4-10 次の日の朝
日が高く昇っているようです。
翌朝。
自室に、元気な日差しが入っている。
部屋の中が、かなり明るい。
……う。寝坊をした。
昨晩は、ルークとの対話が弾んで、かなり遅くまで起きていた。
いつもの、目覚まし時計のような魔道具を見る。
それは、数回仕事をし終えた後らしい。
そのまま素知らぬ顔で、そいつは時を刻んでいた。
わ。従魔長のゴンザ氏に、迷惑をかけてしまう。
慌てて、ベットから飛び起きる。
ん。あ。今日は、休みか。
- やあ。おそよう -
あ。ルーク。
え。ルークは、すでに起きていたの?
- そうだね。休みだと聞いたので、そのままにした。ククク。朝寝坊したからと言って、朝食は抜くなよ -
そうですか。
ありがたいというか、何というか。
幸い、朝食の時間には間に合う。
支度をして、早速部屋を出よう。従魔候補の首飾りも忘れずに、と。
自由に行動ができる居住施設内でも、これを付けておいた方が良いと、ゴンザ氏から聞いた。
なくても咎められはしないけど、何かがあった時に困るのは自分だ。
扉をそろりと引いて開け、通路に出る。
通路はいつもより通行が多い。すでに朝飯を済ませたのが、ほとんどのようだ。腹を満たして満足したような顔をしたものたちが、ゆったりと歩いている。
今日は、休みのものが多いのだろう。
居住施設の仲間たち。ぽつぽつと顔見知りができてきた。
こちらは、居住施設に居る時は従魔長のゴンザ氏と一緒のことが多い。それで、他の仲間たちとの付き合いは、あまりない。
せいぜい、最初に出会った、アルマジロに栗鼠の耳と尻尾が生えたのと、亀に近いカッパのようなのと仲良くなれたことくらいかな。
彼らは、それぞれ、50歩、100歩という、ちょっと笑える名前。
これは、ルークの自動意訳だけどね。
どうやら、甲羅を持つ同じようなものが、同時に召喚されたというのが、彼らの名前の由来らしい。
こちらは端折って、エンタとイエンという名前で、認識をしている。
彼らは、半年くらい前に魔動物召喚魔術で召喚された、従魔候補。
そう。こちらの先輩に当たる。
エンタは、魔哺乳類綱の魔アルマジロ科の一種。この施設では、珍しい科種だ。イエンは、リザドリアン属亀種とのこと。
あと、彼らと一緒にいた、ダンディなリザドリアンは、1,000の手という名前の従魔らしい。
その寡黙な彼のことは、あまり知らない。優雅で格好がいい。だけど、彼には、どこか近寄りがたい雰囲気がある。
それでも、エンタとイエンは、彼にとても懐いている。実際、一緒に居るところをよく見かける。ミル・マノも、彼らをを悪く思ってはいないようだ。
お。あそこに見えるのは、例のコンビ、エンタとイエンだ。
『よう! アミーゴ。元気にしているかい?』
『新入りで、遅飯とは恐れ入った。だが、安心しな。我らが付いている!』
朝から元気一杯で、マラカスでも持っていそうな連中だ。先輩風を吹かしているけど、これじゃあ、逆に尊敬することができないよ。
うん。同じ従魔候補の首飾りをしているんだ。遅飯に関しては、それこそ、50歩100歩だよね。
交互にハグをする。
これが、彼らの挨拶の流儀らしい。
最初は、戸惑ったよ。これ。
次第に慣れて、今は自然に挨拶をしているけどね。
『さあ。食堂に行こうじゃないか! 可愛い女子たちが待っている』
そう言って、エンタが息巻いている。
そう。ここでは、寝室でもある自室は、雌雄で分離がされている。やっぱり、こういうのが居るからね。ことが起こる可能性を排除しているのだろう。
だけど、彼のは口先だけの可能性もある。
だって、こちらの半分くらいの背丈しかない小さな身体で、可愛い系のエンタは、珍しい魔アルマジロ科。同じ科目の魔動物を、ここで見かけたことがない。
だけど、彼はリザドリアンの村で育ったそうな。そう。イエンと同じ村。リザドリアン属亀種の村だ。
エンタ自身が、魔哺乳類綱だという認識をしていないかもしれない。
一方のイエンは、亀カッパという見た目。だけど、ひょろりとした背高のっぽ。
彼は、丸っこくて小さいエンタと、いつも一緒に居る。
この賑やかな、でこぼこコンビの2体と同行をして、食堂へと向かう。
そう。従魔食堂、ジャルディーノ・デ・ファミリア。家族の庭。
その食堂の両開きの扉が開いている。
扉の外から、中を覗いてみる。
……ミランダさんが居ない。
あーあ。今日も保存食か。
『何を、がっかりしている? 見よ、この麗しき女子たちを』
直立をして胸を張り、食堂の奥へと小さな手で指さす、栗鼠耳アルマジロ。
さらに、その足元を見ると、格好をつけているつもりなのだろう、踵を直角に付けている。そして、小動物にありがちな、くりっとした目をきらきらと輝かして、栗鼠のようなふさふさの毛の尾が、嬉し気に揺れる。
君は、日本の女の子たちに、モテるかもね。うん。マスコットとして。
でもね。エンタ。
君の審美眼に、とやかく言うつもりはない。
だけど、彼女たちは、こちらの好みではないよ。
皆、リアル系の魔動物なんだから。
亀とアルマジロ。メキシコのことわざで、その意味があるらしい。




