EP.FNー10
サブタイ後で考えます。
EP.FNー10
ーーなんだこれは?!
冒険者ギルド支部長ソルダは驚愕の中にいた。フェーズの兄ちゃんもこの異常な事態に俺と同じように驚愕で、表情でいつもの無表情が崩れている。
支部長室は得体の知れない|何か(お嬢ちゃん)の発言を皮切りに闇に塗り潰された。光を一切通さない完全な闇の世界。だというのに気絶したジジイを含めて、あの一室にいた全員の姿を確認できるという異常。ソファや机といった非生物が全てなくなっている。まるで、何処かひかりの一切通らないところに転移してしまったと錯覚してしまう。勿論、そうでないことは分かりきっている。なんせ、この闇は目の前にいる少女を中心に湧き出したのだからーー。
「なぁ、おい………。」
不意に声が聞こえた。声の出どころは探るまでもなく目の前の少女。目元が前髪で隠れて分からないが、唯一見える口元に三日月を浮かべている。
その笑みを見た瞬間、遅ればせながら俺の中に恐怖が巣食いだしたのを理解した。
「おっさん。ついでにそっちのお兄さんも。アンタ等、立場分かってんのか?俺はテメェ等の都合で呼び出されて、テメェ等の都合で待たされてんだよ。」
その瞬間、闇に眼が開いた。真紅で描かれた紋様のような眼。それが、一つ二つと次々に生まれ開いていく。
「それで、『単刀直入に聞く』だぁ?お前等、何様様のつもりなんだよ?調子こいてんのか?喧嘩売ってんのか?俺に潰されてぇのか?」
開眼した真紅の眼は、瞳孔を小刻みに震わせる。
「……なぁ、おい。そこんとこどうなんだよ?え?」
その瞬間、真紅の瞳が全て、俺とフェーズの二人を見た。まるで焦点が合わさったかのように。照準を合わせたかのように。
「お、お待ちください!!わ、我々は貴方に危害を与えるつもりはありません!!」
フェーズが泡を食ったようにて叫ぶ。そんなフェーズの必死な命乞いに、化け物は、
「…………舐められたものだな。」
と、死刑宣告じみた一言が返ってきた。
「この『私』を危害のくわえられる存在だと認識しているとは………。当たり前だ。貴様等程度では逆立ちしようとも私には足下にも及ばない。…………まぁ、良い。お前の命乞いは十分に理解した。」
二人の間に安堵が生まれる。
「…………で、お前はどうなんだ?冒険者ギルド支部長殿?」
フェーズにむけられていた眼を含めて、全てがこちらをむく。
「ッッ……!!お、俺もーーいや、私もです。私も貴方様に敵対の意志はありません。先程の発言は失言でした。お許しください。」
「そうか………。」
フッ、とクロノアが纏っていた空気が霧散し、辺りの景色が帰ってくる。彼女が魔法(?)を解いたのだろう。
死地より帰ってきた二人は安堵の声を漏らした。
*
ーーや、やらかしたぁぁぁぁぁぁあああ!!
と、「クロノア」こと"彼"は内心で叫んでいた。
ノリと勢いで取り返しのつかないことをやっちまた!始めは良い手段だと思ったんだけどな……。むこうが「力づく」でくるならこっちは「力づく」だ!先に手札のカードを出したら、そのままの勢いでキメきる!なんて、意気込んでいた大体一分くらい前の俺をぶん殴りたい。いや、まぁ、これであちらさんの「力づく」は使っても俺には無駄だと誤認させるのに成功したし、話の主導権も完全にーーどころか、あちらさんにとって絶望的にこっちの物になった。
だがーー、
ーーもう、これで「穏便にーー」って手は無くなったた。
ホント、なんてことをしてくれちゃったんだ俺。馬鹿じゃねぇの?もう、こうなったら「魔王」のフリでも何でもやり通すしか無ぇ。
因みにではあるが、"彼"が使ったのは魔法。それも魔法の最高位のさらに上、禁忌魔法と分類される魔法だ。"彼"がわざわざそんなえげつない魔法を使ったのには理由がある。
それは、「100%失敗する方法が確立されているからである。」他の通常の魔法には全て演唱破棄のスキルを取得しているため外的要因がない限り魔法が確実に発動してしまう。さらに命中補正まであるためちょっとした追尾能力が擬似的に付与されてしまうため、使えばON、OFFしかない通常魔法は問答無用で当たるのだ。それでは、「力づく(ハッタリ)」では無くなり、「力づく(ガチ)」になり、なまじ威力がショボいと「数で奇襲をかけたらなんとかなる」と考えられ、「力づく」を使用されてしまうおそれもあったのだ。されに比べ、禁忌魔法は魔力を消費した後、|発動まで(キャストタイム中)に演唱と贄を捧げる必要があるため、キャストタイムの約1分間にそのどちらかでも疎かにすると強制失敗し、注ぎ込んだ魔力を失う結果となる。つまり、今回は魔力だけを消費して発動までのお膳立てまでし、演唱や贄を捧げるキャストタイム中にお二人さんに盛大にハッタリかました状態なのである。
そんなわけで、やらかしてしまった"彼"は、そのまま悪の魔王様プレイで通すしかなくなったのである。自業自得だ。
「ーーで、貴様等。お前等は一体何を聞きたい?答えられる範囲なら気分で答えてやらんこともない。」
二人称がバラバラなあたり、"彼"自身「悪の魔王様プレイ」をやりきれていない。
「勿論、『私』が答えたら、その対価としてこちらの要望を幾つか聞いてもらうがな。」
等価交換というやつだろうか?悪の魔王様(笑)にそんなことを言われたら何も質問出来なくなると思われるかもしれないが、そんなことは無い。なんせ、質問が無いということは、その悪の魔王(笑)を何の用事もなく呼びつけ、更には部屋で一人待たせたことになる。
それにいち早く気付いたフェーズは"彼"の言われるがままに質問する。
「………では、最初に貴方は何者でしょうか?」
何者?と言われても………。どう答えろというのか……。
「そういえば、こちらの自己紹介はまだだったな……。『私』の名前はクロノアだ。以後、よろしく頼もう。」
まぁ、それは冒険者といた時にバラしてるからその程度こと知っていそうだが……。
「あの……。それだけでしょうか?」
「他に何と答えろと?貴様等は………ああ、そういえば、役職だか地位だかを言っていたな。だが、あいにくとそのような上等な物は持ち合わせておらん。」
「いえ、ですから………。」
「口説い!つーか、それ以外にどう答えろと?何が聞きたいかもっと簡潔に分かりやすく!」
面倒くさくなり、もう魔王プレイを投げ出す"彼"。自己紹介にどれだけかけるつもりだよ。早く終わらねぇかな。あ、因みにおっさんは完全に置物状態。というか、全部お兄さんに丸投げしている。そんなに怖いかよ……。
「す、すいません!以前から冒険者や商人からの報告に所属不明の城塞がこちらに向かっていると報告がありまして………。」
バレテーラ。まぁ、分かってはいたが………やっぱりバレてたか。つか、このお兄さんのキャラも崩れたなぁ。もっとクールな感じだった気がするんだがな。
「ああ、『私』のだな、ソレ。」
「そうですか。随分あっさり認めるんですね。」
「否定しても、貴様の考えは変わらねぇんだろ?なら肯定しようが否定しようが同じことだしな。」
するだけ無駄なことをしても意味はなさそうだ。
「で、質問はそれだけではないのだろう?察するに、『なぜ、ここに来たのか?』『ここで何をするつもりなのか?』といったところか……。まぁ、何をするつもりか?と言われても特にこれといった理由は無いな。」
「………そう、ですか。」
「逆に聞くが、『私』のような者はイチイチ策謀でも考えてないとどこかに行ってはならんのか?」
「さぁ?私は凡人ですので分かりかねます。」
お兄さん、結構自分のペースを取り戻してきたようだ。流石というか立ち直りが早い。
「あ、そ。まぁ、良いか。で、そっちの話は終わり?」
「………ええ、そうですね。」
ん?受け答えにあった間はなんだ?俺からの要望への警戒か?それだけでは無いような。
「………まぁ、良い。では、こちらからの要望だが………。まぁ、そんなに大した話ではない。」
蚊帳の外のおっさんを含めて緊張感の帯びた顔を作る。んな、大した話じゃねぇって。
「『私』は先程、特に予定は無いと言ったが、ここには暫く滞在するつもりだ。だから、宿の手配を頼みたい。」
「成る程、分かりました。では、この国一の宿のスイートルームを用意します。」
「勿論、今回のような監視は無しだ。付いてたら、周辺諸共吹き飛ばす。」
流石に、寝食をする所にまで監視付きとか勘弁願いたい。あと、サラッと部屋の周りの武装集団のことを知っていたことをバラす。
「……………承りました。」
あ、やはり監視付けるつもりだったか。
「あと、宿には連絡と紹介だけで良い。金はこちらで用意する。」
「そうですか。分かりーー。」
「………が、金が無い。一応、金目の物はあるから換金も頼みたい。…………イロも付けろ。」
「……………分かりました。ソルダさん。ギルドにて換金できますか?」
「うん?あー、一応、可能なんだが……。ウチの換金の取り扱いは冒険者限定なんだが。」
「………ソルダさん?」
「ンなもん、国家の危機に比べたら何ともないだろ?」と、視線で語るお兄さん。
「あー、はいはい。分かりましたよ。やりゃー良いんだろ。やりゃー。」.
「いや、そうだな。ついでだ。『私』を冒険者にしろ。換金が目的だからランクは何でも良い。」
「え"!?あ、いや、分かった。登録自体は簡単なんだが、ランクに不相応な換金をするとな結構面倒だぞ?」
そうだろうな。低ランクの冒険者が高額な換金されたら金目当てで襲われかねん。情報なんて漏れる時はあっさり漏れるからな。
「その辺の裁量は任せる。一応、換金する物は置いとくから、それも判断基準にしろ。」
裁量ミスったら人死にが出るかも、だぞ。責任重大だな!横領したら殺す。取り敢えず、アイテムストレージから金になりそうな物を取り出す。お二人さんは、息を呑んでいるが、知ったこっちゃない。
「では、そういうわけであとは全てよろしく。俺は下の待合室にいっから。」
ここでやることはもう何もない。なら、とっとと退散しますか。
外に出る。勿論、窓から。廊下で武装集団と鉢合わせとか嫌過ぎる。
*
「あー!肝が冷えた!死ぬかと思ったぞ。」
「全くです………。」
あの恐ろしい少女が居なくなってすぐ、俺たちは同時に安堵のため息を吐いた。
「というか、ソルダさん。貴方、途中で我関せず決め込むのやめて下さいよ。」
「やだよ。だって俺死にたくないもん。」
「私だって死にたくありませんよ!全く、貴方は墓穴を掘るだけ掘ってあとは全て私に任せるとか最低ですか?!貴方!!」
「へー、へー。スイマセンね。………ところでさ。」
「何です?ソルダさん。」
「魔物の件、何で聞かなかったんだ?」
「そのことですか……。簡単ですよ。彼女は何もする気が無いと言った。それだけですよ。」
「だけどよー。タイミングが殆どドンピシャだぜ?怪しさムンムンだぜ?」
「なら、貴方が聞いてください。」
「ヤダ!俺、死にたくない!」
「貴方ねぇ。」
「ハッ!儂は今まで一体何を………ッ!」
「あ!ジジイ起きた。」
「今頃ですか。私たちが死を覚悟したりしていた時にずっと寝ていたくせに。」
「殴るか。」
「そうですね。」
「お、おいお主等。何じゃ、その拳は?え?何で近付いてくるの?何で笑ってんの?怖い!お主等の笑顔超怖い!」
ーー冒険者ギルド F1 待合室
ん?今、どっかで爺さんの悲鳴が聞こえたような?そういえば、あの爺さん。本当に何であそこにいたんだろうか?
眠い。何とか今日中に連続投稿しようとして前回の倍程になりました。しかも最後が結構急ぎ足。
次話と次々話は本日正午に投稿を予定しています。では!




