表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/155

2-04 アイラ

雌性リザドリアン。その名はアイラ。さて、どんな子でしょう。


サブタイトルを戻しました。

本文も少し修正をしています。

 カークが、扉に向かって大声で呼ぶ。


「おい。アイラ。もう、いいぞ。こっちに来い」


 静かに扉が開く。からからと、でかいワゴンが入ってくる。


 お。ワゴンで来るのか。いいね。メイド姿のかわい子ちゃんを想像した。


 ワゴンが部屋に入り切ると、彼女は静かに扉を閉めたようだ。


 うん。おしとやかだね。


 小柄だからだろう、でかいワゴンで彼女の姿が隠れている。カークのでかい図体ずうたいも、もちろん、こちらの視線をじゃましている。彼女をよく見ようとしても、見ることができない。じれったい。


 ようやく見えて来た、彼女の姿。ワゴンをはこんで来た子は……。


 ん? ん。うーん。可愛いかな? 見ようによっては。


 くりっとした目で、おっとりぽっちゃりしていて。


 期待が膨らんでいただけに、がっかりしたと言うか、何て言うか。変に期待をしていた、こちらが悪いのだろう。たぶん。


 ワゴンを運んで来た、アイラと呼ばれた子。彼女は、ひらひらの可愛い服を着た、二足歩行のトカゲだった。


 他には、どう言えばいいだろうか。あまりデフォルメされていない、トカゲ系のゆるキャラという表現が近いかもしれない。爬虫類系が苦手だったら、難しいだろうなと思うくらいの、リアルさ加減だ。


 それでも、見方を変えれば、彼女は可愛いと思う。


 体表は、パステルカラーの青とピンクという、よくある可愛い系色の鱗でおおわれていている。冠羽かんうのように後ろに突き出た、五つの鱗状の先の丸いつのがキュートなアクセント。鼻腔が整ったくちばし状の口の先に品よく並んでいる。口角も嬉しそうに微笑んでいるようで好感が持てる。


 彼女の大きな目は、特にチャーミングだ。その目全体に広がる、透き通った黄緑色の虹彩を縦に切る黒い瞳は、よく見れば……何故だか、とても可愛いと思える。それに、全体的に、おっとりぽっちゃりとしていて、庇護欲を誘う。


 爬虫類系は嫌いではない。だけど、そのような趣味はない……はずだ。


 カークがこちらの反応を見て、にやにやとしながら、その子を紹介した。


「どうだ? 彼女は、当施設の人気アイドルだぞ。受付でマスコットガールをしている。雌性のリザイア目リザドリスク科リザドリアン属オペディエンティアティ種のアイラだ」


 へえ。マスコットガールね。なるほど。確かに彼女は、ゆるキャラ系の可愛いさがあるから、それはうなずける。人気かどうかは知らないけれど。


「リザイア目のヒト型魔動物とは、押しなべて彼女のような体形だ。だが、彼女はマスコット系でな、標準とは少々異なる」


 カークがアイラに、まるで父親のように優しく話しかける。


「アイラ。そいつは選定前でな。まだ仮の名だが、‘愉快な古トカゲ’だ。挨拶をしなさい」


 アイラと呼ばれた子は、カークを見て頷いた。そして、こちらに向かい、物語に出てくる、上品な淑女しゅくじょのように、ちょこんと服の端を器用につまんで片足を下げて、軽く頭を下げて礼をしてくれた。


 こちらも、つられて立ち上がり、西洋騎士の略式礼みたいなことをして返した。


 こちらのは、たぶん間違っているだろうし、ぎこちないものだっただろう。本やネットなどで知った、記憶の片隅にある知識だけなのだから。


 カークは、でかいワゴンの片隅に手を置き、顔をほころばせた。


「ははは。これは愉快。良い兆しだ。さ。朝飯だ。囲んで食おうじゃないか」


 何か、手伝わないといけないかなと、近づこうとすると、例の‘座れ’で座らせられてしまった。何故か、アイラもちんと座っている。


 カークは、アイラが運んで来た大きなワゴンから、縄文土器? 日本の博物館にあるような、大振りでアートな素焼きの深鉢を一つ、木製の台座ごと持ち上げて、石の床に置いた。続いて、その鉢を囲むように、壺を逆さにしたような、素焼きの台を三つ並べた。


 その作業が終わると、彼はこちら側に向き、中央に置いた素焼きの深鉢を、手でかざすようにして示した。


「この中に、米と言う雑穀を蒸した物が入っている。今回は、俺も一緒に食うからな、メインの食材で魔素強度量が高いものは抜かせてもらった。だから、お前らはメシの友として、これを食え」


 カークはワゴンの引き出しから、皮袋のようなものを、大事そうに取り出した。そして、その中身を素焼きの小皿に入れると、こちらに差し出した。それは、様々な淡い色が付いた、金平糖のようなものだった。


「ほれ、魔塩ましおだ。正確には、塩を好む微魔生物の集合体が自然に干し固まったものだな。これは魔プラムよりも、魔素強度量の桁が一つ高い。流石に、これを口にする人間はおらん。陸生の複対肢ふくついし魔動物が、特に好む食い物だ。お前も好む味だと思うぞ、‘古トカゲ’。俺は食えんから、味は知らん」


 渡された魔塩を見る。どう見ても、淡い色のついた小ぶりの金平糖だ。この色の違いは何だろう。色違いを手のひらに2、3個取り、ころころとさせてみた。


「うむ。色が気になるか? この色はな、魔微生物の体内で析出せきしゅつした塩の結晶が、含有する高濃度の魔素粒子のせいで、ちょいとばかり構造変化した結果だといわれている。ごく小さな変化だ。日に当てると退色たいしょくするのでな、この袋で遮光しゃこうしてある。ま。要するに色は目の楽しみだけだな。こいつは、魔力の種類がどうのというものではない」


 へえ。何か、自然にある放射線の影響で、結晶構造にわずかな不整が出来て、色が変わったという岩塩があると聞いたことがある。これと同じかな。


 後、わらびのようなものが入った、お澄ましのようなものを木の椀に、イワナのような魚の干物を焼いたもの、チーズの燻製のような物、ナッツを散らした菜花のお浸しのようなものを木の皿に盛って出してきた。


 これは意外。微妙に違うけれど、かなり日本的な食べ物だよ。


 ここの雰囲気は、ファンタジー世界によくある、古い時代のヨーロッパって感じだけどね。それに、カークは、ドイツ系西洋人という、原型的なバタ臭い顔だ。


 改めて見ると、彼の青い虹彩の中の瞳は丸くて黒いね。うん。人間の瞳をしている。ん? それがうらやましいと思っている自分がいる? 変なの。夢の中なのに。


 そのバタ臭い、筋骨隆々とした魔法使いが、細々とした日本式の配膳をしている。違和感ありまくりだけど、彼はとても楽しそうだ。


 これも、こちらの想像の産物だというのだったら、それまでだけど。


 まあ。いいや。今を楽しもう。


 どんな気分でいても、時は流れる。


 それなら、断然、良い気分でいたほうがいいね。



普通の可愛い子を予想していた方、ごめんなさい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ