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MONDE ー光を鳴らす物語ー  作者: ぽちな
第一部 始まりの光ー第四章 Luna Dive
22/45

20.Luna Diveの夜1 楽屋入り

Luna Dive(ルナダイブ)の夜1 楽屋入り◆


ライブ当日。


十三時に池袋駅で集合し、MOON BOX(ムーンボックス)へ向かった。


九月半ば。

街を行き交う人々はまだ半袖が多く、線路沿いの木々から、名残のセミの声が響いてくる。


「俺、機材車で行きたかった」


ムンボまでの短い道のりで、晃が誰にともなく呟いた。


「そんな金ないって。欲しいなら、晃がスポンサーになってよ」


瞬は少し汗ばんだ顔で振り返る。

ギターケースに機材、衣装の入った大きなカバン。

一番、荷物が多い。


「それにしても、チケットのノルマやばいよな。俺ら、全然売れてない」


哲央が眉間に皺を寄せる。


「最初だし、こんなもんだよ」


瞬は真剣な声で続けた。


「俺は、ユキを……みんなを信じてる」


今まで見せたことのない眼差しだった。


遥は、思わず息を呑む。


隣でユキが、その視線を受け止めるように口を開いた。


「俺も信じてる。俺たちの音が、ちゃんと届くといいな」


(……瞬くんも、ユキくんも)


胸の奥が、熱を帯びる。


(信じてくれてる。私、頑張ろう)


ベースケースを握る手に、自然と力が入った。


 MOON BOXに着くと、入口では今日の出演者と思われる数人が、搬入作業をしていた。


(……あ!)


見覚えのある顔。


FROSTフロスト RAINレイン


DOL(ドール)L THEATERシアターとの対バンで、フロアから見ていたバンド。

それなりに、名前も知られている。


瞬が、すっと前に出る。


「おはようございます。LUMINOUSです。よろしくお願いします」


「おはようございます。FROSTフロスト RAINレインです。よろしくね」


深々と頭を下げる瞬に、相手は軽く手を振った。


遥たちも、それに倣って頭を下げる。


(……フロアから見ていた人たちが、ここにいる)


不思議な感覚だった。


ヴィジュアル系バンドのファンとしての自分と、

LUMINOUSの一員としての自分が、頭の中で入り混じる。


遥は、意識してFROSTフロスト RAINレインのメンバーから視線を外した。


続いて、みんなで地下への階段を降りる。


何度も通ったはずの階段。

けれど昼間の光が差し込んでいて、足元が少しふわりとする。

まるで、別の世界に迷い込んだみたいだった。


フロアには、すでに出演者たちが各々準備をしている。

幕は開いたまま。


遥は、まだ何も置かれていないステージを見つめた。


(……今日、あそこに立つんだ)


出演バンドが揃い、ムンボのスタッフから今日の流れの説明があった。

そのまま、顔合わせを兼ねた簡単な挨拶が始まる。


ユキと哲央の後ろから、遥はそっと顔を出した。


帽子を被った、朗らかな笑顔の男性が一歩前に出る。

それだけで、自然と場の空気がまとまった。


「俺たち、MIDNIGHTミッドナイト PARADEパレード。今日は新人さんが多いって聞いたよ」


にこやかに続ける。


「トッパーで会場を温めるから、よろしくね」


男性がお辞儀をすると、他のメンバーも揃って頭を下げた。

その一人が、FROSTフロスト RAINレインに合図を送る。


それを受けて、FROSTフロスト RAINレインのボーカル・蒼馬そうまが口を開いた。


「よろしくお願いします。FROSTフロスト RAINレインです。今日はトリを務めさせていただきます」


蒼馬は、新人バンドたちを見渡し、少し困ったように視線を泳がせた。

そして、帽子の男性へ、助けを求めるように視線を送る。

男性はそれを汲み取り、ひとつ頷くと、パンと手を叩いた。


「じゃあ、出演順に挨拶していこうか!」


右手をマイクに見立てる仕草で、場を回す。


「はい、どうぞ!」


「LUMINOUSです。今日が初めてのライブです。このイベントと同じ名前の曲から始めます。よろしくお願いします」


ユキは、少しだけ声をうわずらせながら言い、丁寧に頭を下げた。

遥たちも続く。


(……ユキくん、緊張してる)


いつもより、少し硬い。


「同じ名前の曲! それは楽しみだね。じゃあ、次は三番手!」


柔らかな雰囲気の四人が前に出る。


その中の一人――淡い紫色の髪の人物に、遥の視線が吸い寄せられた。


(……綺麗)


(女の人……?)


「俺たちも今日が初ライブです。CANVASLAYキャンバスレイっていいます。よろしくお願いします」


四人が揃って頭を下げる。


紫髪の人物が顔を上げた瞬間、遥と目が合った。

その人は、微笑みながら、軽く会釈を返してくる。


「ほわっとしてるね。じゃあ、最後!」


赤い髪の、気の強そうな男性が一歩前に出た。


「よろしくお願いします。Glassグラス Crowクロウです」


余計な言葉はなく、最後に全員で一礼。


「もう貫禄あるね!」


帽子の男性が笑う。


「リハは逆リハ。FROSTフロスト RAINレインからで、最後が俺たち。今日は一日、よろしく!」


「おっす!」


まだ誰もいないフロアに、全員の声が響いた。


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