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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第5章 初めての町の外
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5-14 早引き

サブタイトル変更をしました。

「フフフ。そろそろかな」


 クリスティーノは絡ませていた優美な指を解き、長いまつ毛のある目でウインクをする。華奢きゃしゃな造りだけに、この動作にたおやかな女性を連想してしまう。だけどその声は低い男性のものだ。


「何を企んでおる?」


「んー。大したことじゃないよ。折角だからね、会場を用意した。それと、今日は少し早めに切り上げて良いことにしたんだ」


「ほう。確かにまだ日は高いな」


「今日の高品質の魔鉱石の採取は、すでに規定量を超えたからね。ちょっとした、ご褒美として娯楽の遊びを提供するのも上に立つものの大事な仕事の一つだよ」


「ふむ」


「さあ、行こう。皆が待っている」


 ふーん。だけど、ルプスシエアンたちには、褒美なんてないんだろうね。従魔はそんなものと思ってはいるけど。何だか、やるせないよ。


「ラケルタ。どうした? しんみりしおって」


「あれ。どうしたの? ラケルタ君」


 ん。あ。いや。何でもないよ。


 こちらは、にこりと笑って見せる。


「んー。そのぎこちのない笑いはどうしたのかな? まるで感情を押し殺した人間のように見えるね」


「ふむ。ラケルタは、時々そのような表情を見せるのだ。理解できん時がある」


「え。カーク。言語変換魔道具での言葉だけではなく、意思疎通もできていないのかい? ラケルタ君の従魔の刻印は、ちゃんとできているの?」


「ふん。当たり前だ。俺がそんな下手をせん」


 え。こちらの従魔の刻印は胸の中央にある。それこそ上着のポンチョを脱がないと見せれないよ。


「フフフ。それもそうだね。従魔の刻印がなかったら、従魔候補の首飾りが付けれないからね」


 あ。そゆこと。これは知らなかった。この従魔候補の首飾りは、派手で目立つということだけで目印になっているとばかり思っていたよ。


「あれ。今度は、困ったり興味深そうな顔をしたりしている」


「おう。これがラケルタの百面相だ。見てて飽きん。ははは」


 あのね。カークさん。それはないよ。


「今はむすりとしている。君が言う通り、ラケルタ君は言語理解能力が高そうだ」


 はたと思い出したようにして、扉の方へと振り向くクリスティーノ。


「それはさておき。行こう。ぐずぐずとしていたら皆からブーイングがでる」


 クリスティーノがかすように言う。


「ま。俺が見んと始まらんしな。ほれ。行くぞ。ミルマノ、ラケルタ」


 執務室を出る。そしてクリスティーノに続いて石段を下る。地上階になってもまだ下る。


 あれ。地下なの? 


 クリスティーノは、そのまま坑道へと続く出入り口に入り進む。そして、ある分岐点で立ち止まる。


「こっちだよ。採掘現場と反対側。今日使用する会場はこの奥だよ。元は古代の競技場だったらしい。ここの先代が発見してね。それを改修したものなんだ。」



「おう。古代の競技場址か。興味深いな。行くのは初めてだ」


「こっちは身内だけの場所だからね。見学や商談の客人は普通入れないよ」


「そうか。で。そこから古代魔道具は発掘されんかったか?」


「どうだろうね。先代の資料に当たればあるかも……って、カーク。今日はそれはなしだよ。帰れなくなる」


「ははは。そうだな。次の機会とするか」


 今歩いている通路は、頑丈な石のブロックでできているようだ。


 そして、この通路の石をよく見ると、何かでコーティングをしているのか、少し金属的な光沢があり傷一つ見当たらない。かなり新しいもののように見える。


 あ。そうか。この通路も一緒に改修をしたんだろうね。


 その通路の奥の方から、ワーワーと賑やかな大勢の声が聞こえる。


 そのまま進んでいくと、大きく開けた空間があった。


 まずは天井が高い。ドーム型の天井。そう。あの仮の住処としていたあの天井と造りが似ている。それを大型にしたものが視野一面に広がっている。


 その天井も石でできているようで、しかも窓がない。だけど魔道具の照明なのだろう。その途中で明るい光が煌々と照っている。ずっしりとした重い石でできているはずの天井が、明るいために、まるで宙を浮いた軽いもののように見える。


 目を水平に戻せば、短距離走とかができそうな感じの平らで広い楕円形の広場。うん。よく見る競技場に似ている。だけどそこには客席はない。ただ天井まで石のブロック壁がずらりと並んでいた。その壁から四方に出入り口があるだけ。


 その出入り口の扉の開いたところにいるのが、今の状態。


「クリスティーノ場長! お待ちしておりました。本当にありがとうございます。まさか、本日このような場まで設けていただけるなんて。感謝いたします」


 駆け寄って来た3名の監督員。魔独楽石投げ用の石を選ぶのに来た人間。そして彼は最初に回答してくれた人間だった。とても嬉しそうで、今にも泣きそう。


「なあ。ほんとだぜ。俺らも昼の連中を募ったけどよ。馬車待ちの場所で、ちょいとするもんだと思ってた」


「だねー。この中だったらよ。地下だというのに魔素酔いで気分が悪くなる奴なんてでないしな。それもあってよう、見学っていうことで、みんな来ちゃったんだ」


 うん? 思えばそうかも。クリスティーノの執務室に居た時もそうだったけど、少し重い感じがするような気がする。


「そうそう。早引きとなりましたので、従魔たちも喜んでいましたよ。今頃は場内の広場で、おもいっきり駆け回っているところでしょう。ルプスシエアンは駆けるのが好きですからね」


 あ。そうなんだ。それは良かった。


 自らでも、自然にみがこぼれているのが判る。


「こいつ、何かいい笑顔しているな。従魔候補の擬態魔動物だと聞いたが、こういう場が好きなんか?」


「おー。ほんとだ。でもって片割れの方は、我関せずという感じで無表情だね」


 いいことを思いついたというような顔をして、ぽんと手を叩くクリスティーノ。


「そうだ。ラケルタ君。君の手と指は人間と全く同じ造りをしているよね。折角の機会だ。君も魔独楽石投げに参加してみないか?」


 え。参加するの?


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