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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第5章 初めての町の外
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5-19 帰りの馬車

 外の方で何か気配がした。耳をすますと、馬のいななきが聞こえる。


 それで窓の外を見ると荷馬車が数台来ていた。例のでかい6本肢の異馬。それも複数頭。このでかい異馬は、ここでは、どうやら特殊な生き物ではないらしい。


 屈強な人間たちと、イヌ系の頭をしたルプスシエアンたちが、それらの荷台に、いくつもの大きな木の箱をせっせと詰め込んでいる。そして荷物が詰め終わると、馬に荷馬車用の馬装を整えて慌ただしく出発していった。


 あれ。何か既視感があるよ。あ。うん。昼のだね。


 車のバスを小型にしたような車体の乗合馬車が、複数台到着したのは、それからしばらくしてからだった。


 その馬も同じような馬。ここでは、6本肢のでかい異馬が標準のようだ。


 馬車乗り場に降りる。クリスティーノは用事があるので少し後で来るとのこと。下に降りると魔鉱石採掘場現場で知り合った監督員のデトル、タラトル、メトルのトル3兄弟がいた。そして魔鉱石投げの試合会場で出会った女性の監督員のサマラさんとマーリンさんもいた。


 こちらを最初に見つけたデトルが、ごつい手を挙げて挨拶をしてくれた。


「よう。また会ったな。従魔候補の坊主」


 彼は、カカカとほがらかに笑う。


 デトルは小さいカークと言っていいくらい、雰囲気がカークと似ている。とてもリラックスできるタイプだ。


「まあ。ラケルタちゃん。帰るのが一緒なのね」


 そう言うのは、胸が大きくて甘い声のマーリンさん。母性溢れる慈愛の籠もった目をした女性。こちらをサマラさんから実際に庇い立ってくれた。多少ずれているところもあるようだけど。


「いやー。無理だねー。それじゃあ座るところ狭くなりすぎるよ。マーリン」


「あら。メトルは、マーリンを独り占めしたいだけではなくて?」


「それはないよ、サマラちゃん。君もとっても魅力的だよ」


 今のメトルは酔っぱらっているようだ。怖めのお姉さんである、サマラさんの肩によりかかって、ちゃん付けまでをしている。そのサマラさんは笑っているけど、目が怖い。これは後が恐ろしい。御愁傷様です。メトルさん。


「メトル。いい加減にしろよ。客人であるカークさんが見ている」


「そう言うタラトルだって、夢だろ? 女性と交互に座りたいよ」


 メトルのはとてもささやかな夢だね。だけど、これは声にしたら場合によっては良くないことも起こると思うよ。


 そうこうとして。


 何でこんな過酷な仕事に就いているのかというのを会話の中で聞いた。どうやらここの給料が単純に標準よりもかなり良いからということらしい。


 監視員たちのほとんどは、もともと魔術師志願者だったそうな。だけど、素質がないのか魔法が扱えないとのこと。それでも魔術師を志願をしていただけあって、普通の人間よりはここの高い空間魔素濃度に耐性があるそうだ。


 そういった、ぶっちゃけた話をこちらの近くでしている。クリスティーノはまだ来ていない。カークとミルマノも少し離れたところにいる。それでこの近くには、彼ら監督員たち5人とこちらしかいない。


 そして、こちらは従魔候補。ミルマノやルプスシエアンたちと同じ、従魔となる魔動物。だから、そういったことに無関心だと思われているようだ。


 この時、彼らから石を貰った。試合の時の石だよ。今回はなかったけど、勝者が敗者の石を取得するルールもあるとのこと。


 マーリンさんとは直接対戦をしていなかったけど、水玉とか呼んでいる、小さなわっかのような綺麗な模様がはいった青色の石を記念にとくれた。


 彼らと別れてすぐに、クリスティーノが来た。カークと話していたけど、すぐに別れる。クリスティーノには場長専用の馬車があるそうな。その専用の馬車に乗るようにと彼は誘ってくれた。だけど、カークは別途の馬車を予約している。


 あ。彼が来た。


「お待ちどうさんっすね。旦那。あっしらの馬車はあちらになりますっす」


『坊主。また、会った。嬉しい』


 御者のピケルだ。とてもにこやかに笑っている。傷だらけの露出部の肌と、額にある向こう傷が勇ましく見えるので妙な感じ。彼の性格を知らなかったら、何か妙な罠にでもかけにきたのかと思うだろう。


 そして、行きの荷馬車と同じくコヨーテ頭のメセータもいる。彼は相変わらず、リザイア簡易語で話しかけて来た。こちらは、ルークの自動意訳があるから、素の言葉で大丈夫なんだけど。


 馬車に乗るために、外に出る。


 ピケルが示したのは、ちょっと小さめの車体の馬車。これは4人乗り用らしい。その馬車は、夕陽を背にしていた。赤い夕陽の色が黒々とした森に広がる。とても壮大で、美しい景色。ぼうとその夕陽をしばらく眺めていた。


 すると、カークがこちらの横に立つ。そして指差しあの森の先にに最新魔道具が開発されているナーガラ帝国の首都リーンがあると言った。


 今はドイ国外に出るための外出申請をしているとのこと。苦虫を噛み潰したような顔で言っていたから、ここでも、そういうのは大変なようだ。


 馬車の車体は小さくとも、馬はやはりどでかい6本肢の異馬。少しアンバランスのように思えた。どうやら4本肢の馬もいることにはいるらしい。だけどこの馬はピケルが持っている馬だとのこと。


 それに、この辺は治安が良いとはいえ町の外。盗賊とかがでることもあるそうな。この6本肢の馬なら怖いものなしとのこと。


 見ればクリスティーノの場長専用馬車の馬も6本肢だ。あちらのは車体がかなり頑丈な造りで重そうだから、6本肢の馬じゃないとへばりそう。


 この魔鉱石採掘場は、町からそう遠いところではない。だけど、着く頃には暗くなっているだろう。


 この車体の乗り心地はそういいものではない。だけど行きの荷馬車から思えば、段違いに楽だ。これには固めだけどソファーのような椅子があるからね。


 何事もなく町の門まで着く。空はすでに星の綺麗な夜となっていた。


 門番は交代していたようで、出る時のキーエンさんではなかった。


 とはいえ、こちら側は町にでる時にしっかりと証明をしている。町に入る門での審査もかなり簡単で、例の水晶玉のようなものに手をかざすだけだった。



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