表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/155

1-10 魔法使いの名前

魔法使いの名前が明かされます。

「ははは。愉快だな、お前。食わんのかと思えば、結局全種類手に付けたか。食ったら食ったで百面相をしていやがる。それこそ、‘愉快な古トカゲ’だな。伝承にもあるぞ」


 百面相で悪かったな。とう言うか、そんな顔していた? 伝承のそいつは、どんな思いをして食べたのかな。親近感を抱くね。


 夕暮れ時なのだろう。室内が穏やかに朱色に染まっていく。


 こちらは、手元に寄せた木の器から魔プラムを再び取り出して食べ、舌鼓を打っていたりしていた。


 そんな感じの、何となく和んだ空気の中。魔法使いの男は、どしりと向かい合わせに座った。


「なぁ、‘愉快な古トカゲ’。お前とまだ、正式に契約をしとらん。だが、構わんだろ。俺の名を名乗ろう。俺は魔動物召喚魔術師主任のカークと言う。よろしくな」


 カークと名乗る男は、こちらに親しげに話しかけて来た。


 こちらも、つられて会釈をした。


 餌付けに成功したって思っているのかな。否定はしない。出された食べ物は、全て旨かった。特に魔プラムは、お気に入りだ。


 それに、こちらは‘愉快な古トカゲ’という魔物、あちらは魔法使い。それが、この夢の中の設定だ。だから、何も気にしていない。


 先程から、現実かもしれないという思いが湧いてはいる。なので、これが夢の中であるという前提が崩れ始めているけれど。


 カークと名乗る男は言葉を続ける。


「ま。この名も魔術師にありがちなあざなだけどな。この町から少し出たところの森にある古代遺跡の伝説から取ったものだ」


 うん。実名が呪いなどに使われてしまうから、名乗るのを避けるとか。


「その遺跡はな、古代初期文明の後期、今から5,000年以上前に滅んだ国の建造物だとされている。ま。あの遺跡には曰くつきの噂話も色々と多いけどな。その中でも、ある日突然、住民が忽然と消えたという話が有名でよ」


 ふーん。よくありそうな話だね。


「その伝説の物語に、俺が気に入った凄腕の時空魔術師がいるのだ。それで、その魔術師の名を俺の字に取り入れた訳よ」


 へえ、凄腕の時空魔術師ね。確かに格好いいな。


「何だ? その顔は。お前は、その物語を知っているのか? いや、その場に居たりしてよ。ははは」


 そんなの、知るはずもないよ。だけど、5,000年以上前と言う途方もない昔か。ロマンがあって面白そうだね。うん。やっぱり、ここは夢の中だ。


「でよ。お前と正式に契約をする前に、あらため事を通さなきゃならん。だが、ちと問題含みでな」


 検め事? あ。魔法陣のある部屋で、規定がどうのとか。あの時、こちらが頑張らなきゃいけないようなことを言っていた。何を頑張るのかは、皆目見当が付かないけれど。


「問題は、擬態だとはいえ、お前は余りにも人間に近い姿をしている。従魔として使役するのに支障が出ないかということだ」


 まあ。確かに。自ら言うのも何だけど、これじゃあ、よくある小説やゲームの召喚魔物のような強さは、とてもじゃないけど、ありそうもない。カークは強そうだから、彼を守るどころか、むしろ足手まといになりそう。


「だが、お前の属する、リザドリスク科の擬態魔動物であるミネティティ属は、希少種でな。俺も、魔動物学の魔爬虫類綱全書マギアレプティリアテキストでしか、その存在を知らん。その内容も死体での説明でしかない。生きた個体の生態や行動様式が不明なのだ。とても興味深い」


 あ。珍しいということね。だったら、こちらにも存在意義があるのかな。


「幸か不幸か、鑑定系魔道具が点検中でな。お前の真の種族名が確定出来ん。今の所、外見と偶に鳴く鳴き声で類推するしかない」


 そうか。じゃあ、その鑑定系魔道具の精度がどんなのか知らないけれど、中身が異世界の人間だと知ったら、珍しいを超えてびっくりするだろうね。たぶん。


 この夢のリアルティなら、あり得るよね。そういうシチュエーション。


 でも、こちらから伝える手段がなさそうだから、どうしょうもないけど。


 カークはふと、何かを思い出したような顔をする。


「そういえば、半刻程前に切ない鳴き声を響かせていたな。どうした?」


 あ。え。あの歌、聞こえていたの? うー。あの歌の内容は恥ずかし過ぎる。夢の中でも、内容が知られていないという設定であって欲しい。さすがに悶えるぞ。


「ふん。そうか。俺が野郎で悪かったな」


 これは、まだ大丈夫だ。うん。そのまま、あの歌の内容が知られていないことを願いたい。あれじゃあ、青少年時代の黒歴史だよ。


「ふむ。そうだな。明日には雌性のリザドリアンを連れて来るか。それから、あいつらの作る“米”と言う雑穀もなかなか旨いぞ。ま。楽しみにしておけ」


 うーん。分かんないな。そりゃ、そうか。意味は同じだもんね。


 雌性のリザドリアンか。“米”って“ドリア”だから、なんてね。


 雌性と言う表現に何か引っかかるが、こちらがトカゲだからか。


 そういえば、リザイアがトカゲの一種っぽかったような。じゃあ、リザドリアンもトカゲの一種?


 だけど、楽しみと言うからには、女性と捉えていいのかな?


 うん。気になるね。でも、明日とか言っていたから、この夢から覚めているはずだよね。


 ほんと、覚めて欲しいよ。



主人公は、疑いつつも、まだ夢の中だと信じたいと思っているようです。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ