動揺
結局あの後、理沙ちゃんは「そういう事なら。」と、加藤の恋を応援した。
花奈はというと、理沙ちゃんが加藤を諦めた様子にホッとしているようだった。
寧ろそんな事より突然の加藤の発言の方が気にかかっているようで、常時ニヤケていた。
「でも俺、相手に気持ち伝わって無いみたいでさ…。相手も俺の事好きだと思うんだけどね。」
加藤が飲みかけの珈琲と話をしているかのように喋った。ストローで氷を掻き回す加藤の手つきが妙にイヤラしく見えたのは、決して俺が欲求不満になっている事によるものでは無いだろう。
俺も口では「頑張れよ」と心にも無いことを言って解散した。
次の日。
学祭も近い事もあって、授業は午前で終わり昼から準備時間に回された。クラスの出し物はメイド喫茶に決まり、準備といっても男子は特にやる事もなかった。教室の飾り付けと云っても、手先の器用な奴らがやっていたし、あとの奴らは適当にくっちゃべったりしていた。
暇を持て余した俺と加藤は部室に行き、学祭の曲を練習する事にした。自分で考えた歌詞なのが幸いして、歌詞を覚えるのに時間はかからなかった。
加藤も元々ギターが上手いこともあって、間違える事など皆無に等しかった。
だから練習と言っても二、三回合わせてあとは二人で雑談していた。
どうしても昨日の放課後ティータイムの事が頭から離れなかった俺は、加藤の好きな人について訊いてみることにした。
「なぁ、加藤。」
好きな人って誰だ?と、続けようとした言葉は呑み込んだ。代わりに出てきた言葉は…
「昨日のアイスコーヒー美味かったな。」
何やってんだ俺。




