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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第5章 初めての町の外
77/155

5-15 練習

サブタイトル変更をしました。

誤記の修正をしました。

「む。ラケルタは、この遊びの仕方を知らんぞ。クリスティーノ」


 壁の石を興味深そうにして観察をしていたカークが振り向いて言う。


「客人の魔術師さんよ。俺らに任しておけって。ルールは簡単だから教えればできるってことよ」


「ふむ。そう言えば昼に名乗るのを忘れていたな。俺の名はカークと言う。では、ラケルタを頼む」


「それじゃあ、こっちも名乗らんと。俺の名はデトル。このしっかりしたやつがタラトル。そしてこのチャラいやつがメトルだ。俺らはトル3兄弟と呼ばれている」


「そんなあ。チャラいは、ないだろー。タラトルがしっかりとしているのは認めるけどよう」


「メトル。その言葉がチャラい。だが、こいつは監督員の仕事をしっかりとこなす有能なやつなのだ」


 へえ。人は見かけによらずなんだね。


「あー。何だが、こいつにまで、変な目で見られている気がするんだけどさあ」


 そう言えば、これはルークの自動意訳なんだよね。元の言葉との相関はどうなっているのだろう。あれ。それともルーク。今見ていて遊んでいるの? 


 ルークの意識の表層を覗いてみる。


 んー。中に入れないし、表層表面も真っ白のまま。いつ戻ってくれるのだろう。いろいろと聞きたいことがあるんだけど。


「メトル。それは、お前の気のせいだろ。だいたい、従魔になっている魔動物は、そういうことに無頓着だと聞く。見てみろよ。ぼーっとしているぞ」


「そうだねー。じゃあ、さっきのは気のせいだったかな」


「デトル、あまり時間が取れないから、早く教えてあげましょうよ」


「タラトルの言う通りだな。従魔候補のラケルタだったか。俺の言葉が解るか?」


 うん。解るよ「チ」。


「お前、声が出るのか? ずっと黙っていたから声が出ないもんかと思ってた」


 ちょっと驚いたような顔をして言うデトル。


「おう。ラケルタの言語理解能力はかなり高いと言って良い。だが発する言葉は、知られていない種類となる。こいつもそれが解るもんだから普段は声を発しない」


「そうか。じゃあ。あ。いや、練習用の石があった方が簡単だな。どれ」


 デトルが大事そうに持っていた袋から箱を取り出した。その箱は、木の板でできた菓子箱のような感じ。それが何段もある。


 彼がそのうちの1つの箱の蓋を開けると、正8面体の魔独楽石が標本ようにずらりと並んでいた。カークもそうだけど、がさつなようで結構細かいんだね。デトルの場合は、ここの監督員の仕事をしているからかな。


「練習用には、これがいいか。癖のない回転をする硬い石だからな」


 見ると、濃い黄色をした単色の魔独楽石。昼に採集した石の中では2番目に多い種類だった。基本形に近いものだと思う。それを2つ取り出す。


「これを持て。いいか、良く見ていろよ。こうやって投げるのだ」


 デトルは左の掌に置いた石を右手でつまみ取ると手首を軽く捻りブンと石を宙に投げ出す。それは丁度、石を投げて川を渡らせる時と同じような要領。


 石の川渡りと異なるのは、石を下方すれすれを狙って投げるのではなく、少し上向き加減になるように投げることのようだ。


 すると、投げられた魔独楽石は、その名の通り、独楽のようにクルクルと空中に留まって回る。そう。不思議なことに空中に静止して回転している。それも持続して長い時間。今も全然落ちてこない。


「どうだ。こんな感じだ。試しに、俺の石に向けて投げてみろ。他の者に当たらんようにだけ気を付けてな」


 うん。これなら何とかできそうな気がする。ハイキングとかで仲間と遊んだ石の川渡りは得意なほうだったし。投げる方向が違うのが難しそうだけど。


 渡された魔独楽石を投げてみる。ブンという音がして飛んでいく。まだ空中で回転しているデトルの石の横で回った。こちらのも空中に留まって回転している。


「あれ。凄いなあ。こいつ、ほんとに初めてなん。ちゃんと空中を回っているよ。それもいい位置だよねー」


 これらの石は、正8面体の等軸晶系なので、どこが縦か横かはない。だけど3軸の内、1軸が固定されて回転をしているようだ。途中での軸の移転もない。


 そして、この二つの石が呼応しているかのようにお互いに回転がだんだん速くなっていく。なので、回転軸の方向が長いように見えきた。


「あら。こんなところで何をしているの? 投げ方の練習?」


「おー。これは、我が愛しのマーリン。我が太陽よ」


 へえ。女性もいるんだ。それもかなり可愛い。


 うん。ぱっちりとした大きな目に、ぷるんとした唇をした甘い容貌。そしてはち切れんばかりの二房の胸がある。全体的に、ちょっとふっくらとしているけれど、それがまた、健康的な母性を感じる魅力的な女性。


「大げさよメトル。いくら監督員に女性が少ないといってもね」


「うお。サマラさんまで。貴重なお二方がいらしました」


 驚くメトル。そう。もう一人、女性が現れた。


 こちらは可愛いというより美人系。出るところはでて、締まるところは引き締まっている。美人だけどちょっと怖いお姉さんと言えば判るかな。アメリカンコミックとかで登場しそうな大人な女性だよ。好きな人は好きなんだろうね。


「そちらのほうの準備は、もういいのですか?」


「まあ。気を使ってくださるの? ありがとうタラトル。だけど何も出ないわよ」


「そんなもんは、どうでもいい。それよりあれを見ろよ」


「どういうこと? デトル。え。あら。まあ」


「ふ。凄いわね」


 先程の2つの黄色い魔独楽石が、空中で速い回転をしながら、カキンガキンとぶつかり合いをしている。かなり激しい。まるで立体ベーゴマのようだ。


「こりゃなんだ。普通に対戦してるねー」


「それも、この分だとデトルが負けますよ」


「従魔候補のぼうず。本当にはじめてか? 凄いぞ」


 良く解らないけれど。これはビギナーズラックだよ。


 何だか、とても恥ずかしい。


◇今日は12月25日ですね。

 物語には出てこないですが、クリスマスといえばサンタさんからのプレゼント。

 懐かしいですね。子供の頃本気で信じていました。

 

◇ここに読みに来てくれてありがとうございます。

 固定の読者の方もいらしてくれているようで、とても嬉しいです。

 おかげさまで、この物語も通算77話(なんか良い感じの数字)です。

 これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔独楽石は竹トンボみたいに回りながら紙飛行機のように空中を漂うようなイメージでしょうか?
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