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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第6章 草原と森の入り口
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6-20 嘘か実か

泉のある岩場に戻り、寛いでいます。

 泉がある岩場。


 今は、ここでゆっくりとくつろいでいる。


 採集した食材を詰めた袋の山を前に、皆で馬車の到着を待っているんだ。


 この間、ジュライさんは、皆が集めた食材の種類や状態とかの確認をしている。


 こればかりは、彼女でなければできないこと。これは、彼女自身がそのように言っていた。なので、これを手伝うことはできない。


 そしてこちらの横にいるゴトラン氏を見ると、ぐてんぐてんに酔っぱらっていたのが嘘だったかのように、しゃっきりとしていて正気を取り戻している。幸いにも、木魔天蓼もくまてんりょうの実で酩酊めいていをする時間は、かなり短いらしい。


 普段の調子に戻っている、ゴトラン氏。その本人が言うには、この実は、入手困難で貴重なもの。そしてこれはフェリスアン属種限定で、一時的な深い酔いを伴う強力な精神安定効果があるんだとか。


 彼は一通り説明をし終えると『俺の言葉は解らんだろうけどな』と言って、豹のような頭で、相も変わらずかかかと笑っている。


 そういえば、今回の野外訓練でこちらを含む従魔候補を導き守ってくれている、森林魔猫科マギ・フェリス・シルヴェトリスのフェリスアン属種の正式な従魔たち。


 この豹頭のゴトラン氏の他に、茶色一色で目のでかいピューマのようなガトラン氏、ゴトラン氏が黒くなっただけとも言えるような黒豹頭のグトラン氏、その頭も体躯も一番でかいジャガーのような頭のゲトラン氏がいる。


 それと一度町に戻って、またここに向かって来ているはずの虎頭のギトラン氏。計5体。すべてジュライさんの従魔。


 彼らと、リザドリアン属羽毛種(ペンナティ)である、パラ先輩とオルト先輩。野生では捕食、被捕食者というシビアな関係。それで最初は怖がっていた先輩たち。


 それが今では、2体とも信頼しきった顔でフェリスアン属種である黒豹頭のグトラン氏に寄り添って座っている。あちらも会話が成立していないようだけど、今回の訓練の過程で仲良くなったようだ。


 魔アルマジロ科マギア・ダシュポディダエのエンタ先輩は、相棒であるリザドリアン属亀種(テストゥードーティ)のイエン先輩と、コントのようなことをやり合っている。これら2体の先輩は、いつもこんな調子。


 言葉は解らずとも、その動作そのものが可笑しいのだろう。彼らのそれを見て、げらげらと笑っている、ピューマ頭のガトラン氏とジャガー頭のゲトラン氏。


 へえ。何か面白そうだ。


 こちらも、エンタ先輩らの話に耳を傾けてみることにした。


『で、だ。それで俺はこうやって、爪切断ネイルカッターでな、スパッと切り裂いてやった訳だ。それで奴は驚いてのけ反った。俺は、その隙をついて奴に飛びついてさらに攻撃を加えたのだ』


 エンタ先輩の声。自らの言葉に興奮をしているのか、栗鼠りす耳アルマジロの可愛い顔が朱色に火照っている。


 そうか。いつもの武勇伝か。


 でもまあ、今は暇だし、適当に聞いておこう。


『そりゃあ、すげーな。だけど、一体そいつは、何だっんだい? オラその話はしらねえよ』


 そしていつものように、そのひょろ長い身体を効果的に使って、表現過剰ぎみなおどけた驚きのリアクションをする、イエン先輩。


 ん。あれ? これは珍しいな。イエン先輩が知らない話なのか。


『アミーゴ。何忘れてるんだよ。あいつだよ、あいつ。この前の野外訓練の時に、この森でかち合っただろ。古野人サヴェージアンに!』


 エンタ先輩は、栗鼠のような耳を後ろに倒して、少し、怒ったようなあせったような声で返す。


 え。古野人サヴェージアン? その存在は、伝説でしか確認がとれていないとか聞いたような気がするけど。


 対して、真面目な顔になり、強く窘めるように、小さなエンタ先輩を上から見据える、のっぽなイエン先輩。


 先程のおどけるような仕草は、どこへやらかに消えていた。


 そしてその表情は、結構怖い。


『アミーゴ。そりゃあ、いくら何でも大風呂敷だんね。大昔はいたんだろうけど、今はここいらに居る訳ねえ。話が面白くてもそんな嘘はだんめだ。これの本当は、ちょいとでっけえ魔真猿ままざるだっろ?』


 そして、今にも泣きだしそうな、情けない顔になる、栗鼠耳アルマジロ。


『本当にあの恐ろしい古野人サヴェージアンを見て、見つかって、戦った。そりゃ最後は逃げたけどさ。その時も一緒に命からがら逃げたじゃないか。どうしちまったんだい、イエン?』


 いつもの相棒は、その言葉に反応をして、その怒りの形相を緩めて、心配そうにエンタ先輩を見ている。


『どうもこうもねえ。アミーゴ。おめえこそ、どうしちまった? 熱でも出てるかいね? ほれ、おでこを見せてけんろ』


 素直に額を差し出す、エンタ先輩。そしてそれを普通に受け止め、その手を彼の額に当てている、イエン先輩。


『平熱だんね。作り話も面白いけんど、長い付き合いだ。オラはこういうのは好きじゃないのは知っちょるよな、アミーゴ。こういう話を続けるというなんら、この友情も終わると思ってくんろ』


『ああ。何をいうのか。イエン。俺を見捨ててくれるな。俺は、お前と共にいるのが楽しい。……いいだろう。この話はこれで終わりだ』


 そういったやりとりがあった。その後、話を切り替えて再び楽しくおかしく話を進めていく2体の先輩たち。


 ほんと。とても賑やかで、ラテンな雰囲気。これは癒される。


 そんなこんなで、残りの時間を和やかに潰していた。


 いると草原の方から、馬のいななきが響く。そして、ガタゴトという音がして来た。その音がする方に注目すると、馬車が近づいて来ているのが見える。


 その馬車は、どんどんと大きくなっていく。そして到着した。


 その馬車のでかい車両に荷物である食材の袋を詰め込んでいく。


 もちろん、今回はこちらもその運び入れの中に入っている。


 何か、かさばっていて軽いものばかりを渡されるけどね。


 滞りなく食材の袋がすべて馬車の中に入った。


「そろそろ出発するぞ。皆中へ入れ」


 ジュライさんの良く通る、独特な低い声。


 あ。町に帰るんだ。


 あの走魔牛そうまうしの一件以来、何事もなくて良かったよ。


 そうして、ほっとして森の奥のほうを眺めていた時。


 ガサリ。


 ん?


 あれ?


 一瞬、暗い森の陰から、銀色の柳の葉のような細長いものがキラリと光ったような気がした。


 もう一度、その光ったような場所に注目をして、目を凝らして見てみた。


 だけど、そこには、何もない。不思議に思って、他を見渡しても何もなかった。他の皆も何事もなく、馬車へと足を運んでいる。


 これは、気のせいだったのかな。


 皆と共に馬車へと急ぎ、乗り込んだ。


◇野外訓練の話は今話で終わりです。次話から章が変わります。


ここに読みに来てくれてありがとうごさいます。とても嬉しいです。

これからもよろしくです。*^^*

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