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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第5章 初めての町の外
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5-04 魔動物と人間

 奥の扉から、準備を終えたらしいミルマノが出てきた。


 わお。これは凄いよ。


 そう。ミルマノの恰好。丈夫そうな生地の服の上に、金属的な光沢のある鱗状の鎧を頭の上から膝下まで、すっぽりとかぶっている。腰のベルトには、柄に拳を守る、縦に幅広く付いた護拳ごけんと返しを兼ねたつばがある、サーベルのようなものをさやに納めてたずさえていた。


 このよそおいで、品の良い静かな雰囲気。ぐっとくるよね。


 いや。流石に真似をしないし、できない。また、カークに笑われるのが落ちだ。


 その武士もののふ然としてるミルマノは、昔蜥蜴種トゥアタラティのリザドリアン。この種は、とても誇り高いことで知られていると聞く。この種は、両のまなこの上に、小さな単眼を一つ、生まれつき持っている。これは、神から授かった翼蛇よくだの目だと伝わる。


 そう。従魔の刻印の別名と同じ、翼蛇の目。これはドラコラン帝国の紋章の一つだといわれている。これは、町中でもよく耳にするので、結構有名な話らしい。


 だからだろう。北方の伝説では、昔蜥蜴種トゥアタラティは原初の青緑ヴェルデ・マラキーテドラコーと共に、人間を襲って食らったことになっている。それで、地域外の北方では、昔蜥蜴種トゥアタラティを三つ目と呼んでみ嫌らっているそうな。


 だけど、基本的に魔動物は、人間を襲うことはあっても、食べることをしない。


 ルークは、魔動物が人間を食するのは無駄でしかないと言っていた。その詳細な説明を端折はしょれば、人間は、魔素総量が極端に少ない生き物の種類。細胞内レベルでエネルギーを取り出す仕組みが異なるということらしい。


 んー。だけど、ミルマノの帯刀は、かっこいいよね。


 正式な従魔は、仕事上の必要がある場合、町中でも武器の携行が許されている。


 ミルマノは、鰐種ココドゥリロティのゴンザ氏とほどではないが、その人食い伝説を想起させるような、肉食系の鋭い牙を持つ。もちろん、硬い鱗も、ある。だからといって、護衛に就く時、丸腰という訳にはいかない。


 そう。ミルマノがカークとこちらの護衛をするそうだ。やはり町の外は危険なのだろう。


 こちらは、従魔候補というのもあるけど、正式な従魔になった時でも、こういう役割は怖くてできないと思う。頼りになりそうな、かっこいいミルマノにお願いをするしかないよね。うん。


 カークは、いつもの恰好。魔法使いの服装だ。その上に、いつの間にか丈夫そうな外套を羽織っている。それと、大きな袋を背中の片側に携えていた。


 ミルマノとこちらにも、外套と袋を渡してくれた。カークとお揃いの、丈が長くて地味な色合いのマントだ。町の外で目立つのは良くないので、町の門を行来ゆききする他の者と同じような外観にするとのこと。


 カークの居室を出て、受付のある建物まで行く。こちらは、もちろん引き手付き。だけど、今、こちらは、丈の長い地味なマントを羽織り、黒い長靴ちょうかいているので、一見、妙な図。


 施設内で出会う者たちは、こちらが従魔候補だということを知っていても、びっくりしているようだ。こちらの目から見ても、皆ぎょっとしているのが判る。


 見た目だけじゃ、区別がつきにくいのかな。だって、こちらは、もともとが人間に近い姿だからね。今の恰好で、この派手な従魔候補の首飾りの他に、魔動物だと判るのは、目の中の縦長の瞳を見るしかない。


 そう。今のところ、ここの人間で縦長の瞳を持つものを見ていない。


 あと、魔動物と人間の違いは、身体から漏れ出る魔素流の動きを見れば、一発で判る。だけど、高位の魔法使いでも、普通は魔素流の動きを見ることができない。だから、検め事の時、専用の魔道具でこちらの魔素流放出紋の確認をしたんだ。


 ルークのあの意味深な、魔法の特訓がなければ、こちらも見えなかったと思う。それに、最初はルークの認識が特殊で、理解不可能だと思っていた。


 もちろん、どの魔素流放出紋がどの生き物に相当するのかは、情報が少なくて、まだよく判らないけどね。


 それでも、魔動物と人間との違い位だったら、今でも判るよ。


 それで見ると、たとえば、ミルマノは、もちろん魔動物側。カークは……あれ。あ。うん。漏れ出る魔素流の量が異常に多いけど、波長は人間側だね。


 あー。びっくりした。思えば、カークの魔素流の動きを見るのは、今回が初めてだったんだ。一瞬、魔動物側かと思ったよ。ほんと。


 カークが、軽く振り返る。


「おい。ラケルタ。後ろで何かしたか。むず痒いぞ」


 ん。こちらの視線に感づいたの? やはり、魔法使いだね。見えていなくても、こちらの魔素流の動きの変化を体感的に感知したようだ。今後、気を付けないと。うん。


 受付に着く。中に入った時、カークが引き手のフックを外してくれた。この建物の中では、引き手を外してもらえることは少ない。手続きをしたら、すぐに仕事先へと出て行くからだ。


 お茶を飲んでから、ゆっくり出てきたからだろう。受付は、かなり空いていた。アイラちゃんも、一仕事が終わったみたいで、ちょっと眠たそう。もうすぐで休憩時間だ。頑張れ、アイラちゃん。


 えと。いつものように、手続きをするのかな。え。違うの?


 カークが受付の女性の職員と話し込んでいる。


 あれ。カークが別室へと招かれてる。


 その女性の職員が、こちらの方に手招きをする。


 あ。二体とも一緒においでって。はい。


読みに来ていただきまして、ありがとうございます。とても嬉しいです。

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