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MONDE ー光を鳴らす物語ー  作者: ぽちな
第二部 音の礫ー第一章 休息
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53.プライベート

はるかがムッとして頬を膨らませたところで、哲央てつおが口を開いた。


「リューノくんの加入が決まったし、親睦も兼ねて皆で飯でもどう?」


「わあ! いいね~!」


陣がすぐに頷いた。


「せっかくで悪いけど、俺はパス」


ギターを片付けながら、リューノは哲央の方を見るわけでもなく答えた。


「えー!」


残念そうな声を陣が出すとリューノは続けた。


「彼女がスタジオの入り口で待ってるんだ」


全員の視線がリューノに集まった。


「かの!」


遥は言いかけて、その先を喉の奥に飲み込んだ。


(そりゃーいるよねー)


「そうか。なら仕方ないな」


ささくれ立ったドラムスティックをケースにしまいながら、哲央は言った。



みんなでスタジオの外に出た。


龍之介りゅうのすけ~」


一人の女性が手を軽く振りながら近づいて来た。腰まである長い髪が揺れる。

ミニスカートのスーツ姿ですらりと伸びた足にヒールのついたパンプスを履いている。

近くまで来ると、ふわりとした笑顔でリューノに微笑んだ。


真理まり


リューノも心なしか、真理と呼んだ女性に対して優しい目を向けているように見えた。


「バンド、どうなった?」


「入れてもらうことにした」


リューノは、そばにいた遥たちをチラッと見た。

真理と目が合った遥は、思わず深くお辞儀をした。


「あれ? MONDE(モンド)って女の子いるの?」


リューノを覗き込むように真理は顔を近づけた。


(なんか……可愛い)


「ああ」


「ふーん、そうなんだぁ」


真理は、軽くリューノに触れてから、遥たちの方にやって来た。


「はじめまして。私、龍之介じゃなくてリューノの彼女の真理っていいます」


笑顔で軽く会釈をした。

揺れた髪から、ふわっと甘い匂いが香る。


(いい匂い)


「よろしく」


NO(ノウ)が一歩前に出た。


「リューノがお世話になります」


真理はNOに向かって、もう一度、頭を下げた。


(お、お母さんみたい……)


「こっちこそ、入ってもらえて良かった。いい刺激になりそうだ」


「真理、そろそろ行くぞ」


「はぁーい」


リューノは、こちらに軽く手を振ると真理と二人で夜の街に消えていった。


「なんかー、可愛い人だったな」


二人が消えた方を眺めながら、遥は感想を漏らした。


「彼女、いろいろと慣れてる感じだったな」


遥の独り言に反応するようにNOが言った。


「とってもお似合いだったね」


「うーん、でも紫門ちゃんが優勝でしょ」


じんが口を挟む。


「それぞれの好きな人が優勝でいいだろう」


ぼそりと哲央が言った。


「まー、そうだな」


NOが白い歯を見せて笑った。そして、続けた。


「リューノ帰ったし、みんなで飯は今度でいいよな」


「ああ、そうだな」


哲央が頷くとNOも夜の街へ消えていった。


「ねえ、僕たちはご飯食べようよ」


笑顔を浮かべた陣が遥と哲央の真ん中に入り、二人の腕に抱きついた。


「行くー!」


遥は抱きつかれていない方の腕を上げた。


「じゃあ、行くか」


「ファミレスに行こうー!」


陣は先頭を切って歩き出した。


「新メンバー決まって良かったな」


「うん。これで少し前に進めるね」


遥は哲央に笑ってみせた。

哲央も笑顔で頷いた。


ファミレスに着いて哲央が、順番待ちの紙に名前を書いた。


「すぐ入れそうだね。陣くん」


遥が隣の陣に話しかけると、ちょうど携帯電話を見ていた陣はとても嬉しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「あのね! 紫門ちゃんが今から会おうって! だから僕行ってくるよ!」


「えっ!」


「ご飯は二人で食べてね。ねっ、てっつん」


なぜか陣は哲央にウインクすると、急いで帰っていった。


「陣くん元気だねー」


「そ、そうだな」


しばらくして、二人は席に案内された。


「遥、何にする? 先に選びな」


哲央はメニューを開くと、遥の方へ向けた。


「てっつん、ありがとう」


「俺はとりあえずビール飲もうかな」

「でもなー……うーん……」


哲央は一人でぶつぶつ言っている。

遥はその様子をぽかんと眺めた。


「てっつん、どうした?」


「えっ! あっ! 俺やばい?」


大きく遥は頷いた。


「てっつん、いつも悩んでるの見ないから珍しい」


「はは、新しいメンバー入ったから緊張してんのかな」


頭を掻きながら哲央は目を泳がせた。


「え! 今ここにいないのに!?」


遥は目を見開いた。


「正直、男の俺から見てもかっこいいからさ」


「確かにかっこいいかもね。ドルチェのライブでも、ファンたくさんいたよ」


哲央は、少し前のめりになった。


「は、遥もああいうのがタイプか?」


「えー、わかんないよ。私、今、音楽に夢中だもん」


「あ、そうだよな。ピアノも始めたもんな」


哲央は納得したように頷いた。


「どうだ。少しピアノに慣れたか?」


「まだまだだよ。でもね、少しだけユキくんの音が見えた気がする」


遥はユキの音を想像して、ほほ笑んだ。

テーブルの上で、少しピアノを弾くマネをしてみせた。


「いいな。いつか遥の作った曲、叩きたいな」


テーブルに肩肘をつきながら、哲央は遥の指先を見つめた。


「うん。頑張るよ!」



二人はやっと料理の注文をした。



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