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幻想日誌:魔動物として召喚された男の物語  作者: 森野昴
第6章 草原と森の入り口
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6-17 森の恵み

な、なんとか、この日(3/20)の内に更新が間に合ったです。

これはただ単なる自分的な話なのですが。


 魔山桃まやまもも


 少し黒味がかった赤色のつぶつぶのある丸い実。


 それを口に放り込んだら、ぷにぷにした感触が口腔内に優しく当たる。甘い香りが立ち込めて、それが鼻腔内部をくすぐる。


 最初に気になっていた、魔山桃の実に生えていた白くて長い毛。これは、どうという問題もない。口に入れた途端に、トロリと溶けてしまった。そしてそれには、味はない。ただ、べたりとした粘り気が口腔内に残っただけ。


 その柔らかいぶつぶつがある丸い実を舌で転がして遊んでみた。この実は、結構な弾性がありクニクニとしていて楽しい。


 最後に、その実をぷつりと舌で潰してみる。


「グルワッ、クァ!」うぁ、痛い! 冷たい?


 思わず声が出る。


『ひゃははは。どうだ、びっくりしたか?』


 エンタ先輩が、してやったり、というような顔をして笑う。


 うん。それはもう予想外だったよ。声まででたからね。そう。この実の中から、氷のように冷たくてドロリしたゼリー状の液体がでて来たんだ。


『旨いのは、本当だろ』


 そうだね。甘酸っぱくて旨いよ。そしてこれは、舌が少し痺れるような感じなのだけど、あの独特な深い旨味もある。


 エンタ先輩は、まだ口元は笑ってはいる。だけど真面目な顔になって言う。


『アミーゴ、ラケルタ。マジでお前は、何も知らないのだな。このいたずらをした本人が言うのも変だが、少しは警戒をしろよ』


 え。あ。うん。はい。


 説教をされてしまった。


 そうはいっても、栗鼠りす耳アルマジロの、栗鼠のような可愛い顔で言われてもね。その顔をしかめた表情には、凄みなんてまるで感じられない。


『この魔山桃の実はな。数粒くらいを食うのなら、どうっていうことはない。ただ単に、凄く冷たく感じるだけだ。だけど旨いからって、たくさん食うなよ? 俺ら魔動物は、身体が痺れて固まっちまう』


 え。そんな怖いものだったの?


『なーに。アミーゴ。心配するな。痺れても一時的なものだ。すぐに回復する』


 こちらの表情がかなり曇っていたのだろう。彼は、顰めた表情を緩めて、慌てたようにして言う。


 だけど、エンタ先輩も意外と博識だったりするんだね。見直したよ。


『といっても、それの原理だなんて、そんな難しいことは、俺も知らないけどな。俺らのおやっさんが言うには、魔動物の筋肉が動く元となるものが、この魔山桃の実の何かと入れ替わるらしいんだ』


 あ。なるほどね。情報源はこちらと同じでカークからなんだ。


 へえ。これって魔素粒子の担体のことかな。何か、細胞内でのエネルギーの元となるとか。あのルークだったら一晩中語っても尽きない話題だろうね。でもそんな難しい話は、遠慮をしとくよ。


『これだって採取対象なんだぞ』


 あれ。これって、落下した先輩の上にたまたま落ちて来たものじゃなかった?


『もちろん食い物としてではないけどな。何かと合わせて、不動化させる鎮静薬というものができるらしい』


 得意げに語るエンタ先輩。えっへんと小さな胸を反らしている。


 彼のこの可愛らしい仕草は、もうお馴染みになっているよ。


 うーん。だけど、話の内容は、これでも何気に怖いもののようなのだけど。


 ん?


 笹のような下草をかき分ける、がさがさという音。


「ラケルタ。そこにいるのか。こちらにおいで」


 低くて落ちついた独特な声色こわいろの女性の声が響く。


 あ。ジュライさん。彼女がこちらを呼んでいる。


『アミーゴ。行くがよい。これが従魔候補が正式の従魔となるための試練だ』


 うんうんと、うなずくエンタ先輩。その仕草は芝居がかっていて、滑稽こっけいにも見える。だけど、その彼の表情は、真剣そのもの。


 こちらは、ただ今回の野外訓練の主導者である、ジュライさんに呼ばれたから、行くだけなんだけどね。


「うむ。来たか。これを見な」


 え。山椒さんしょうの実?


「ん。どうした。そこではないぞ?」


 ジュライさんが、こちらに近づき、少し屈んでは同じ方角を見る。


 何か、ひょんな調子でぴったりと身体を寄せ合うような位置になったので、彼女のあたたかい体温を感じることができた。


 とはいえ彼女は鎖帷子くさりかたびらのようなものを着ていて、その上に部分鎧を装着しているので、その部分は腕とほほくらいなものだけど。


「そうか。偽魔山椒にせまさんしょうの実を見つけたか。どれ、状態もいいな。それでは、これも少し採るか。おまいら魔動物には必要ないが、人間には重宝するのでな」


 ジュライさんは、そう言って、偽魔山椒の実を摘んだ。これは若い山椒の実の別名、青山椒と同じような、緑色の小さな実。それがひとつの木のあちらこちらに、その木の葉の陰になっているところで、たわわに実っていた。


 だけど、この偽魔山椒の木。ほんとに山椒の木と同じ。枝にあるとげの出方まで、とても良く似ている。聞けば、この木の枝の太いところは、とても香りがいいので擂粉木すりこぎにするそうな。


 こちらも、ジュライさんと共にこの偽魔山椒の実の採取を手伝う。


 すると、みるみるうちに、準備してあった袋のひとつが一杯となった。


「この偽魔山椒の実は、こんなものでいいだろう。採り過ぎも良くない。だが、いいものを見つけたな。でかしたぞ。ラケルタ」


 そう言って、こちらの肩に手を置き、こちらに顔を近づけ目を細めてにっこりと笑う、ジュライさん。整った白い歯がきらりと光る。


 だけど、お互いに採取した偽魔山椒の独特な香りが染みついてしまったようで、ちょっと匂いがきつい。


 うーん。これは、キアゲハの幼虫のような臭いだよ。取れるのかな。この臭い。


「うん? ま。この臭いは、じきに取れる。私の従魔ら、フェリスアン属種には、嫌われてしまう香りだな」


 あ。もしかして、これも山椒と同じような柑橘系の匂いだからかな。


 ゴトラン氏をはじめとする猫科頭のフェリスアン属種は、森林魔猫科マギ・フェリス・シルヴェトリス


 確か猫は嫌うよね。ミカンのような香り。


ここに読みにきてくれて、ありがとうございます。

とても嬉しいです。


今話は、6-17話で100話目。これを投稿した日は、

この物語を投稿し始めてから半年と1日となります。


少しずつではありますが、この物語を読みにきてくれて、

そして、ついてきてくれている方が増えてきているようです。

ありがとうございます。


ほんと。書くのが好きで、書いてはいるけれど、

やっぱり読んでくれている方がいらしてからこそ、書き続けられます。

これからもこの物語を読んでくれると、ほんとに嬉しいです。

これからも、どうぞよろしくおねがいします。


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