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2-13 魔珊瑚草(まさんごそう)

ある意味、食バトル(?)

第一ラウンドは、やはり、取っ組みやすそうに見えた植物系です。


 本日の夕飯。


 その中で、唯一ゆいいつの無難系。


 ピンポン玉大の、丸くてつるりとした草の実のようなもの。


 その丸い果実はプチトマトに近い。だけど、その外観は、5片の網目状の大きながくが、その丸い実をふっくらと包んでいる。その大きな萼をいて手に持てば、その実を簡単に口にできそうだ。


 物産展とかで試食をした、食用ほおずきを思い起こす。それは、ねっとりとした甘い果実で、意外に旨かったという記憶がある。


 よし、決めた。この実を最初に食べよう。


 網目状の透けた萼から見える中の実を見る。赤、青、黄、白、黒、カラフルだな。その中の実の色以外は、どれも同じような外観。これはプチトマトと同じで、すべて同じ味なのだろう。


 それで、適当に手前側にあるものを手に取り、萼を先のとがっている方から剥いてみる。それは、呆気ないほど簡単に5片にけた。その中にあった実が湯気立っていたので、しばらく冷めるまで待った。


 湯気がなくなったから、もう冷めただろうと、その実を口に含んでかじる。


「キュグルルルル! グルッガッ、グルッガッ」熱い。辛い。き込む。


 その少し黄色がかった赤い実を、んで潰した途端、熱辛いと言う不思議な感覚の辛さが舌を襲った。辛い唐辛子を食べた時のような、時間をおいてから来る痛辛さではない。あり得ない程すぐに、焼け付くような辛さが襲って来た。


 この実は、火そのものではないかと思う程、ちりちりとした熱を持つ。それと同時に、ねっとりとして、しつこい辛さが、口腔内を乱暴に暴れ回る。これを、食用ほおずきのような、甘い果実だと思って食べたから、たまったものではない。


 そんな、大騒ぎを起こした口腔内だったが、意外なことに、この苛烈かれつな熱辛さによる実質的なダメージを受けていないようだ。その証拠に、まろやかな酸味を伴う深い旨味を、しっかりと後味に感じている。


 だけど、今度は胃の中が、燃えるように熱く感じる。ん-。この実は食べ物として食べられなくはないが、苦手だ。


 それを見て、カークが呆れたような顔をして言った。


「何だ。魔珊瑚草まさんごそうを知らんのか。お前、水土系だろ。初っぱなから、緋色の火の実をわざわざ食わんでもいいだろうに。火トカゲを真似て火球でも吐くつもりか。ほれ、その瑠璃色の水の実か、あの黄蘗色きはだいろの土の実を食ってみろ」


 カークが他の色を勧める。この実は色で味が変わるのか。


 それにしても、“緋色の火の実”で火球ね。へえ。よくあるファイアーボールのイメージが脳裏に浮かんだ。おお、これぞファンタジー! すごく憧れるね。


 でも、この実を食べ続けたら火球が吐ける保証はない。それ以前に、この熱辛い苛烈な実は、そうそう続けて食べる気になれない。


 それで、勧められた深い青色をした“瑠璃色の水の実”を手に取り、萼をむしって、口に含んで齧る。


 お。これはいいね。涼やかなミントのような味だ。この涼やかさは、冷たくさえ感じる。そして、まだ舌に残っていた、先程の辛みが和らいで消えていく。最後に、すーとした爽やかさを伴う深い旨味が舌に広がった。


「キュルウルル」と喉から自然と声が出る。好きだな、この味。いくらでもいけそうだ。2個連続してその瑠璃色の実を齧った。


 次に、明るい黄色の“黄蘗色の土の実”を口に含み齧る。この実の味は、魔プラムや魔木苺に似るが、全く酸味がなく単純に甘い。これの後味は、お馴染みの甘味を伴う深い旨味だ。


 んー。旨いが、物足りない。この黄蘗色の実は今一つだな。これなら、魔プラムや魔木苺の方が断然旨い。


 ついでだ。白色と黒色の実もいってみよう。


 まずは白色の実から。純白ではない。少しくすんだ黄色が入った白色の実だ。手に取って口に含み、その実を歯に当てて齧る。すると、実がぷしゅーと弾け、強炭酸水を飲んだ時のような感じで口腔内をぷちぷちと弾けていった。その後味はとても透明感のある深い旨味だった。


 これは面白い。その白い実を2個同時に齧って、両頬でぷしゅー、ぷしゅーと弾ける感覚を楽しんだ。ギンギンに冷やしたこの実を風呂上がりにぷしゅーっと齧ったら、さぞかし旨いだろう。


 最後に黒い実。これも漆黒と言う訳ではない。こげ茶色を更に濃くしたような色の実だ。口に含み齧る。カカオに似た香りとブランデーのような芳醇で甘い香りが口腔内に広がった。


 ふーと鼻で息を吐き出すと、その良い香りが鼻腔内にも広がり夢心地になる。舌触りも滑らかでとろけてしまうような感じで大変良い。後味は上品な苦味を伴う深い旨味だ。これは大人の味だな。


 この黒い実は良質なボンボン ショコラのガナッシュのようだ。癖になりそう。気が付けば、ご機嫌な小鳥のさえずりのような鳴き声が、喉からほとばしっていた。


 実際、そんな感じの気分だ。そのとろけるような感覚と甘い独特な香りを求めて、この黒い実をさらに2個、いとおしく齧る。それこそ、この実はブランデーかウインスキーなどと共に、食後にゆるりと食べてみたい。


 ふと気が付くと、カークが興味深そうに覗き込んでいた。


「ほう。瑠璃色の水の実を好むのは予想通りだが、白牙はくげ色の風の実と、玄色の時の実も好むか。黄蘗色の土の実がそれ程でもないのは意外だな。お前は緋色の火の実以外はいける口のようだな。他はどうだ。食わんのか」


 そうだね。そろそろ、覚悟を決めないといけないかな。



直人君は、これでも必死です……よね。

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