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死にました。目覚めたら、やっぱり死んでました。  作者: Mr.bot-76O
Epesode 01ーⅠ FALLEN NIGHT ーthe first volumeー
13/26

EP.FNー11 二人の心の二律背反ーSIDE KURONOAー

この回をやろうと作ってからジワジワと遅れ、やっと連続投稿です。今回ちょっと頑張ったが、頑張った方向が明後日にむいてなきゃいいな

EP.FNー11




 空は白みはじめ、静かに朝の到来をつげようとする。そんな薄明かりで照らされた宿の一室。そこでは、部屋に設けられた洗面所で蠢く人影があった。


「う、うぐ……ッ。」


 その人影は洗面所内で苦しそうに蹲り、時折喘ぐような仕草をとる。胃から込み上げてくる感覚。しかし、人影はここ暫く一切の食事を摂っていないため、喉と胃に激痛を残して込み上げてくるのが引くまで耐えるのみ。


「ハァ、ハァ………。クソが………。」


 誰に言ったかも本人も分からない罵倒。

 そんな人影しかいないはずだが、どこからか心配の声が聞こえる。


《……御主人様(マスター)。大丈夫なのです?》


「ナビィか……。問題は無い。心配は無用だ。」


《でも……ッ!外に出てから様子がおかしいのですよ!初めは身体の特性だと思ってたのです……。でも、その後も眠りは随分と浅いし……。今なんて、かなり苦しそうなのです!》


「………………いや、間違いなく日中に体調が悪かったのはその身体の特性だ。」


 全く、自分でも随分と難儀な種族を選んだものだ。ゲームが本当の世界に(こう)なると分かっていたら、もう少しマシなものを選んでいたんだがな。


《では、今のソレは何なのです!!貴方(・・)は夜に力を増す存在なのでしょう(・・・・・・)!なら、今はまだギリギリ貴方(・・)の時間のはずです(・・)!!なのにどうして………ッ!》


 彼女の声は次第に嗚咽を伴い始めた。その後に続く言葉は聞こえなかった。「なのにどうしてそんなに苦しんでいるのか?」なのか。それとも「なのにどうして自分に相談してくれないのか。」なのか。あるいはそのどちらもか。それを判断することは俺では出来ない。


「………………………………。」


 まさか、彼女に此処まで心配されているとは思わなかった。俺にとって彼女は出会って一週間ばかりの「よく会話する他人」。ナビィと「クロノア」と、"俺"とナビィ。それぞれの関係の認識の違いがこの差を生んだのだろうか。


「いや、本当に大したことではない。ただ、()自身が存外に腑抜けだった……それだけのこと。」


 いや、どちらかと言うと「腰抜け」か……。


《それはどういう………?……ッ!まさか!?》


 ああ……。彼女は察してしまったらしい。俺はそれっぽいことを言って(けむ)に巻こうとしていたのに。


《それは、私のせいなのですか?私があのヒューイという少年を助けるように頼んだせいなのですか?》


 俺がこんな無様な格好を見せているのは、彼女の言う通り「あの少年を助けたこと」だ。

 あの時、俺は襲っている側が人間だったら助けることを諦めるつもりだった。それは、同時にそれ以外だった場合ーーつまり、モンスターだった場合、ゲームと変わらず造作も無く屠れるつもりだったのだ。はっきり言って見通しが甘かったとしか言いようがない。ここがあまりにもゲームと同じでここが現実の世界だという認識を甘く捉えていたのだ。

 あの〈緑小鬼(ゴブリン)〉を殺した感覚が残っている。剣で肉を断ち肋骨をへし折り、心臓を貫いた感覚を。心拍が弱くなり、はてには止まってしまう感覚を。魔法で残りを一掃した時の彼等の断末魔を。

 その全てを五感の全てで思い知ったのだ。俺はもう一度剣を取り、魔法を誰かに向けられるのだろうか。


「いや、勘違いするな。あれは『私』が自分の意思でお前に判断を委ねたのだ。そして、お前の判断に『私』は自分の意思で従ったのだ。」


 それも、自分本意の打算のうえで、だ。


「だから自分のせいにしないでくれ。そのなことをされると『私』は悲しい。」


 だから自分のせいにしないでくれ。そんなことをされると"俺"が罪悪感で一杯になる。


「まぁ、あれだ。お前の自分を責める意思は分かっているつもりだ。不謹慎かもしれんがそれを嬉しく思うところもある。が、これ以上はお前の主に対しての侮辱になる。早々に自責の念を解け。」


 こんなに『私』を心配してくれる君に対して、未だに建前と嘘で君を騙している浅ましい俺を責めないでくれ(ゆるしてくれ)


《そう……ですね…………。なら、不詳このナビィ!この件に関しては考えないようにするのですよ!》


 そう言って彼女はことさら明るく言ってくれた。


《それで、これからどうするのです?もう一眠りするのです?》


「そうだな……。いや、もう眠気も吹っ飛んだし、太陽が昇りきる前に散歩と一緒にここからランジェリーショップまでの最短距離でも探すとするか。」


《らんじぇ………?何なのです、それ?》


「………………下着を売っている店のことだ。」


《あ、そういえば。御主人様(マスター)はここのところずっとノーパンだったのでした!》


「うるせっ。……あー、あと靴も買わねぇとな。服の替えも……。」


 そういって、ずっと着まわしているワンピースを身につけ、宿の部屋から出る戸を開ける。


《そういえば、貨幣って昔のままなのです?300年もたっていたら変わっている気がするのです。》


「その辺は問題無い。ここの宿代が払えないなんてことがないように、あらかじめ冒険者ギルドでギルドホームから持ち出した金目になりそうなものを換金していただろ?」


 そう言いながら戸を閉め、廊下に出る。

 閉まる戸の隙間から遠目に見える窓に自分が映る。そんな窓に映った自分に、


「本当に浅ましい奴。」


 と、一言添えて。




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