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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第5章 初めての町の外
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5-17 勝負の行方

「おー。始まりますねぇ。最初はデトルだね」


 こちらの横にいるのはメトル。つんと澄ましているマサラさんも一緒。マーリンさんとタラトルは次とのことで、使用する石の状態などの確認をしたりしている。


 勿論ここにカークとミルマノも一緒にいる。だけど、クリスティーノは違うところにいた。何やら司会とかがいるような造りになっている場所だ。そして数名の監督員たちと、打ち合わせをしているようだ。


 そう。最初の組。大きな円形の輪の外の指定された位置に、こちらに魔独楽石の投げ方を教えてくれたデトルがいる。デトルは自ら言うように単色の魔独楽石を手に持っている。単色の灰色だ。


 あれ。黒系統は貴重品じゃなかったのかな。黒系統って昼の採取の時には見つからなかったけど。


<あー。うん。聞こえるね。準備は、いいかい>


 拡声魔道具から発されたクリスティーノの声。がやがやと騒然としていた会場が一転して静まり返る。


 へえ。クリスティーノは、物腰が柔らかいけど、統制がとれるんだね。それに、この低い声は美声だよ。


<では、用意。始め>


 その声を合図に、位置についていた最初の組の4名は一斉に石をブンと投げる。投げ出された4つの石は、円筒の中に入り一定の場所に留まって空中を回転していた。そして、その石たちは、次第にその回転の勢いを増していく。


 やがて4つともお互いが引き寄せ合うように中央に集まり、カキンゴキンと激しくぶつかり合いをし始めた。


 んー。さっきの練習の時も激しいと思ったけど、その凄さが全然違うよ。


 周囲に集まっている者たちが、ワーワーと騒いでいる。この試合に参加をしない人間たちも興味があるようで、皆熱い視線を向けて観戦をしている。


 あ。ぶつかった後に変な回転の仕方をしている石がある。その石がパカリと2つになって地面に転がった。それは縞入りの石。縞の線に沿って割れていた。


 もう一つは、ぶつかり合いで弾かれて円筒の外に出てしまった。場外だという。


 その場外となった魔独楽石は、元に戻ろうとするけど、魔道具で投影された円筒内に再び入れないようだ。円筒の外の空中で回転をしながら行ったり来たりして、ウロウロとしていた。やがてそれは、力尽きたかのように回転を止めて、ことりと地面に転がった。


 そして残り2つが回転をしながら、さらに激しくぶつかり合いをしている。かなりの激戦。そして、一つの魔独楽石が急に回転を停止して地面にことりと転がる。最後の一つは誇らしく単体で空中を回転していた。


<はい。勝負がついたね。最初の組の勝者はデトル>


 拡声魔道具から発しているクリスティーノの声。そう。残ったのは、灰色をしたデトルの魔独楽石。それはしばらく単体で高速回転をしていた。そして徐々にその回転が緩やかとなり降りて来る。最終的には回転が止まり地面に転がった。


 そして場外となった魔独楽石を排除してた円筒の淡い光が消える。円形に地面がむき出しになっている石床に描かれた円環だけが残る。


 改めて見れば、この円環とその周辺の石床は異様に古い感じがする。


<それじゃあ石を片付けて。次に行くよ>


 そんな感じで、2組目と3組目が終わる。そして、順番が来た。こちらは見様見真似で円筒の淡い光の外側である所定の位置になるらしい場所に立つ。


<はい。最後の組だね。準備はいいかい>


 クリスティーノの声。


 こちらは黄色の針入りの中から、自ら使用する魔独楽石を選んだ。それを握っている右手に汗がにじむ。


 うーん。ちゃんとできるかな。一度しか練習をしていないし不安だよ。


 魔独楽石の投げ方に失敗をしても、初めてなんだし笑われて終わりだとは思う。だけど、やっぱりね。一度成功して褒められてしまうと、欲が出る。


 勝つかどうかまでは言わない。せめて空中に回転をさせて綺麗に決めてみたい。


<では、用意。始め>


 ちゃんと空中で回って欲しい「‘ルウ ルクウ クワーラ’」。


 ん? 声が漏れた?


 そうはいっても、今投げないといけないから気にしない。そのまま、意を決して石を投げた。そしてブンと音がして、横に弧を描きながら円筒の中に入り、他の3つの石と同様に、こちらの魔独楽石も円筒の中で空中に留まり回転をしてくれた。


 いままでと同様、高速回転をした4つの石が中央に集まる。そしてぶつかり合いを始める。この後はそれぞれの石の行方を見守るしかない。


「まあ。ちゃんとできるのね。従魔候補の坊や」


 サマラさんだ。練習の時とは態度が異なっていた。普通に褒めてくれている。


 彼女の石は濃い赤色をした針入り。これは試合前の確認で使う石を見せ合った。赤色の針入りはそれなりの数があったと思う。だけど、赤色濃淡で渦巻き模様になっているようだ。昼に採取したものには入ってはいなかった種類で、これは珍しいんじゃないかな。


 ぶつかり合いをしている魔独楽石の方に目を戻すと、その赤い針入りの石は複雑な軌道を描いて高速回転をしている。円筒のすれすれをくるりと旋回したかと思うと、中央のぶつかり合いに入る。これがぶつかる時、小さな火花が散るのが見えた。そしてまたくるりと旋回をして離れる。それを繰り返していた。


 一方で、こちらの黄色い針入りの石は、他の石がぶつかってきても、その場所から移動をしない。中央を陣取って空中で高速回転していた。他の石が何回ぶつかっても、びくともしない様子。何だか中にある針が光っているようにも見える。


 ん。これなら、いけるかも。


<おや。はい。最後の回の勝者は、ラケルタ君>


 拡声魔道具からのクリスティーノの声。そう。他の石が地面に転がる中こちらの黄色の針入り石が中央で高速回転していた。


 あれ。勝った。


 嬉しいには嬉しいけど、実感が湧かない。


 それに、黄色の針入り石の高速回転が全く収まる気配がない。心配になって止まって欲しいと願う。同時に小さく声が漏れた「‘ナクウ クワーラ’」。


 すると、その声に呼応するかのように、その石の回転が弱まり、やがて静かにころりと地面に転がった。


 え。あ。でも、このタイミングだったら偶然の可能性もあるよね。


 その後、4組の勝者4名でもうひと試合をした。その残りの3名は、例のトル3兄弟。タラトルは緑と白の網目、メトルは茶色がかった黄色の針入りだった。


 あれ。これにも、こちらが勝ってしまった。微妙な気分。


 周りから称賛の言葉をもらう。ワーワーと賑やかだ。


 試合中は真剣だけど、これは遊び。お互い恨みっこなしねというような感じで、負けた人間も皆明るく笑っている。この遊びはみんなで一緒にすることに意義があるとか。それでも勝のは気持ちがいいよね。ともいう。


 うん。そうだね。嬉しいよ。


 だけど、どうするの。ベン君の誕生日プレゼントの珍しい魔独楽石。


 この黄色の針入りの石って、結構多い種類だよ。


◇今年の更新投稿は今話まで。来年もよろしくお願いします。

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