EP.FNー14 後にして思う。こんな日がずっと続けばと……ーFLEETING REST Ⅰー
EP.FNー14
ーー錬金の国『アルケミヤ』首都
ギルドでの一件から明けて1日の昼下がり。
「……………………。」
《………あのー、御主人様?大丈夫なのです?》
ナビィが心配そうに声をかける。
「……………………ん?ああ、大丈夫だ。大丈夫。」
そういう、「クロノア」こと"彼"はどこか上の空といった感じで、非常に落ち込んでいるように思える。が、ナビィにはそれが何故かは分からない。何となく、まだ、出会って間も無い頃にストレージ内から取り出した服を着込んだ時と同じような雰囲気であるとは勘付いたようだが、それ以上は分からない。
それもそのはず。なんせ、ナビィは「クロノア」という使徒に宿る魂がまさかまさかの男だとは思っていないからだ。身体が女性型ならその中身も女性だろうというのは彼女にとって暗黙の了解のようなものだ。たとえ口調が男のようであっても、それが本当に男だとは思いの外だ。これが、彼女の持つ、使徒についての情報の限界。彼女が持つのは使徒という存在についてであって、「クロノア」とその中身の個人情報ではないのだ。
まぁ、つまり、「クロノア」こと"彼"がまたしても女物の衣類(しかも下着)などを身につけることでもう既にポッキリと折れた男としての尊厳がゴリゴリとすり潰されているのだ。
因みに、衣類を買い求める際に定員に着せ替え人形にされ辟易としたのも"彼"の現状の一端を担っている。
ついでに、これからも自分を男として認識している限りこの屈辱やら羞恥心やらを煮込んで綯い交ぜにしたような感情に苛まれ続けることを嫌々ながら理解したのだ。
「……もう、いい。何故かしら、どうでも良くなってきた。俺も本格的に終わってきたのか?」
違う。それは「自分の性別」について完全に思考放棄したことで生じた擬似的な無関心だ。つまり、現実逃避だ。これから、女物の下着を手に取る度に言い知れない嫌悪感に苛まれることだろう。
そんな嫌すぎる
割と近い未来が待ち構えていることに無意識ながら勘付いている"彼"は女物の衣類や靴などの購入を果たし、次の目的地を考える。
「……ナビィ。取り敢えず、必要な物も買ったことだし、もう一度冒険者ギルドに向かうが、異論は無いな?」
「そうですね。もう、大抵の冒険者は依頼をこなしに出て行っているでしょうし、換金したお金を受け取りに行くには丁度良いタイミングだと思うのです。」
本当は昨日のうちに全て受け取るはずだったのだが、何でも用意するには時間がかかると言われ、後日受け取りとなった。
というか、"彼"は朝早くにギルドに足を運ばせていたのだが、その時は日帰り組の冒険者が依頼を受けるためにごった返しており、おっさんに会うのに相当な時間がかかりそうだった。それなら待てばいい話なのだが、杖にしろ剣にしろ何かしら武装した集団の中にいる10代前半の少女が一人という場違い感とそれによる周りの視線が痛かったため先に買い物を済ませたのだ。
この辺で宿代や衣類を買う金はどうしたのかという疑問が出てくる。
宿代に関しては金がすぐに用意できなかったのはギルド側の落ち度という事で、一先ず、ギルド持ちで換金した金から差し引くとのこと。直ぐに払える範囲で換金の一部を払ってもらっめも良かったのだが、手間はそんなに変わらないと考え何も言わなかった。
それ以外に関しては……まぁ、簡単。ギルド内での居た堪れない視線の中に下衆の部類の視線が紛れ込んでいたとだけ言っておこう。ついでに付け加えるのならば、大通りのど真ん中に身ぐるみを剥がされボロ雑巾のようになった男が数名積み上げられていた。
《というかアレなのです。必要な物を買った以上、お金はもう必要無いのでは無いのです?》
「…………言うな。」
視界の先にはもうギルドが見えている。無いとは思うが、足元を見られていたらどうしようもないなと考えつつ。
また短い。それに大分開けてしまいました。やはり、ズルズルと引き延ばしていた休暇を終わらせたせいでしょうかね?更にこの辺りから特に一章後編まで特別書きたいと思うことがないこともあってなかなか進みません。これからは気長に待つことをおすすめします。では次回で会いましょう!




