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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第6章 草原と森の入り口
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6-06 野外訓練の内容

おまたせしました。

 かたことと馬車が揺れる。


 そう。今も馬車の中。


 揺れてはいるけど、この馬車の中は、それなりに快適。


 目の前に見える、幼子おさなごのように小さくて可愛い、栗鼠りす耳アルマジロ。


 魔哺乳類(マギア・マンマーリア)魔アルマジロ科マギア・ダシュポディダエのエンタ先輩。彼のはしゃぎようは、それはもう大変。この野外訓練がどんなに素晴らしくて楽しいかを、熱い思いを込めた口上こうじょうで力説をしていた。


 エンタ先輩とイエン先輩は、こういった野外訓練に何回か参加をしている。


 そして、その明るく元気の良い声色こわいろの自動意訳がされたエンタ先輩の声が響く。


 うん。そう。ルークの自動意訳は、今も継続をしている。


 とはいえ、ルーク自身の意識表層を覗いても真っ白のまま。それでも、だから、この身体の中にルークがいると思う。ん。いや、ここにいるんだと信じていたい。


『……それでだな。ガサガサと音がするなと思って素早く後ろを振り向いたのだ。そしたら、こんなにでかい草魔飛くさまとびが、草原の外れの方にある草丈の高いくさむらから、ぬっとでて来た。そしてそいつはビョンと跳ねあがって、俺に襲ってきやがった。だから、俺は逆にそいつにひらりと飛び乗って、この俺の爪切断ネイルカッターでだな、こう、シャリンと真っ二つにしてやった訳だ』


 エンタ先輩はとても興奮をした様子で、前回経験した話を語っている。そして、その栗鼠のような可愛い耳と鼻の先が、火照って赤く染まっていた。


『どうだ、凄いだろ? 同じようなものが出てきたら、お前に見せてやる』


 そして彼はエッヘンと甲羅のある背中を無理やりり返えらせ、どや顔をする。後ろを見ると、彼の栗鼠のようなふさふさの尻尾がゆらゆらと揺れていた。


 倒した草魔飛は丁寧に下処理をして、エンタ先輩が熱の中でとろけたようになって語る“最も麗しき淑女”にプレゼントをしたそうな。


 でもこちらは、その後の展開を知らないし、噂にも聞いていない。


 そんな感じで、こちらの正面に座るエンタ先輩の武勇伝が、延々と続いていた。


 彼の話に脚色はあるだろうけど、爪切断ネイルカッターの威力は本物だ。


 以前、施設内の食堂で見た森林魔胡桃しんりんまくるみの殻が、鏡のように綺麗な断面になったのを思い出している。そしてエンタ先輩は、雌性のリザドリアン属に、大変好意を持っていることも。


 エンタ先輩の横に座っている相方の魔爬虫類(マギア・レプティリア)のリザドリスク科リザドリアン属亀種(テストゥードーティ)……うーん。とにかく、そのひょろ長カッパのイエン先輩は、そのひょろ長い身体を、ぐてりと折り曲げて頭を下にしてふらついている。


 普段の彼の、その鱗がある皮膚の色も青白い。だけど、今のその青白さは病的に見える。なんか気分が悪そう。車酔いかな。あれ。この場合は馬車酔いだったか。


 そして、同じリザドリアン属である、羽毛種(ペンナティ)のパラ先輩とオルト先輩。姉弟で寄り添って震えている。この震えは馬車の揺れではない。


 彼女と彼の横に座って守っている魔哺乳類(マギア・マンマーリア)森林魔猫科マギ・フェリス・シルヴェトリスのフェリスリアン属種の大型猫科に似た頭が怖いとのこと。無理もない。野生だったら捕食をされかねない天敵だからね。


 対するフェリスリアンたちは、少し困ったような、微妙な顔をしてる。


 今回の野外訓練を指導してくれる人間の施設の女性職員ジュライさん。ふわりとした短めの赤毛に、バンダナのような布を額に巻いている。エンタ先輩の喧噪とも取れるおしゃべりもおかまいなしに、ごく普通な顔をして皆を眺めている。


 彼女はカークと同じく魔動物召喚魔術師。そしてとても精悍せいかんな顔つきをしてる。彼女のその顔つきと相同そうどうするかのように、彼女が召喚した魔動物のほとんどが、このフェリスリアン属種の猫科頭たちなんだそうだ。


 あ。え。カークが爬虫類顔かって? どうだろ。こちらは、違うと思うけど。


 そして、こちらは通称ラケルタ。


 擬態魔動物のリザイア目リザドリスク科ミネティティ属の変種ということになっている。実際は、色々と違うんだけどね。


 あ。草原が見えて来た。


 前にも見たはずなのだけど、改めて見て、この草原は広い。


 向こうに見えてきている、あの広々とした草原で、野外訓練をするとのこと。


 そしてその草原の端に森がある。今回の訓練はこの森の中にも少し入るとか。


 この森の奥は、大型の肉食魔獣がいたり、それなりの大きさの魔動物を狙う肉食魔植物が生えていて、とても危険なんだそうだ。


 それでも、森の入り口付近だったら大した危険はないという。


 そして、そこには食用となる小型から中型の野生魔動物が多く住んでいる。食用の魔動物を狩るのも野外訓練の一環としてあるそうな。エンタ先輩は、その狩りが楽しみでたまらないらしい。


 そう。この馬車の車両は、かなりでかくて広い。乗ってる数も数だけど、これの帰りは野外訓練の成果として、たんまりと食材を持って帰るつもりだからね。


 それで、このばかでかい魔獣馬まじゅうばも、流石に二頭立てになっている。


 この魔獣馬が食む、豆の葉に似た魔馬草ままくさもこの草原には、たくさん生えている。これらも可能な限り、刈り取って詰め込むんだそうだ。


 でも、これは必須じゃないんだって。


 これこそニサンの町の近辺でも生えている、よく見かける草だから。


 うん? あ。そうなの。


 もうすぐ、こちらの班の目的地に着くとのこと。


 うん。ほんと清々しいほど広い草原だね。


ここに読みに来てくれてありがとうございます。

とても嬉しいです。

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