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MONDE ー光を鳴らす物語ー  作者: ぽちな
第一部 始まりの光ー第四章 Luna Dive
23/45

21.Luna Diveの夜2 出会い

◆Luna Diveの夜2 出会い◆


ダッダッダ!

スネアの音がフロアを叩いた瞬間、空気が変わった。


FROST RAINフロストレインのリハーサルがスタートした。

ステージもフロアも一気に活気づく。


ドラム、ベース、ギター、ボーカルと、メンバー全員が短い時間で手際よく、サウンドチェックを行っていく。

その様子を、遥たちLUMINOUSルミナスCANVASLAYキャンバスレイは、フロアから見学させてもらった。

全員が少しでも先輩たちから学ぼうと真剣な眼差しでステージを見つめる。


Glass Crowは、自分たちのリハーサルの準備を始めていた。


(先輩たち、ちゃんと一音で違いがわかってる。さすがだ!)


遥は、持ってきていたメモ帳に素早くメモを取った。


(ベースの時は……、なるほど! 言葉で聞いていたことが、音になるとわかる)



フロストレインが終わるとGlass CrowグラスクロウCANVASLAYキャンバスレイとリハーサルが進み、ついにLUMINOUSの番になった。


遥はついにステージに立った。まだお客さんはいないし、照明も落ちたまま。それでもフロアから見上げていた場所だ。

本当はゆっくりとこの場所を味わいたかったが、リハーサルはすぐさま始まった。


立ち位置と順番に音を合わせ、短く曲を演奏して中音のチェック。

遥は、指示されるがままに音を出して、自分ではいいのかわからないままリハーサルは終了した。


(ふー、リハーサル緊張した……)


一旦楽器を片付けて、楽屋の隅で一息ついた。もうすぐ本番がついに始まる。ゴクッとペットボトルの水を飲んで、緊張でカラカラになっていた喉を潤す。だけど、緊張は消えない。


ペットボトルの蓋を閉めて顔を上げると、目の前に笑顔の茶髪の男の子が遥の顔を覗き込んできた。その後ろには、紫髪の人が立っていた。


「リハーサルお疲れ様!」


弾ける笑顔なのに羽が舞うようなふんわりとした表情は、なぜだか警戒心を抱かせない。


「リハ見たよ。ベースなんだね! 僕もベースなんだ」


「あ、うん。私ベースなの。えっと……」


「うふふ、名乗ってなかったや。僕、キャンバスレイの天野陣あまのじん


陣は、後ろを振り返って紫髪の人を自分の横に引っ張った。


「こっちは紫門しもんちゃん」


陣は目を細めて笑った。紫門は優しい表情で陣を見つめ、遥にもその表情のままあいさつした。


「ギターの紫門です。よろしくね。さっき目があったよね」


「はい。あまりに綺麗で見つめちゃって……。私、ルミナスの国東遥くにさきはるかです! よろしくお願いします!」


「うん、紫門ちゃん綺麗だもんね!」


陣はまるで自分のことのように嬉しそうに紫門を見て微笑む。

紫門は紫の髪を指先にいじりながら、はにかんだ。


「はるちゃん! お互い初ライブ、楽しもうね!」


陣はまた目を細めて笑い、両手でピースを作ってみせた。


(は、はるちゃん――?)


「うん、私も楽しみたい」


遥も陣と紫門に笑顔でピースを向けた。


(あれ? 私、笑って、る?)


いきなりはるちゃんと呼ばれたのも嫌な気はしなかった。


「ありがとう、陣くん、紫門ちゃん」


「また後で話そうね」


陣と紫門は、笑顔で手を振ると自分たちの仲間の元へ戻っていった。


遥もユキたちと合流し、衣装に着替えた。


いよいよイベントLuna Diveルナダイブが始まる。

LUMINOUSは、月に飛び込む。

――遥は、そう信じている。



◆Luna Diveの夜3 写真◆


震える指先で、遥は唇に黒いリップを伸ばした。


楽屋の鏡の中に、LUMINOUSルミナスの遥が映る。


(あと少しで、始まる)


ステージから響くMIDNIGHTミッドナイト PARADEパレードのリハーサル音が、楽屋の壁をわずかに揺らして、遥の鳴りやまない鼓動を隠してくれた。


(私、ここにいて、大丈夫だよね……)


見上げた鏡越しに、ギターをいじるユキが見えた。いつもより指の動きが、どこか落ち着かない。

ピックを何度も持ち替えている。


「ちょっと、俺、緊張して、きた……」


晃はメイクが終わってから、ひたすら腰に付いたチェーンをいじっている。

チェーンを指に巻き付けた。金属同士がチャリッと、小さく鳴る。


「……晃、音」


動かないまま、哲央が低く言った。


「あ、わりい」


晃は笑って手を離したが、すぐにまた、無意識に指が動き出す。


遥は視線を落とした。

金属の冷たさが、なぜか自分の指先にも伝わってくる気がした。


「まあ、気持ちはわかるけど」


瞬は長い黒髪を整え終わると、鞄からカメラを取り出した。


「記念に一枚撮らない? ライブ前の方がメイク崩れてないし」


「あ、みんなで撮りたい!」


遥は、珍しく積極的に声を出した。

その声につられてLUMINOUSが楽屋の隅に集まった。


「僕が撮りますよ~!」


反対側で準備をしていた陣が、ふわりと割り込んできた。


「あ、CANVASLAYの。ありがとうございます」


瞬はカメラを陣に渡した。


「お互い様だよ」


(陣くん、すごい。すっと入ってくる)


陣はカメラを受け取ると、興味深げに瞬の衣装を見つめた。


「わぁ! 安全ピンの十字架、おしゃれ!」


「ありがとう」


瞬は嬉しそうにネクタイに付いた安全ピンの十字架を触った。


「これ、頑張って作ったんだ」


「わかる! あ、写真撮るね!」


陣はカメラを構える。


晃と遥を前に、その後ろにユキ、哲央、瞬が並んだ。


「撮るよー!」


――カシャッ。


フラッシュが白く弾けて、五人の影が壁に焼きついた。

遥は憧れの場所に、もう少しで立てることに胸が高鳴った。

――それでも指先は、まだ冷たい。



MIDNIGHT PARADEのリハーサルが終わり、ライブは開場した。

フロアからファンの声が聞こえてくる。


派手な衣装と明るいメイクで決めたMIDNIGHT PARADEが円陣を組んだ。



「おっし! Luna Diveルナダイブのイベント、トッパー」


メンバー同士、肩を組む。


「俺たちの力、見せつけてやろうぜ!」


「いくぞー!」


ボーカルの掛け声に合わせて、全員が叫ぶ。


「おーー!!」


MIDNIGHT PARADEはステージに消えていった。


遥たちは、舞台袖からステージを覗いた。

照明が落ち、フロアの声が床を震わせる。

足元に伝わる振動。


(……始まる!) 



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