4-12 エンタの得意技
サブタイトル変更しました。
表現の変更と修正をしました。
前話のすぐ後です。
気のせいじゃない。ルークは言葉を濁した。
別宇宙の、異世界に居るという現実。この事実を知って欲しくなかったのかな。その理由は解らない。だけど、これは確信しても良さそうだ。
記憶の一部分を消されたということ。
あ。しまった。これは、意識の表層だよ。ルークに聞かれたかもしれない。
ごくり。
こちらの気持ちが、身体とリンクしている。
彼からの応答はない。だけど、何となく、ほっとする。
ん?
何かが、近づく気配を感じた。
『何をじっとみつめている? 殻が堅くて割れないのか。どれ、貸してみな』
明るく元気の良い声色の、自動意訳されたエンタの声。
あ。ん。じゃあ。お願いします。
にっこりと笑って、殻付きの森林魔胡桃を栗鼠耳アルマジロのエンタに手渡す。
うん。こちらの笑顔も、板についてきたかな。
森林魔胡桃の外殻は、よく知っている、こちらの世界の鬼胡桃と同様、恐ろしく丈夫そうだ。これは、胡桃割りのような器具が必要だと思う。
エンタは、受け取った胡桃の外殻を、可愛らしい小さな指先に、飾りのように付いているかぎ爪で、すっと引っ掻く。
すると、その堅い外殻が、ぱかりと半分に割れた。
その胡桃の断面をよく見る。
すると、外殻の接合部分に沿って、縦に割れているのではないのが判った。殻付き胡桃は、とても綺麗に磨かれた鏡のような、横断面を晒している。
へ?
こちらが驚いて見ていると、半分ほどの背丈しかない小さな彼は、とても満足をしたように、笑う。
『どうだ、便利だろ? これが俺の得意とする、爪切断だ。もっと見せてやろう』
え。爪切りだって?
ルークが自動意訳で遊んでいる。
どうやら、先程のあれは、聞いていないことにしてくれているようだった。
エンタは、食べ物が置いてある、石造りの中央大テーブルに行っていた。そして、殻付き森林魔胡桃を皿に山盛りにして戻ってきた。
エンタは、にやりと笑う。
彼は、皿にある殻付き胡桃を、宙に高く放り投げた。同時に、彼自身も宙高くに蹴り上がる。その刹那、その小さなかぎ爪で、胡桃の外殻だけを、スパスパと手際よく切り刻んでいく。
うあ。これは凄い。
こちらは、その早業を、ぽかんと見ているだけ。
小さな断片となった、外殻の破片が空中を舞う。そして、食用となる殻の中身の仁だけが、ころころと全て、先に着地したエンタの手に持つ皿の上に落ちた。
わお。華麗な着地だね。
鬼胡桃のように割った後でも、取り出すのが面倒くさい中身の仁。それが、丁寧に取り分けられて、皿の上に盛られている。
切れ味抜群のかぎ爪って、ほんと便利だね。身体能力も驚異的だ。
これは、本気で凄い。
こちらは感動をして、思わず、ぱちぱちと両手を叩いていた。
最後に、ふわりと風が吹いて、鋭く切り刻まれた胡桃の殻の破片が、すべてガラ入れの壺に入る。
うん。これはいいね。あの鋭い外殻の破片は裸足で踏むと、結構痛そう。
へえ。エンタって、魔法も使えるんだ。それに、仲間思いなんだね。
彼は、先輩なんだ。だから、感銘を受けたといってもいい。
『そ、尊敬したか? もっと、尊敬をしてくれても、いいんだぞ。まだ奥の手がある。それを見せようじゃないか』
そう自慢している、彼の目が見開いて笑顔が引きつっている。
あれ? エンタ自身も、驚いているようだ。
- ククク。ごみはゴミ箱に -
あ。ルーク。え。じゃあ、あの風はルークなの?
- ん? ま。そうだ -
え。そういう反応?
何か、意味があってのことじゃなかったの。
あ。ただ単に、エンタをびっくりさせたかったんだ。
ルークには、そういった子供っぽい部分がある。それは、最初に出会った時の印象の一つと同じ。意識体本来の特性なのだろう。
- 魔アルマジロ 科の50歩を、見てあげないのか? -
ん。そうそう、エンタは、奥の手があるとか言っていたね。
改めて、エンタを見る。
彼の姿が丸いものに変化をしていた。
そう。身体を丸めて球状になっている。栗鼠みたいな尻尾もその中に納まっているようだ。そして、平だった背中の甲羅が逆立ち、鋭くて長い棘に変化していた。
とても切れ味が良さそうな棘。これは、触ると怪我をしそう。
彼は、後ろ身頃が襟刳りから腰のあたりまで大きく開いた服と、後ろで二つに分かれたマントを羽織っている。これは、この形態に対応するためだったようだ。普段はそのマントが合わさっていて、背中が隠れている。
うん。エンタって、意外と使える戦闘系?
何だか、羨ましいな。
ここは、現実のファンタジー世界。相当シビアだろうね。
今は、それなりに、楽に過ごせている。それは、従魔候補として、社会的自由を手放す代わりに、保護をされているからだ。これはラッキーなことだと思う。
だけど、何が起こるか分からないというのが、世の常。
実際、こちらが、ここにいること自体、それを示している。
頼りになるルークがいる。そのルークだって、どうなるか分からない。すでに、こちらだけで対応をしないといけない事態を経験している。でもそれは、想定内の出来事だった。
そう。突発的な事態が起こる可能性だってある。
その時、こちらは、生き残るために何ができる?
エンタの立派な棘球を見て、こちらの無力さを痛感 した。
直人君は、現状に不安を感じたようです。
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◇見直してみたら、間延びをした感じがしたので、特に、最初と最後の方の表現を変更しました。表現の意味合いもしっくりしていなかったので修正をしました。




