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1-06 藁山の上で

身体の確認です。

 男は部屋から出ていった。外から扉の鍵をかけたようだ。


 こちらは藁山の上で座ったままでいる。気だるくて、立ち上がる気力がない。


 ふぅ。休めと言うのだったら、この保定魔道具とやらを外して欲しいよ。


 とは言え、どう足掻いても取り合ってはくれないだろうね。


 あれは、かなり警戒をしている目だよ。この夢は、妙にリアルな反応が返って来る。なので、下手をすると、余計に酷いことになってしまう可能性が高い。


 警戒と言えば……確かドラコロイドとか言うものに相当恐れていたな。


 こちらは、そのドラコロイドに擬態したトカゲ? ヒト化したドラコーとかに化けたともいっていた。人間の姿に近いとか。


 そう。この夢は、妙にリアルだ。それなら、自分自身がどう変化したのかという興味が湧いた。


 その好奇心は、倦怠感より勝っていた。


 改めて、自分自身を見てみる。


 脇腹と手足に青緑色の任侠ものの刺青でよく見る龍の鱗のような模様が存在する。それも、かなりリアルで立体的だ。


 腕にある鱗模様を触ってみる。少しでこぼこしていた。それでも、ぴったりと皮膚に密着しているようで、逆毛に触っても引っ掛かりがなかった。


 その鱗模様は、特に肩から腕の外側、それと、太股の外側から足首までがかなり酷い。


 これでは、銭湯に行ったら、モンモンの兄ちゃんお断りって、追い出されそうである。逆に言えば、それくらいの差でしかない。


 そう。そんな妙な鱗模様はあるが、胴体や手足の形は人間そのものだった。


 同時に視界に入った、両手首に填まった黒い帯を見る。


 その帯は、片手で覆えば、隠せるくらいの幅があった。金属光沢がある黒い帯で、撫ぜると柔らかい動物の皮のような質感がある。


 さらに、その黒い帯には、透明な虹色のきらきらとした、小さな粒が埋め込まれている。その小さな粒は、意味ありげな幾何学文様を描いていた。


 腹の方を見れば、同じような帯が臍を隠すようにして填まっている。そして、その手首に填まった帯から胴に填っている同様な帯へと、頑丈そうな鎖で左右それぞれに繋がっていた。


 はっきり言って、この黒い帯と鎖は、いやらしい程に目立つし、物々しい。


 そんな、物々しい外見とは裏腹に、その帯に重さを感じない。手首を動かすことや腰を屈めることにも全く問題がない。妙に皮膚に馴染んでいる。見なければその存在を忘れてしまう程だ。


 そういえば、先程、両手が引き込まれて酷い目にあったが、何故だろう? これくらいの長さがあれば、喉くらいだったら余裕で届きそうだ。


 おそるおそる、喉にそっと両手を向ける。……あれ? するりと鎖が伸びてきて、喉元どころか口元にさえ届いた。


 ん? 顎の感触が? 背中を丸めて、頬を撫でてみる。顎や頬には、手足にある鱗模様に伴うでこぼこ感が無い。


 むしろ、髭の毛穴さえ無いのではないかと思える程、つるつるした手触りだ。まるで少年のような、吸い付くような肌の触感。


 改めて目で胴体と手足を確認する。体の造りは若そうではあるが、それなりに大人びてはいる。少年と言うよりは青年に近い。


 指で下顎の周りと耳と目じりの間隔を調べてみる。成人男性と言うには華奢な顎だが、下顎は十分発達していて側面も太めだ。顔の造りも体の造りと同じく青年になりかけの少年と言うところだろうか。


 この目がトカゲ系とか言っていたな。目周りの感触はどうだ?


 指の先で目の周りをなぞる。


 目の周辺は、人間のしっとりとした皮膚の感触だった。眼窩の上あたりに眉毛の感触がある。瞼に睫毛が存在している感触もしっかりとある。


 トカゲ系って、何か特徴的な色とか模様とかがあるのか。


 人間のような鼻があることも手の感触に加えて、目をより目にして目で見て確認した。ぼんやりとしか見えないが、多分、鼻の色は手足の先端と同じく人間の肌の色だろう。


 さらに、手の感触で唇や歯を、舌は口から出して、その存在を確認した。


 目の端に見える髪の毛の色は黒か、少なくとも、それに近い色に見える。変なものではない。


 人間と同じだ。特に違和感はない。


 それと……。


 何せトカゲだ。尻尾が気になった。そろっと後ろを撫ぜてみる。例のでこぼこした手触りがわずかに感じるだけだった。どうやら、尻尾はなさそうだ。


 何とはなしに、ほっとした。


 そんな所か。


 ひと段落した。


 まだ、気だるさが残っているな。それじゃあ、伸びでもしようか。


 んーと両手を上にゆっくり伸ばそうとする。手を上に上げるにつれて、鎖がするりと長くなっていく感覚がある。


 お。そのまま、頭上までいけるか? と思った、その時。


 じゃり。


 あ。この音。


 嫌な予感がすると思った途端、両手が下の方へと持っていかれた。


 それと同時に、どっと倦怠感が増してしまった。



鏡がないので、顔は見えていない状態です。まだ夢の中だと思っているので、主人公に必死さはないです。むしろ、どこまでリアルなのかという、好奇心のほうが強いようです。

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