彼氏候補
「あの…もしかして、加藤さんって女性…?」理沙ちゃんが凄い質問を投げかけた。
そりゃあ、そうだろう加藤は美形な顔立ち故に中性的に見えるのも無理はないが、男子便所に入って小便をしている事からしても加藤が男なのは間違いない。だが、もしかしたらもしかするのか?という考えが脳裏をよぎった。
「一応生物学上、男ですが…。」
加藤のその一言によって、やはり男だということが証明された。
一同微妙な空気になってしまった。加藤の好きな相手が、男だという事について突っ込んでいいものなのだろうか?
「加藤さんってホモなんですか?」
花奈、ド直球過ぎるだろォ!心の中でそう叫んだ。
「どうなんでしょうね。」
そう言って加藤はお茶を濁した。
しかし、その一言を聞いて花奈と理沙ちゃんがニヤケている。
数年前に花奈の部屋に忍び込んだ時、本棚の奥に男同士の情事を描いたエロ漫画を見つけた事がある。つまり、二人はそういうモノが好きなのであろう。
いやいや、待てよ。加藤は男が好き?その相手は誰なのだろう。それも、『彼氏候補』と言っていた。どういう事だ。確かに、加藤は最近クラスに溶け込んで、俺以外の奴とも連んだりして居る。最近加藤の髪を弄んで居た、彼奴か?
動揺を隠しきれず、珈琲を飲む右手が震えていた。
自室で加藤の事を考えながら、大した弾けもしないアコギを手に適当に音を鳴らした。
知っているコードは加藤に教わったC7くらいだ。
他にも教わったコードがあったのだが、阿保な俺は覚えられなかった。
ポロンと鳴るギターが一層虚しさを引き立てた。
「直樹…。」
小声で呟いてみた。まるで初恋の乙女のようなことをしてしまったが時既に遅し。後悔と羞恥心に苛まれた。
俺はどうしてしまったんだろうか。
認めたく無いが、俺が加藤を好きな事には違いなかった。
ただそれが恋と呼べるものなのかは、判断を出来かねている。
加藤。お前の彼氏候補は誰なんだ。




