安藤先生
学祭を三日後に控えているという事実から、居ても立っても居られない気持ちに駆られた俺は、スマホの電話帳をなんとなく眺め、なんとなく『あ』から順番に電話を掛けることにした。
まず最初は担任の安藤先生だった。
「もしもし、安藤先生のお宅でしょうか?あっ、私、藤原と云います。夜分遅くに申し訳ありません。安藤先生は御在宅でしょうか?」
安藤先生は携帯を普段持ち歩いていないらしく、家の電話に掛けると娘さんらしき人が出た。
「こらー」
「あっ、安藤先生」
「ハッハッハ、またこんな時間に掛けてきたのか。藤原くんはこういう言葉を知っていますか?こんな時間に掛けたら…てい!安藤先生がてい!」
「ちぇ、安藤先生には敵わないや。ところで安藤先生。俺、前から安藤先生に言いたかったことがあるんだよね。…安藤先生。ほ、ほんとは安藤先生ズラなんだろ?」
「お、おれ⁉︎おまっ、お、おれ。じ、地毛よ。地毛。ズ、ズラなワケないじゃん。アハッアハハ。ハッハゥヘェウヘヘヘ。あ、ちょっちょっと待って今、い、今。け、携帯がブルブルって鳴ったんだ。う、うん。あ、はい。もしもし、え?なんですって!?じ、実家がある床屋が台風の影響でなんかこう…洪水で、あ、危ないー!っていう感じですって!?そ、それは急いで行かなきゃー!何故なら俺は地毛だからー!何故なら俺は、じ、地毛だからー!」
そう言って安藤先生の電話は切れた。
次は、軽音部の顧問の伊藤先生だった。
伊藤先生はウチの親より歳上の筈だが、スマホもバンバン使いこなす様な先生だったため、直接携帯に掛けた。
「おう、FUJIWARAどうした?」
電話の向こうで俺も知らないような、ゴテゴテのヘビーメタルが爆音で鳴り響いている。
恐らく、年齢の影響で耳が遠いんだろうなと思った。だから俺は大きい声でこう言った。
「安藤先生はズラだったぜ!!」
「ウルセェ!!」
正直、伊藤先生の方がうるさかった。




