4-11 休日の魔法講習
表現の変更と修正をしました。
遅い時間の朝食で。
今日は、休みだ。
辺りは、多くの従魔たちで、がやがやとしている。
今、栗鼠耳とその尻尾を持つアルマジロと、ひょろ長い亀カッパの外見をした、従魔候補の先輩たちと一緒。
彼らの名前は、ルークの自動意訳で、50歩、100歩という。だけど、こちらは、彼らをエンタとイエンという名前で勝手に認識をしている。
そして、居住施設内の従魔食堂ジャルディーノ・デ・ファミリアに来た。
やはり、今日もミランダさんはいない。
彼女は、甘えた家猫のような、お水系の色気がある、人間のお姉さん。
初めて出会った時は、家猫じゃなくて獰猛な山猫を連想させる、野生的で、濃厚な魔性を帯びた色香を醸し出していた。
そう。本気で、その時は食べられてしまうのではないかと思った。
でも、それは最初の時だけだった。ほっとしたよ。
そのミランダさんは、知的魔動物好きが高じて、この食堂を切り盛りしている。彼女は、とても珍しい魔素味覚持ちの人間の魔術師。しかも味覚識別付き。
昨日のルークの話では、魔動物は魔素が生存に必要なので、生来的に魔素味覚を持つという。そして、魔素味覚の識別を正確に行うには、魔法の付加が必要になるとのこと。
反対に、魔素味覚を持たなくても、魔法で魔素の味覚識別が、可能になるとか。だけど、人間の魔術師にとって魔法は切り札。そう手軽に使用できない。
彼女は、先祖返りか何かで、生まれながらにして、魔動物並みの魔素味覚を持っているのだろうとのこと。さらに、魔法を付加しなくても、ある程度の魔素の種類が判ることもあるという。
ともかく彼女は、実際にその能力を用いて、魔生物由来の食材を料理して旨い飯を提供してくれる。
うん。初日にここで食べた、ミランダさんの料理は、とても旨かった。その後の料理も、何かと手が込んでいて旨かったよ。
ミランダさんは、食材探しで、数名の職員と従魔たちを連れて町の外へ出かけていると、従魔長のゴンザ氏から、昨晩出会った時に教えてもらった。
普通の魔動物用の食材だったら、この近辺でそれなりに手に入る。
だけど、ミランダさんが、どうしても欲しい珍しい食材があるのだそうだ。手に入ったら、その食材で料理をして、何を使ったかを教えると言っていたとのこと。
うん。楽しみ。でも、早く戻ってきてくれないかな。保存食ばかりでは、飽きてしまうよ。
『なあ。どうしたんだい? ボケっとしていないで、食おうぜ。これはどうだい、結構旨いよ』
そう。珍しくそのままエンタとイエンと一緒に、テーブルについている。
従魔長のゴンザ氏は、すでに食事をし終えたらしく、ここにはいない。
そう。遅飯だからね。でも、誰も咎めたりするものはいない。食べ物が、大きなテーブルの上に魔動物の科種別に分けられていて、どでんと置いてある。
代理の職員は物臭な人間であるらしい。勝手に好きなものを食べろという状態。流石に、衛生面は気にしているのか、食事の時間を設けて、清掃や新たな食べ物の補充をしたりしている。
エンタを見る。森林魔胡桃で、それこそ頬を栗鼠のように膨らませている。その手に、殻付き胡桃を持ち、こちらに勧める。
彼の顔は、栗鼠に近いアルマジロ。だから、余計に可愛く見える。
一方、エンタ自身は格好いい姿をしていると思っているようだ。それで、いつも気取っているものだから、微笑ましくも思える。
ん。あ。そうだね。エンタ。
彼から、その殻付きの実を受け取る。
森林魔胡桃か。最初の時に食べた森林偽魔胡桃の本物版。だけど、この外殻は、普通によく知っている胡桃と同じように見える。
- ほら。意識をしてみて。まずは、それをじっと見つめてみるといい -
あ。ルーク。
魔法を意識するんだった。こうかな。
- 今は、体細胞中にある魔素量が少ないから、この身体の魔素流を使うな。生命活動の供給源が少なくなるのは危険だ。自らの意識にある魔素流を感じて。そう。そんな感じで良い。-
お。胡桃の殻が、ぼやっと光っている。濃い黄色と薄い赤色の光が見える。
- 視覚の表現になったか。我は、嗅覚になると思っていたがね。この身体が野生を失って久しい。それもありだろう -
嗅覚ね。それは一番原始的な感覚だと聞く。食べ物を食べる時も、味覚だけではなく、嗅覚も一緒じゃないと旨さも半減するよ。
うん? 胡桃の外殻から、香しい匂いが漂って来た。とても良い甘い香りを伴っている。
-臭覚識別も、やればできるか。その甘い香りが、魔素粒子とそれを捉えている担体の香りだ。その担体の違いで魔素粒子の性質が変化する-
へえ。そうなの。
今回は、意識をしていなかったよ。
- 意識せよ。それが訓練だ。だが、無意識で意識の魔素流を用いたのは立派だ-
うん。魔法として意識するよ。
- この世界では、この甘い香りがする魔素粒子を含む担体のことを、生命の元素、土の魔素などと呼んでいる。この担体の正体は、君の世界の知識を借りれば、窒素配糖体の一種で、魔素粒子をキレート結合したようなものといえるだろう -
え。この世界と、君の世界?
あ。うん。やっぱり、ここは異世界なんだ。パラレルワールド?
- ……ま。そうなる -
あれ。ルークの意思に、何か慌てたような感情が垣間見えたような気がする。
気のせいかな。
どうしたのでしょう。




