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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第5章 初めての町の外
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5-03 準備と古代魔道具

サブタイトル変更をしました。

 始める?


「何。今から、ちょいと町の外に出る。その前に、準備をせんとな」


 へえ。今日、出るんだ。町の外。


「ラケルタ。お前は座ったままでいろ」


 ん。あ。はい。


「ミルマノ。お前は、いつもの準備をせよ」


『承知いたしました』


 ミルマノは、丁寧にお辞儀をした。そして、ごく当たり前のように、テーブルの上の飲み終わった茶の椀と皿を全て盆に載せ、その盆と共に扉の奥へと消えた。


 カークは、ミルマノが出て行ったのを見届けると、こちらを見据みすえた。


「さて。ラケルタ。お前は、いつも裸足だな。支給の靴はどうした?」


 え。そこ? んー。どうって言ってもね。支給品の靴は自室に置いてあるけど。ぶかぶかで合わないんだよ。それに、裸足で道を歩いても、痛くないから大丈夫。


「さしずめ、合わんからかんと言うところか。支給品は、大き目に造るからな。それに、靴を履かんやつも少なくはない。この町の中は、大した危険もないから、裸足でもかまわん。だが、やわなお前のことだ。町の外だと、きついだろ」


 んー。それでも、あの靴は苦手だな。底が木でできた、サンダル? でかいし、かかとにも下手に革があって、こすれそうなんだよ。


 カークが、にやりと笑う。


「そこでだ。丁度良いことに、ちょっとした靴があってな。試しに履いてみろ」


 いたずらをする前の、いたずら坊主の表情だよ。どゆこと。


「何。その靴は、俺の古代魔道具コレクションの一つでな」


 えー? ……古代魔道具って。


「恐れることはない。取り外しが可能なのは、確認済みだ」


 あ。うん。それは重要だよ。こちらにまっている帯も、古代魔道具だという。そして、これはどうやら取り外し不可能。


 でも、この保定魔道具、‘最小制御体勢’に戻ってからは、ルークが難しいと言っていた、この身体の魔素粒子を補給してくれているようなんだ。ほんと。手首から胴につながる鎖さえなければ、いいものかもしれない。


 カークは、すでに準備をしていたようで、近くの棚から一揃ひとそろいの靴をすぐに取りだした。その靴の外見は、黒い革の長靴ちょうか。そう。脹脛ふくらはぎを覆うほどの丈がある靴だ。そして、丁度、この足に合いそうな大きさをしている。


 魔道具というので、よく見ると銀色で模様が描かれている。そして、その模様のところどころに、きらきらとした石が入っていた。


 ん。あれ? この模様。どこかで、見たような気がする。


 ……え。あ。うそでしょ。


 凄く細かいけど、絵文字崩れだよ。これ。


「ほう。気が付いたか。俺も、もしやと思って、最近確認して気が付いた。この靴には、幻とされる例の古代ドラコラン文字で魔法紋が描かれておる。な。お前に、打って付けだろ」


 いい笑顔をするカーク。得意満面だ。


「だが、こいつの効果は未知数だ。使ってみないと判らん。変なことが起こるようだったら、すぐさま解除をしてやる。だから、今日だけでも使ってみろ」


 うー。効果が判らない? それは不安だね。うーん。解除可能なら、いいか。


 ……あ。でも。


 足の裏を見る。


 やっぱり、汚れているよ。何かで拭かなきゃ。


「よし。履く気になったようだな。何。汚れは、これで取ると良い」


 彼はそう言うと、大きな物体を取り出した。これと似たものを見たことがある。これは、あの時の洗浄魔道具を、さらに大きくしたものだ。


 とても準備がいいね。カークさん。


 椅子に座ったまま、物体の穴に足の先を入れる。よく似たものを、すでに使って知っているから、安心して中に入れた。足を入れると同時に、わずかな波動と魔素流の動きが感じられた。


 中から、暖かい水蒸気が噴射され、少し熱めの温風が吹いた。以前と同じ仕組みのようだ。あの時は驚いたけど、慣れると、とても気持ちがいいよ。これ。


 足の裏が綺麗になったのを確認した。いよいよ、謎の靴だ。うん。


 カークの強い視線を横に感じる中、おそるおそる、その靴に足を入れた。


 やっぱり、不安だよ。何が起こるか判らないことを、知ってしまったからね。


 この長靴ちょうかは、見た目より大きかったようで、少しぶかついていた。その分、履きやすい。だけど、これもどうなんだろうなと思った。


 靴底に両足が入った感触を得たのと同時に、この靴から、独特な波動と魔素流の動きが感じられた。


 え。もう何かが起こるの?


 そう思った途端に、靴の黒い革が、きゅっと縮んだ。ぴったりと足の皮膚に張り付いたような感じになる。それでも、足指が靴の中で自由に動かすことができた。


「おう。どうだ。ふむ。丁度良さそうだな。では、立ってみろ」


 カークに言われて、立ってみる。


 うん。当たるところがない。それに、とても軽いよ。これはいいね。


「ほう。似合っているな。む……かっこいいぞ。足元だけだがな」


 カークが笑いをこらえている。


 えー。今更、何だよ。ロビーですでに爆笑をしてたでしょ。


 そりゃあ、笑いたい気持ちは解る。でっかいチューリップのようなアップリケが縫い込まれたポンチョだからね。でも、支給品の服なんだよ。これ。


「ははは。その上着は、何とかせんとな」


 カークは、堪えきれずに笑った後、上に目をやり、考えるような仕草をした。


「ふむ。そうだな。ちと、そこで待っていろ」


 カークは、この部屋にある石段を上った。そして、すぐに戻って来た。手には、白い革のようなものを抱えている。壁に掛かっていたものを取って来たようだ。


「ほれ。これならいいだろ。今着ているのは、ここに置いておけ」


 革っぽいから、ごわついているのかと思った。だけど、実際に手に取ると、とても柔らかくて、良い手触り。


 これもポンチョだった。白地に幾何学模様が描かれている。それと、これは袖口そでぐちといっていいのかな。手首周りの所に、左右2か所ずつ、綺麗な白い石でできた飾りボタンのようなもので留めてある。


 これなら、保定魔道具の鎖が隠れるし邪魔にならない。それに、ポンチョ自身がずれるのを心配しなくても良さそう。


 あ。ミルマノが戻って来た。


読みに来ていただきまして、ありがとうございます。とても嬉しいです。

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