加藤の兄弟
学園祭も数日後に控えたある日の放課後。
いつものように藤原は加藤と部室に向かう。
「なぁ、加藤。お前って兄弟は居ないのか?」世間話も底をついた処で、ふと疑問に思い訊いてみた。
「嗚呼、言ってなかったっけ?歳の離れた兄が1人居る。十歳近く離れてるから、ある意味一人っ子みたいなもんだよ。」
知らなかった事実だ。加藤は「言ってなかったっけ?」と言ったが、聞いた事無い。そんな重要な情報を俺が聞き逃すわけが無い。
「へぇ。それは初耳だ。どんな兄ちゃんなのか気になるな。」
そんな事を話しながら廊下を歩いていると、前方から走って来た小柄な一年と思われる女子と加藤が激突した。
「あっ。すみません。」
女子が加藤に一礼して顔を上げると、あろう事か妹の花奈だった。
「いいえ、大丈夫ですか?」
加藤が優しく微笑み気遣う。
「だ、大丈夫です。」
花奈の顔は完全に真っ赤だった。
「花奈、廊下は走ったらダメだろ。」
兄として注意をした。
花奈は兄に顔を向けるなり、睨むように怒りの表情に変わった。
「あぁん?お兄ちゃんに言われたくねぇよ!あっ。加藤さん、本当にすみませんでした。」
加藤が「いいえ」と言うなり妹はそそくさとその場を立ち去った。
「花奈ちゃん、面白いね。」
そう言ってクスクス笑う加藤は悔しいくらいにイケメンだった。
「全く生意気な妹で困ったもんだよ。」
加藤は否定するが、兄の事をイ⚫︎ポ野郎などと罵るような奴は生意気以外の何者でも無い。だが、その事は加藤には言わないでおいた。




