1-11 厠騒動
この話は短いです。
その後、食べるものを食べたら、出るものがあるだろうとのことで、トイレのしつけをされてしまった。
あー。この夢はどこまで、自尊心を蹂躙するのか。
褒められてもね。何だかね。へこみましたよ。
うー。別に、いいけど。
えい。ほんと。もういいや。過ぎたことを、ぐだぐだと嘆くこともない!
使い方が不明なトイレだったのは、認めざるを得ないし。
と言うのは……。
カークが奥の壁を短杖で軽く突いたら、壁の中からトイレが出てきた。
そのトイレは、一見、古風なデザインの洋式トイレだった。
しかし、その実態は、異様に先進式なトイレだ。
何でも、ナーガラ帝国という所で開発された、魔素感応式魔道具だそうだ。身体の状態に反応して、自動的に洗浄、乾燥、内容物の吸引までをする優れもの。
この施設に試験的に導入した自慢の逸品だと、カークが得意げに話していた。
で。その内容。
魔素感応式とは、魔素流、魔素の流れを読み取り、それに対応する組み込み魔法が発動される仕組みのことを指すらしい。
このトイレは、魔動物用に調整はされている。だけど、もともと、人間用に開発され、人間から得た魔素流のサンプルのデータを基にして開発された。そのため、魔動物では組み込み魔法の発動が安定していないとか。
開発元のナーガラ帝国では、従魔の居住性向上のため、魔動物用のトイレを完成させようとしている。
だけど、その国は、所定の場所で排泄を行う概念がある、社会性魔動物種の個体数が極端に少ない。それで、魔動物の魔素流サンプルがほとんど取れていないとのこと。
そこで、社会性魔動物である、ヒト型魔動物種の従魔個体数が揃っている当施設で、サンプルデータ取りを行っていると、カークが滔々と話していたのを聞いた。
何これと思った。
まあ。これに関連する記憶の断片に、心当たりはある。テレビか何かで見た開発プロジェクト物の影響だろうね。これ。
うん。ご多分に洩れず、大変な目に遭いました。泣きそうになる程。
その時カークが言うには、人間用のサンプルデータの収集は、開発グループの人間の有志だったとか。
夢の中の話だとしても、よくやるよと思ったよ。ほんと。
設定が無事終了したら、カークはとても機嫌が良い様子で、厚手の紙に何やら色々と書き込んでいた。そして、こちらの頭をくしゃくしゃに撫ぜた。
それで、冒頭の感想となる。
ばっちい話のついでに、内容物の確認をしようと思ったが、速やかに吸引されてしまった。それで、どう言う内容物だったのかは不明のまま。
これは、イメージの限界なのだろう。
こんな所は、やはり夢の中だなと感じた。
だけど、こんなヘンテコな夢を見続ける自分って、何?
データの収集って、どんなものでも大変ですよね。




