4-02 顔見せ
サブタイトル変更しました。
この世界での、初めてのお仕事。
従魔候補の仕事は、基本的に従魔の仕事と変わらない。
人間の仕事を補助すること。
直接的な仕事だけではなく、間接的な仕事も含まれる。
昔は、主人である契約者以外は、従魔に指示をするのが困難だったとのこと。
それで、戦闘能力のあるものは、契約者の護衛をするついでに、他のメンバーを守る。平時は、物を押したり引いたりする、それこそ牛馬と同じような、単純な力仕事に就いていた。
そして、そうでないものは、検め事で処分されるか、契約者の下で、それなりに役に立つ、ただ居るだけの癒し専門になるのが、主だったとか。
今は、科レベルの魔動物の種類さえ判れば、大抵の場合、それに対応する銀の粒があるという。
その銀の粒で、魔動物の言語を人間語に変換して、契約者以外の人間が、従魔となった魔動物の意思を、それなりに理解をすることができる。最近では、種類は少ないが、逆方向に変換できる銀の粒もあるという。
それで、今は契約者の同意の下、多種多様な仕事を請け負っているとのこと。
特にヒト型魔動物の場合、ほとんどの魔動物が人間語を理解することができる。それで、ごく普通に、契約者の下を離れて、他の人間の仕事の手伝いをすることが多いと、ゴンザ氏が教えてくれた。
んー。
今。ある意味、暇。
こちらの初仕事。
それは……ただ、突っ立っているだけ。
顔見せということで、アイラちゃんと一緒に、受付の横に居ることになった。
そう。昨日、ゴンザ氏から言われた、その顔見せ。
昨日聞いた時は、てっきり、居住施設の仲間たちに、こちらを紹介してくれることだとばかり思っていた。
今日の朝。こちらが寝ている部屋に、いきなり、ごつい人間の男性が現れた。
そのごつい人間は、カークとは別の、全く知らない男だ。
そして、その男に無理やり起こされて、着替えさせられて、引き手に繋がれて、ここに連れてこられた。
あれは、何なんだよ。もう。
従魔候補にも、従魔保護法が適用されるんじゃなかったの? んー。そういうのって、どうしても解釈の範囲が、人それぞれになるのかな。それに、それほど手ひどくされた訳でもないので、範囲内なんだろうね。これ。
でも、くさくさする。
ん。あ。気持ちが顔に出ると良くない。気分を変えよう。
アイラちゃんを眺める。
検め事前の不安な時に出会った、雌性のリザドリアン。マスコット系の従順種。
アイラちゃんは、ほんとに人気がある。出会う人間や知的魔動物たちは、皆手を振ったり、応援の声掛けをしたりしている。
こちらは、魔動物の科種を問わず、全ての言語が理解できるとのこと。ルークの自動意訳だ。実際に、アイラちゃんに声掛けをしている、様々な知的魔動物の言葉が解る。だけど、こちらの澄んだ鳴き声は変換できないというか、しないという。ルークは、気持ちの問題だと言っていたけど。
ここまで一緒に来てくれた、従魔長のゴンザ氏も、彼女にぞっこんのようだ。
オメエは近くに居るからって、アイラに手をかけるなよと、くぎを刺された。はい。しませんとも……たぶん。
彼女は何か、妙に引き付けるものがある。そう。魅力があるのは、確かだ。
それにしても、なあ。
こちらは、人間たちに、数奇な目で見られている。
何故か、状況を知っているはずの職員の人間たちからも。
んー。これも、解らないでもない。
この施設の従魔は、ヒト型魔動物のみで、ヒト化魔動物はいない。
こちらは、擬態魔動物ということになっているけど、見た目の姿が人間に近いのは、変わらない。
そう。ぱっと見て、人間に見える姿の生き物が、派手な従魔候補の首飾りをして突っ立っているのだから、奇異に見えるし、何かの間違いだと思うだろう。
ゴンザ氏は、体表の鱗が良く見えるように、上半身は裸で居るかと、提案をしてくれた。
だけど、それは全力で否定した。上半身の鱗を見せるのは、構わない。だけど、鎖付きの保定魔道具が填まった姿を晒すなんて、真っ平御免だ。
こちらのポンチョの端っこを掴んだゴンザ氏が、オメエ、女子みたいに、そこまで嫌がらんでもと言うが、嫌なものは、嫌なんだ。これは譲れない。
なので、いつものポンチョとステテコの出で立ちで、アイラちゃんと並んで、受付の横に立っている。
笑顔を絶やさないようにと努力をしている。久々の営業スマイルだよ。まさか、ここで、こうなって、これをするとは思わなかった。
苦手なんだよなぁ。これ。だから、こちらは技術職を選んだんだよ。それでも、営業に回されたことがあって、辟易したことがある。
ふう。それにしても、この奇異なものに向ける視線は、参ってしまう。
それを解消するための、顔見せというのは、理解をしているけど。
理性と感情とは別物だよ。こちらのメンタルタフも、こういうことには発揮をしてくれない。
うーん。何度か休憩を挟んでいるとはいえ、いつまで持つだろうか。泣きたくなる位、ストレスフルだ。
そのような日が、数日続いた。
その日の顔見せが終わったら、自分に割り当てられた部屋でのべーとだらけた。
何もしないで、ただ突っ立っているだけの仕事。だけど、それだけに、精神力のかなりを持っていかれた。
そんなある日、ゴンザ氏が気を使って、魔プラムをてんこ盛りにして部屋まで持って来てくれた。
その時は、彼が天使に見えた。良い上司に当たったよね。
早速魔プラムを頬張る。旨い。
ゴンザ氏は、おやっさんの言う通りだな。オメエは単純で助かるとか言っていたけど、気にしない。
魔プラムは旨い。それでいい。
澄んだ鳴き声が、喉から嬉し気に迸っていた。
それだけ。だけど、それだけにしんどい。
そういうのって、ありますよね。
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