルクの額がじんわりと汗に滲み、空を見上げた。

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