表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MONDE ー光を鳴らす物語ー  作者: ぽちな
第一部 始まりの光ー第五章 世界
40/45

37.その先の景色

◆その先の景色◆


ライブ翌日。

目覚ましの音で遥は目を覚ました。

すぐには起き上がれなかった。体中が痛む。

磁石みたいに布団に吸い付けられているのを、なんとか引きはがしながら布団から転がり出た。


冷たい水で顔を洗う。


(仕事に行くのきつい。でも、昨日は本当に楽しかった!)


洗面台に流れる水が、疲れを少し持っていってくれた。心は晴れやかだ。


朝食を食べ、支度をする。


揺れる電車の中で、携帯電話でメールを打った。


――ユキくん


昨日はお疲れ様。

昨日のライブ、今まで一番楽しかった!

ユキくんも楽しそうだったね。

私、もっとギター弾けるようになりたい。

いつか作曲もやってみたいんだ。

また夜にね。


遥より


ぽちっとボタンを押して送信した。


電車の少し開いた窓から風が入り込む。

遥の髪を揺らした。


(風が気持ちいい)


次はみこのメールに返事を書いた。


――遥!


ライブ楽しかったよー。

タオル回すのいい(^O^)/

モンドのオリジナルタオル作って(≧▽≦)


みこより☆彡



(オリジナルグッズ! 確かにタオルいいな)



――みこへ


おはよう!

昨日は、またライブに来てくれてありがとう!

私もライブ、とっても楽しかった。

幕が開いてみこがいると、とても心強いよ!

タオル、いつか作りたいなー


遥より


職場に着いて、仕事を始める。

疲れているのに、パソコンを打つ手が軽かった。


昼休みに携帯電話を確認するとユキからメールが来ていた。



――


楽しかった。

音楽って無限だよな。

昨日、またたくさん刺激もらえた。

遥も作曲やってみるといいよ


国東くにさきさん、にんまり笑ってなにか良いことありました?」


向かいの席で昼食を食べていた同僚に話しかけられた。


「えっ! はは……」


遥はとりあえず笑うと、おにぎりをぱくついた。


(恥ずかしい……)




あっという間に夜のスタジオの時間になった。


「改めて、昨日はお疲れ様! まずは1つの目標に達したな」


全員が揃ったところで、哲央が口を開いた。


「ああ、Glass Crow(グラスクロウ)との対バン。彼らに引けをとらないライブをする。俺はいけたと思う」


ユキは確信めいた強い眼差しでみんなを見渡した。


「そうだな。俺もそう思うよ」


NOの返事に陣と遥も頷いた。



「そして、次の目標はワンマンライブだ」


哲央の言葉で、スタジオの空気が変わった。


「ワンマン……」


心の中で言ったつもりが、言葉は口からこぼれていた。

遥の鼓動が、一度大きく脈打った。


「僕、やりたい!」


陣がぱっと顔を明るくした。


「ワンマンに向けて、曲数を増やさないとな」


NOが腕組みをしながら言った。


「ああ、大丈夫。今、俺の頭の中、新しい音で溢れてる」


ユキは楽しくて仕方がないという顔をした。


「すごい! ユキくんの新しい音、聴きたい!」


遥は目を輝かせながら言った。

ユキはギターを肩にかけた。


「少しだけ」


そう言って、アンプの前に立つ。

スイッチを入れ、軽く弦を鳴らす。


透明な一音が落ちた。


いつものフレーズじゃない。

遥は顔を上げた。


NOは、さっそく紙とペンを出して言葉を書き始めている。


ユキのギターから光の筋みたいな旋律が流れ、スタジオの空気に溶ける。


「……今の、なに?」


遥が聞くと、ユキは視線を落として少し笑った。


「まだ途中」


それだけ言って、今度は誤魔化すみたいに別のコードを鳴らした。


「うわー、気になる!」


陣が身を乗り出す。


「完成したら、聴かせるよ」


ユキの言葉に、遥は小さく頷いた。


(楽しみ!)


その輪郭はまだ曖昧なのに、なぜか耳の奥に残っていた。



練習が終わってスタジオの外に出ると、秋風が火照った体を通り抜けていった。


「寒い……」


遥は、ギターケースを握りしめ小さく震えた。


「じゃあ、またな」


哲央が言った。

NOも手を振ると夜の街へ消えていった。


ユキ、陣、遥は並んで駅まで歩く。


「ワンマンライブかー。ちょっと夢みたいだけど、見えてきたね」


陣は嬉しそうに笑った。


「その時に、MONDEのオリジナルタオルを出せたらいいな」


みこからのメールを思い出して、遥は言った。


「いいね! Splashスプラッシュの時に、みんなが同じタオルを回してくれたら嬉しい!」


陣はタオルを回す真似をしてみせた。


「そうだね。俺はMONDEのCDも出したい」


「CD!」


遥も陣も目を輝かせた。


「たくさんの人に聴いてほしいな。俺たちの曲」


「聴いてほしい!」


遥は胸がいっぱいになった。

自分たちのCDを出すなんて、少し前まで夢みたいな話だった。

でも今は、手を伸ばせば届くかもしれない。


「遥の曲、俺、楽しみにしてる」


不意にユキが言った。

驚いて、遥はユキの方を向いた。


「うん。私、作るよ」


遥は、じっとユキを見つめ頷いた。


駅に着いた。

陣が笑顔で手を振り改札に入っていった。


「またねー、はるちゃん。ユキ」


「またね。陣くん」


遥も陣に手を振る。

そして、ユキにも手を振った。


「スタジオでの曲、早く聴きたいな。またね。ユキくん」


「ああ、わかったよ。またな」


ユキは、少し笑いながら遥に手を振った。


遥は、少しだけユキの背中を見送ってから、自分のホームへの階段を上がっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ